軽やかなグランドツアラー
新世代プラットフォームを基に開発された、第3世代の「ベントレー・コンチネンタルGT」にオーストリアで試乗。ベントレーの伝統を継承しつつ革新的な進化を目指したという新型は、驚くほどシャープなモデルに仕上がっていた。
よりスポーツカー的なスタイルに
それまでの堂々としたたたずまいから一変し、低くスリークなプロポーションに生まれ変わった3代目コンチネンタルGT。そのデザインは、2015年のジュネーブモーターショーで公開されたベントレーのコンセプトカー「EXP10スピード6」に触発されたものだ。
当時チーフデザイナーを務めていたサンギョプ・リー氏が描き出したスタイリングは、巨大なメッシュグリルや大小がセットになったヘッドライトといったベントレーのデザインモチーフを活用しつつ、軽快な走りを予感させる低くコンパクトなもので、このときは「ベントレー初のスポーツカー」として量産化することが示唆されて注目を集めた。
そう聞いて「おや?」と思った読者も少なくないはず。「ベントレーはスポーツカーメーカーではなかったのか?」 そんな疑問が脳裏をよぎったであろうことは想像に難くない。しかし、残念ながらそれは勘違いだ。
ベントレーは1919年の創業当時からグランドツアラーを造り続けてきたラグジュアリーブランドである。グランドツアラーとは、ワインディングロードを軽快に走り抜けるスポーツカーとは似て非なるもので、ロングクルージングでその最良の一面を見せる。陸上選手でいえば、スポーツカーは短距離走者、グランドツアラーは長距離走者とたとえられるかもしれない。
しかし、自動車界のマラソンランナーは、生身の陸上選手と異なり、パワフルなエンジンと長時間を快適に過ごせる室内空間を備えているため、短距離ランナーのスポーツカーよりも背が高く大柄になりやすい。このことは歴代のコンチネンタルGTを見れば明らかだろう。一方で、3代目コンチネンタルGTがスポーツカー的なスタイリングを手に入れたということは、そのコンセプトが修正されたとも推測できる。果たして、真相はどうなのか?...