上質な自動車のお手本
アルピナ初となる四駆のディーゼルセダン「BMWアルピナD5 Sビターボ リムジン アルラッド」に試乗。0-100km/h加速4.9秒、最高巡航速度275km/hを誇るスポーツリムジンの実力は? 特別な藍色をまとう俊足の一台で、箱根を目指した。
ずっとユニーク
もともと孤高の存在だったアルピナだが、近頃ますますそのユニークなポジショニングが際立っているようだ。例えばメルセデスAMGやBMW Mに負けないほど高性能であることは言うまでもないのだが、他のプレミアムブランドの高性能派生モデルが軒並み荒々しい野性的なパフォーマンスをアピールするのに対して、アルピナはあくまでエレガントな立ち位置を崩さずに、“やんちゃ系”とは一線を画している。
また他のブランドが隙間のないモデルラインナップを構え、どのようなカスタマーでも取りこぼさないよう手を広げているのとは対照的に、アルピナは相変わらず自然体というか、無理に手を広げようとはしていない。そもそも供給できる台数には限りがある。近年は年間1500台前後、最大でもおよそ1700台にすぎない。
これまでにも説明してきたことの繰り返しになるが、アルピナはBMWの単なるチューニングファクトリーではなく、小さいながらもれっきとした独立メーカーである。今や、すべてのプレミアムブランドが、それこそベントレーやランボルギーニから、あのロールス・ロイスまでが台数を追うことが目的ではないと言いつつもSUVに手を染めている中、自らの本業にこだわる世界で最も規模の小さいメーカーと言ってもいい。
といって、メルセデスAMGやBMW Mのように特別なモデルを担当するグループ内の子会社でもない。1965年の創業以来、BMW本社と密接な関係を維持しているいっぽうで、両社の間に資本関係はない。正式社名「アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペンGmbH+Co.KG」は、端正で高性能なスペシャルBMWを製造販売する独立した自動車メーカーとして、極めてユニークなポジションを占めているのである。...