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“看取り犬” として話題の文福くん、なぜ人の死期を悟り20人以上を看取ってこれたのか? 養護施設長に聞く
「私たちの介護ではなく、犬の存在が生きる力となったことは間違いない」
教員だった若山さんが高齢者介護の世界に入ったのは、それ以前の1999年のこと。在宅介護施設を運営していたときのある出会いをきっかけに、「犬や猫と同伴入居できる日本初の特別養護老人ホーム」の開設を決意する。
「デイサービスで10年近く関わった高齢の方がいました。身寄りはなく、唯一の家族は愛犬のレオくん。その方もやがて自立できなくなりましたが、犬と一緒に入れる施設はない。しかし高齢犬を引き取ってくれる人も見つからず、知人に保健所に連れていってもらうよう頼んだ。それ以外に選択肢がなかったんです。その方はずっと『俺は家族を殺したんだ』と自分を責め続けていました。生きる気力を失い、半年後に亡くなってしまったんです」
動物愛護法では「終生飼育の努力義務」がうたわれている。しかしいくら努力をしても、人間は病気にもなれば事故に遭うこともある。それは若い人にも言えることだが、高齢者がペットを飼うことへの批判の声は多い。
人間と同様にペットも高齢化している。犬と猫と人間が共に老いてゆき、どちらかが先立っても最期まで安らかに過ごせる場と仲間があってほしい。そんな理想を追い求めて若山さんが開設したのが「さくらの里山科」だ。
「文福がいなかったら、犬や猫と一緒に暮らすっていう私たちの試みが、 12年間続けてこれたかどうかって思いますね。
看取りという活動よりも、やっぱり文福がみんなに寄り添い、みんなが文福と一緒にいることを喜んでくれる。そういう存在がいたからこそ、私たち、自分たちのやってることには意義があるんだと、実感することができました。
もちろん、他にもいろんなワンちゃん、猫ちゃんたちが、そのことを私たちに感じさせてくれますが、その代表が文福ですね」
「さくらの里山科」の犬猫ユニットには、長い人生を犬や猫と過ごしてきた高齢者ばかり。認知症を患い、文福くんを「ポチや」とかつての愛犬の名前で呼ぶ入居者もいる。それでも文福くんは誰にでも等しく、優しく明るく笑顔を振りまいている。
(取材・文/児玉澄子)
『犬が看取り、猫がおくる、しあわせのホーム』(石黒謙吾 文・写真/光文社)
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公式HP:http://sakura2000.jp/publics/index/8/
文福くんほかホームで暮らすワンちゃんネコちゃんの日常をつづったブログ
https://ameblo.jp/sakuranosato-yamashina/