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“看取り犬” として話題の文福くん、なぜ人の死期を悟り20人以上を看取ってこれたのか? 養護施設長に聞く

「私たちの介護ではなく、犬の存在が生きる力となったことは間違いない」

 2012年4月、「さくらの里山科」のオープン間もなくやってきた文福くんは元保護犬だ。保健所で殺処分になる寸前に動物保護団体「ちばわん」に保護され、開設準備をしていた若山さんに引き取られた。

 教員だった若山さんが高齢者介護の世界に入ったのは、それ以前の1999年のこと。在宅介護施設を運営していたときのある出会いをきっかけに、「犬や猫と同伴入居できる日本初の特別養護老人ホーム」の開設を決意する。

「デイサービスで10年近く関わった高齢の方がいました。身寄りはなく、唯一の家族は愛犬のレオくん。その方もやがて自立できなくなりましたが、犬と一緒に入れる施設はない。しかし高齢犬を引き取ってくれる人も見つからず、知人に保健所に連れていってもらうよう頼んだ。それ以外に選択肢がなかったんです。その方はずっと『俺は家族を殺したんだ』と自分を責め続けていました。生きる気力を失い、半年後に亡くなってしまったんです」

 動物愛護法では「終生飼育の努力義務」がうたわれている。しかしいくら努力をしても、人間は病気にもなれば事故に遭うこともある。それは若い人にも言えることだが、高齢者がペットを飼うことへの批判の声は多い。
「『ペットは贅沢品』『犬や猫がいなくても死にはしない』という人もいます。しかしそれは違うと、私は自分の経験からはっきり言えます。末期がんのため余命3ヵ月を宣告された方が、愛犬とともにさくらの里山科に入居し、10ヵ月もの間、元気だった例もあります。私たちの介護ではなく、愛犬の存在が生きる力となったことは間違いありません」

 人間と同様にペットも高齢化している。犬と猫と人間が共に老いてゆき、どちらかが先立っても最期まで安らかに過ごせる場と仲間があってほしい。そんな理想を追い求めて若山さんが開設したのが「さくらの里山科」だ。

「文福がいなかったら、犬や猫と一緒に暮らすっていう私たちの試みが、 12年間続けてこれたかどうかって思いますね。

 看取りという活動よりも、やっぱり文福がみんなに寄り添い、みんなが文福と一緒にいることを喜んでくれる。そういう存在がいたからこそ、私たち、自分たちのやってることには意義があるんだと、実感することができました。 

 もちろん、他にもいろんなワンちゃん、猫ちゃんたちが、そのことを私たちに感じさせてくれますが、その代表が文福ですね」

 「さくらの里山科」の犬猫ユニットには、長い人生を犬や猫と過ごしてきた高齢者ばかり。認知症を患い、文福くんを「ポチや」とかつての愛犬の名前で呼ぶ入居者もいる。それでも文福くんは誰にでも等しく、優しく明るく笑顔を振りまいている。
(取材・文/児玉澄子)

『犬が看取り、猫がおくる、しあわせのホーム』(石黒謙吾 文・写真/光文社)

『盲導犬クイールの一生』の著者が刊行後23年目に贈る、静かな感動の記録ふたたび。横須賀にある老人ホームはしあわせの場所だった。人の死期を悟って看取る奇跡の犬・文福、そして「同伴入居」で老人と一緒に施設に入る愛犬・愛猫。さらには、保護犬。保護猫たちもやってくる。そして、一緒に暮らして最期のときまで寄り添う犬猫たち。老人護施設には、今日もあたたかな時間が流れる。犬と猫と人、みんな一緒に老いていく。

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さくらの里山科 
公式HP:http://sakura2000.jp/publics/index/8/
文福くんほかホームで暮らすワンちゃんネコちゃんの日常をつづったブログ
https://ameblo.jp/sakuranosato-yamashina/

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