ダンディズムで勝負
「アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ ヴォランテ」に試乗。ルーフを開け放って5.2リッターV12ツインターボのサウンドに包まれれば、アストンとイタリアンハイパーカーとの、目指すところの違いが見えてくるだろう。
でっかい空間を贅沢に
イギリスの荒ぶる神。といっても具体的にそういう神様がいるのか、筆者は知らないのである。では、『ハリー・ポッター』に出てくるドラゴンみたいなヤツ。アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ ヴォランテにはそれに対するような畏敬の念をもって接するのが正しい。
スターターボタンを押す。キュルキュルっというスターターモーターの音がして、野獣の咆哮(ほうこう)のような爆裂音がとどろき、5204ccのV12ツインターボが目を覚ます。その瞬間、「すっげー」と感嘆せずにはいられない。
センターコンソールには左からP、R、スターター、N、Dと丸いボタンが5つ並んでいる。真ん中のスターターを押した後、右端のDを押して、ZF製の8段オートマチックのクラッチをつなぎ、そろりとアクセルを踏み込む。ステアリングを目いっぱい切っていると、トルコンATなのにギクシャクするのは、リアのLSDが作動しているからだ。
巨体である。全長×全幅×全高のスリーサイズは4715×2145(ミラー含む)×1295mmもある。2805mmのホイールベースはプラットフォームを共有する「DB11」と同じだ。これがどれほどでっかいかといえば、例えば、国内仕様の「トヨタ・カローラ」のスリーサイズは4495×1745×1435mm、ホイールベースは2640mmで、これぐらいのサイズがあれば、おとな5人と5人分の荷物が積載できるわけである。
DBSスーパーレッジェーラ ヴォランテときたら、定員は4人、といっても後席レッグルームは狭くて、実質2人乗りで、GTカーにとって本来、重要であるはずの耐候性に優れた屋根をすっぱり切った……わけではないにしても、あえてオープンボディーとし、スイッチひとつで開閉する幌(ほろ)を付け加えているのだ。しかも、フロントミドに搭載されるエンジンは自動車用としては究極といっていい12気筒である。誠に贅沢(ぜいたく)というほかない。
その贅沢さの、細かい一例として、回転半径の大きさをあげたい。ステアリングのロックトゥロックは2回転ぽっきり。フロントのエンジンベイにはV12が収まり、フロントタイヤは265/35ZR21もある。これでは前輪の切り角を大きくできるはずもない。あとどれくらいトレッドを広げれば……という感じ。オーナーはでっかいガレージの持ち主でもあることが前提になっている。
もっとも、おそらくは世界共通の大都会の駐車事情に鑑み、このクルマは前後と両サイドにカメラを標準装備しており、モニターに周囲を映し出してくれる。ドラゴンは意外と親切なのだ。...