ノスタルジック・レーサー
往年のカフェレーサーをほうふつとさせる、トライアンフのスポーツモデル「スラクストン」。さらなるパワーアップと軽量化が施されたスペシャルバージョンは、驚くほどフレンドリーで楽しいモーターサイクルに仕上がっていた。
レーシーだけどキツくない
腕を組んで信号待ちをしているときの、その視界に広がる景色は絶品だ。シート先端に向けてスリムになるティアドロップタンクは低く、小ぶりで、OHV時代のトライアンフにも通じる。タンクのセンターにはベルトが走り、その脇にエノット型の燃料キャップが配置されていて、遠くにトップブリッジと同じ高さのセパレートハンドルがある。寝かし気味に配置されたメーター類は、ことさら主張しない。他の最新スーパースポーツのような筋骨隆々の燃料タンクもなければ、それを抱え込んでエクササイズマシンを扱うような気合なども必要とせず、アドベンチャーモデルのようなコックピット感とも、少し着飾ったネイキッドモデルとも違う。「スラクストンRS」にあるのはまさに、カフェレーサーのムードである。
ポジションも、実に懐かしい。シートこそやや高めだが、“セパハン”とはいえハンドルはトップブリッジ近くまで引き上げられ垂れ角も少なく、手首の角度はきつくならない。ステップもやや前方の低い位置にあり、その外観から想像するほど過激ではない。そういえば、かつてのカフェレーサーカスタムには、ステップ位置が適度に前方にあるモデルも少なくなかった。それを思い出した。
前後サスペンションには、調整幅が広く、かつサーキット走行にも耐える良好なダンピング特性が得られる最新のアイテムがおごられている。ホイールはスポークタイプだが、前後の17インチホイールにはハイグリップタイヤが装着されている。ベースとなる「スラクストンR」に対してフロントまわりのアライメントも、ややスポーティーな方向にアジャストされている。
しかし乗り味は、そのディテールやスペックから想像するよりずっと素直だ。高いコーナリングスピードや深いバンク角をバイク側から要求されることもなく、しかし、それらがバシッと決まれば実に気持ちがいい。近代スーパースポーツのそれほど研ぎ澄まされた感覚ではない、ネオクラシックなスポーティーさにあふれている。...