「汎用」は「凡庸」にあらず
「メルセデスAMG A45 S 4MATIC+」に試乗。ベーシックな「Aクラス」の2倍以上、お値段800万円近くにも達するCセグメントハッチバックは、ドライバーにどのような世界を見せてくれるのだろうか。ワインディングロードを求めて都内から西へと向かった。
クラスを超えたモデル
最高出力421PS、最大トルク500N・m。とんでもない数字である。高級スポーツカーならわかるが、これがCセグメントハッチバック車のスペックだというから頭がくらくらする。Aクラスというのはメルセデス・ベンツのエントリーモデルという位置づけだったはずだが、AMG A45 S 4MATIC+はそのカテゴリーにはとどまらないようだ。
先代Aクラスにも「A45」というAMGモデルがあり、最高出力は381PSだった。それでもかなりのハイパワーだが、大幅に記録を更新してきたことになる。見た目からしてノーマルのAクラスとは違う。歴史的なレースのカレラ・パナメリカーナ・メヒコに由来するAMG専用ラジエーターグリルを採用しているから、ひと目見て特別なモデルだとわかる。同じAMGモデルの「A35」との違いも一目瞭然だ。
車高を下げていて、フロントフェンダーはノーマルより幅が広い。いかにも速そうなワイド&ローの構えだ。実際に、駐車する時は輪止めにぶつかりそうで気をつかった。“究極のホットハッチ”という触れ込みだが、立派すぎてそのフレーズには違和感がある。クルマ好きの若者が気軽に手を出せるような代物ではない。
エンジンは2リッター直4ターボ。この排気量から421PSを絞り出している。もちろん、世界最強クラスだろう。「M139」という名を持つこのエンジンは、AMGの“One man-One Engine(ひとりのマイスターがひとつのエンジンを)”という主義に基づいた手作り製品である。生産者の名前が記されているのは、道の駅の農産物と同じ方式だ。試乗車のプレートには、エンジンを組んだFabio Wanningさんのサインが刻まれていた。...