代役などあり得ない
最高出力600PS、最大トルク800N・m。スーパーカー顔負けのスペックを誇る「アウディRS 6アバント」にむちを入れたら……? 全知全能と思えるほどのスーパーワゴンの走りとは、こういうものだ。
隠しきれない“隠れマッチョ”
好事家ならば誰もが一目置く特別なモデルでありながら、決して悪目立ちはせず、普通の人にはその存在さえ気づかれない。そういうクルマに、ここ日本では絶えることなく一定のニーズがある、その背景は、かつてS54B型「スカイライン」のパーソナリティーを羊の皮うんぬんと説いた、その琴線に響くものがあるのだろう。秘すれば花。なんなら世阿弥の風姿花伝まで引っ張り出してさかのぼれる日本人の美徳でもある。
お国は違えど、ドイツにも同種の価値観があるのかなぁと思うことはある。「M」しかり、アルピナしかり。素人さんには区別がつかずとも、走ればまるで別物というパッケージに、それゆえ日本のクルマ好きは昔から共感を抱いてきた。数年前までアメリカとドイツに次いでAMGが売れる国であったことも、それを表しているといえるだろう。
そういった隠れマッチョ的な要望に、アウディは2段構えの商品構成で応えてきた。ひとつは1990年代初頭から展開されている「S」シリーズ、もうひとつが1990年代前半の「RS 2」に端を発する「RS」シリーズだ。
Sシリーズは絵に描いたようなバランス重視のアンダーステートメント銘柄であるのに対して、RSシリーズは、ちゅうちょなしの強烈なパワーを、はちきれんばかりに膨らませたフェンダーにおさめた超大径タイヤで受け止めるガチムチの極北。羊の皮ではないが、同じスーツ姿の実業団でも、Sシリーズが野球ならRSシリーズはラグビーと、そのくらいの肉弾差がある。...