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「地味でも食べないで」毒きのこは派手よりも地味が多い? きのこ衛生指導員が注意喚起
環境や標高で変わるきのこ、最近の図鑑でも5年または10年前のものと認識を
――食用か有毒か、きのこ狩り客が野生きのこを見分けるのは難しいのでしょうか。この時期になると毎年、政府による注意喚起があるにも関わらず“毒きのこ”による食中毒事故が発生しています。
【下田さん】 一般の方が野生きのこを見極める事は難しいと思います。きのこは非常に種類が多く、その地域のみの限定種などもあります。また、環境や標高などでも見た目が変わることがあるので、最近の図鑑や本でも5年、10年前のものと捉えてほしいですね。
――厚生労働省では「食用きのこにソックリな毒きのこがある」とも啓発しています。
【下田さん】 皆さんがイメージされている毒きのこといえば、赤い傘に白い斑点を持った「ベニテングタケ」が有名です。ベニテンは童話やアニメ、漫画やゲームなどで使われている代表的なきのこで、見た目やインパクトなどで記憶に残りますが、本来一番怖いきのこは“地味なきのこ”です。
――毒を持つ植物や生物は“警告色”(威嚇や警告のための派手な極彩色)のイメージがありますが、きのこは地味こそ怖い、と。
【下田さん】 そうですね。食用ソックリで地味、でも有毒。だからこそ怖いんです。
【下田さん】 まずは採取しない事ですね。近年関東圏などで発生している「カエンタケ」は、触れるだけでも手が爛れる可能性がある猛毒種になります。
――誤食した場合は。
【下田さん】 症状はきのこの種類にもよりますが。腹痛などの身体の痛み、動悸や怠さ、幻覚症状などあります。長野県内での事例ですが猛毒種「ドクツルタケ」を誤食し、数時間で症状が出始め、激しい嘔吐といった胃腸系の症状で救急車搬送。その後、肝臓肥大・黄疸・出血などの症状があったようです。幸いこのケースでは回復しましたが、高確率で死に至るきのこも存在します。
勝手に採取したら窃盗罪に!? きのこ狩りのルールとマナー
【下田さん】 野生きのこと山野草の共通点として、まずは現地の採取場所は採っても大丈夫なのか確認してください。国有林野での採取は禁止ですし、その他の山々もほとんどの土地には所有者がいます。許可なく採取し、所有者から通報されると窃盗罪となります。
2つ目は、事故や怪我のリスクを減らす為の服装と備品です。ぜひ長袖、長ズボンを着用してください。虫刺され防止とともに、山中には触れただけで被れる野草が生えている可能性があります。黒い服や香水の香料は蜂やアブ、虫を寄せつけるので使用しない。ハイキングシューズや長靴、軍手やタオル、帽子も忘れずに。
3つ目は、基本単独行動は避ける事。常に居場所を確認出来る地図アプリを活用してください。森は動物達の生活圏です。早朝や夕方からの入山は遭遇リスクが上がる為、控えるのが正解です。
【下田さん】 そうですね。きのこ狩りは、ここ数年、「胞子活動」「菌友」など言葉を変えて楽しまれ、レジャー人口も増加傾向にあると感じています。そんな今だからこそ、改めて山中のルールやマナーを学んで欲しいと思います。
また、きのこ狩りは、必ずしも遠出の必要はありません。ぜひ、肩肘張らずにお近くの公園や里山にお出掛けください。普段見慣れた場所も目線を変えれば、さまざまなきのこ達が見れると思います。地面から出ていたり、木から出ていたり…時には昆虫の死骸や、きのこから他のきのこが発生といったことも。これまで知らなかった世界に出会えると思います。