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子どもはオニが好き?嫌い? 大阪弁の絵本『オニのサラリーマン』、異例ヒットの裏に“父親支持”
園児も世界観に没入? 大阪弁が“地獄”や“オニ”の負のイメージをユーモラスに転換
本作の大きな特徴の一つが、物語を紡ぐ大阪弁のセリフ。富安さんは大阪在住だが、どの作品にも方言が登場するわけではない。なぜ本作では、大阪弁を採用したのだろうか。
「富安さんは、オモシロ・コワイ世界とあり得ない展開を文章にするに当たって、標準語のセリフだと、どうもしっくりこなかったそうです。でも、大阪弁にはこういった展開を笑って許せるようなニュアンスがあり、“地獄”や“オニ”から受けるちょっと怖いイメージを、明るくユーモラスな世界に転換する役割を担ってくれていると思います。そこに大島妙子さんの描く、画面の隅々まで行き届いた、遊び心満載の楽しい絵が合わさって、さらに親しみの持てる世界になったと思います」(福音館書店『オニのサラリーマン』編集担当・西裕子さん/以下同)
中には「こども園で、関西出身の先生が読んだところ、3歳の男の子が、この本を読んでもらうときは必ずその先生のところに行くようになり、そのうちしっかり絵本の大阪弁をマスターしてしまった」という声も。ストーリー自体のテンポの良さに加え、大阪弁のリズムが上手くハマり、パワフルな絵と相まって、子ども達を“地獄界”に巧みに惹き込んでいるようだ。
「もちろん、ネイティブな関西弁である必要は全くありません。例えば、普段皆さんが使っている各地の言葉に変換して読んでいただくなど、自然体で楽しんでいただければ」
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2019年には、NHKのEテレでアニメ化された。夜遅くの放送だったため視聴年齢は高めだったが、親世代の認知拡大により、結果的に絵本人気のさらなる高まりにも繋がった。
また、主人公が“サラリーマン”の絵本は異色で、父親からの支持を集めているのも同作品の特徴だ。「自分も読んでいて楽しい」という大人からの声も多く、お父さんが積極的に読み聞かせしている傾向にある作品も珍しいようだ。
今月には、シリーズ5作目となる『オニのサラリーマン じごくのしんにゅうしゃいん』が発売された。今作では3匹の新オニが登場し、オニの一般常識テストに職場体験など、新オニたちのゆかいな研修の様子が描かれ、これまた人間の世とリンクしたストーリーが展開されていく。
「例えば、出張に金棒を持参するのか?という疑問に、『警備の仕事だから、商売道具の金棒は持参した方がいい』とか、『いや、飛行機での移動では空港の手荷物検査で引っかからないか』とか、こういったことをみんなで真面目にディスカッションするわけです。ほかにも、地獄全体の位置関係など、細部に渡って、しっかり世界を構築していくよう努めました。読者の子どもたちが戸惑うことなく、安心してお話の世界に入っていけるよう、そして思う存分楽しめるよう、とても大事なことだと思っています」
(取材・文=辻内史佳)