名門はしたたかに
イタリアが誇る名門マセラティのエントリーSUV「グレカーレ」は、カーマニアやセレブリティーを中心としたこれまでの顧客とは少し異なる層にも注目されているという。48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する中間グレード「モデナ」に試乗し、人気の秘密を探ってみた。
歴史よりも見た目
マセラティ・グレカーレは、このブランドの“日本における売り上げ倍増計画”を担ったモデルだという。簡単に言えば1年間で、これまでの年間合計登録台数と同じ数だけグレカーレを売りたいという野心的な目標がある。
マセラティの日本法人がそうした高い目標を掲げるのには、きちんとした根拠がある。まず兄貴分にあたる「レヴァンテ」より160mm短い、全長4.9m以下のボディーサイズが日本に向いている。ホイールベースが2900mmもあるから決して小さいわけではないけれど、「レクサスRX」とほぼ同じサイズだから、都市部でもデカすぎて困るということはないはずだ。
もうひとつ、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストなど、いわゆるレベル2の運転支援装置が用意されることも大きい。もうこの分野で、ライバル他車に“スペック負け”しなくなった。
実際、グレカーレはマセラティの期待どおり順調に売り上げを伸ばしている。これまでのマセラティの顧客とは異なる、若い子育て世代や女性、他ブランドからの乗り換えなど、新しい顧客層を取り込んでいるという。
興味深いのは、こうした新しい顧客層の購買理由を調べると、ブランドの歴史やパフォーマンスなどの優先順位がとても低かったということだ。速いとか遅いとか、ファン・マヌエル・ファンジオのF1制覇などはどうでもよく、きれいなデザインと上質なインテリア、それに余裕のある後席や1000万円以下のグレードもあるお買い得感が、購入の決め手になっているらしい。「このエリック・クラプトンとかいう人、ギターうまいね」といったところか。
カタログのスペック欄を見て、「最高出力120PSより130PSのほうがエラい」と思っていた昭和は遠くなった。ある意味でクルマ文化が成熟していることの表れかもしれない……。といったようなことを考えながら、マセラティ・グレカーレ モデナに試乗した。...