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【話題のマンガ試し読み】ヒット続く韓国ドラマとマンガの相関関係、国産作品は世界にどう立ち向かう?「競争の激化はこれから」

 韓国を中心にグローバルで話題の縦スクロールマンガ・webtoonに参入する日本企業が相次ぎ、国産作品も増えている。しかし各マンガアプリのランキングを見ると、まだまだ韓国の作家が手掛ける作品の人気が根強く、LINEマンガの2023上半期ランキングでトップ20入りを果たした日本で生まれたwebtoon作品は『2周目冒険者は隠しクラス<重力使い>で最強を目指す』のみだった。グローバルで成長を続ける市場で、マンガ大国・日本のコンテンツ業界はいかにして戦っていくのか。web小説や映画業界も経験し、同作をヒットに導いた2人の編集者に話を聞いた。

韓国web小説の広がりがマンガ、そしてドラマへ…押され気味の国産作品

 マンガアプリ大手・LINEマンガの2023上半期ランキングが発表され、1位『私の夫と結婚して』、2位『入学傭兵』、3位『再婚承認を要求します』など、トップ10中、実に8作品を韓国の作家が手掛けるwebtoon作品が占めた。

 webtoon市場はグローバルで急成長しており、2020年代に入ってからは日本でもテレビ局、ゲーム会社、IT企業など多種多様な業種が続々とwebtoon事業に参入している。とは言え、上記のランキングの通り、いまだ韓国作品が優勢だ。

 同ランキングで日本の制作スタジオが手掛けるwebtoonでは唯一トップ20入りをした『2周目冒険者は隠しクラス<重力使い>で最強を目指す』の編集者であり、これまでライトノベルのコミカライズなどに関わってきた株式会社ストレートエッジ・木村祐輔さんは、韓国の作家によって生み出されるwebtoon作品のアドバンテージを次のように語る。

「まず1つには作品数の多さが挙げられるでしょう。日本を含む海外展開されている作品は韓国国内での競争を勝ち抜いてきた、いわば厳選された作品だということですね。加えて韓国ではweb小説の裾野がかなり広く、そのシーンがwebtoon原作の豊かな土壌になっているようです」(木村さん)

 また、大手映画会社で邦画、洋画、アニメのマーケティングを担当し、同作のディレクションを務めるHykeComic・小川真司さんは、プロモーションの観点からこのように指摘する。

「韓国のコンテンツ業界では原作ができたらまずwebtoonで試し、反応がよかったものを映像化するというスキームが存在していると聞きます。韓国ドラマというグローバルかつマスに届くメディアによって、原作にもさらに読者が流入するというエコシステムがwebtoon市場の拡大に拍車をかけています」(小川さん)

「転生ファンタジー」が好まれる理由は“早さ”と“刺激”、読者が求めるタイパに合致?

 日本の制作スタジオが手掛けるwebtoonとしてヒット街道を駆け上がっている『2周目冒険者〜』は、HykeComicとストレートエッジが共同でコンテンツ開発・運営を行なう国産webtoonレーベル・HxSTOONの作品だ。

 その編集者である木村さんは、複数のライトノベル編集部でアニメやコミカライズ化された作品を担当してきた。その経歴を経て、現在はストレートエッジで小説の編集や作家のマネジメント、webtoon作品の企画に携わっている。『2周目冒険者〜』は原作者・猫子さんと担当編集者・木村さんが、企画から立ち上げたオリジナル作品だ。

「猫子さんは主にweb小説で活躍されている人気作家さんです。web小説の作家さんは“1話ごとの的確な盛り上がりポイントとカタルシス”、“次話に読者を誘導する巧みな導線作り”などに長けています。この読者を離脱させないセンスは、webtoonにもコンバートできるのではないかと考えました。企画立ち上げ当時は、お手本になる日本の作家さんや制作スタジオによるwebtoonがなく手探り状態でしたが、“web小説作家×webtoon”の相性の良さは感じていましたね」(木村さん)

 一方、ディレクションを務める小川さんは大手映画会社でマーケティングを担当したのち、2022年にHykeComicに入社。最初に手掛けた作品が『2周目冒険者〜』だった。

「webtoonに関しては僕も手探りでしたので、自分自身が読者目線になるところから始めました。本作はwebtoonでは王道の転生回帰バトルファンタジーですが、このジャンルが人気なのは“主人公が早く強くなる=読み始めから刺激がある”という要素を備えているから。webtoonは電車移動中など主にスキマ時間に読まれるので、映画や横読みマンガで好まれる“主人公が努力を重ねて強くなっていく”、“伏線を随所に張って回収する”といった紆余曲折した構造よりも、ある種のわかりやすさとテンポ感が必須だとわかりました」(小川さん)

 さらに類似作品が多い中で、同作が傑出しているのが、主人公の属性を<重力使い>としたことだった。
「既存のファンタジーバトルマンガでも重力使いキャラはいましたが、花形ではありませんでした。ところが縦スクロールで読むと、この能力がとてつもなく映える。まず猫子さんのアイデアが秀逸でしたね。さらにキャラクターデザイン、ネーム、作画、着彩といった各分野のプロフェッショナルが読み味のダイナミズムを生み出しています。『2周目冒険者〜』のヒットは縦スクロール、フルカラー、分業制というwebtoonの特性が最大限に発揮された成果だと感じています」(小川さん)

日本のwebtoonの競争激化はこれから「確実に世界で勝負できるはず」

 従来からマンガを手掛けてきた出版社はもとより、テレビ局、ゲーム会社、IT企業などあらゆる業界の参入が相次ぎ、日本でも成長が期待されるwebtoon。しかし木村さん、小川さんともに「本格的な認知の広がりはこれから」と口を揃える。

「webtoonは企画からリリースまで最低でも1年はかかるため、プレイヤーは増えていても作品数はまだまだ少ない状況です。逆を言えば数年内に一気に作品数が増えるでしょう。HxSTOONは比較的早い段階でwebtoonに着手したため、いち早く結果が出せましたが、今後はさらに競争が激しくなることが予想されます。競争の激化は作品、ひいては業界全体のクオリティ向上にもつながりますから、ポジティブに捉えています」(木村さん)

 webtoonでは世界に出遅れたが、日本にはマンガの深い歴史がある。

「韓国の作家さんたちのwebtoonは確かに強いですが、ストーリー構築やネーム、キャラクターの魅力といったマンガのエッセンスの部分は、日本のwebtoon作品も引けをとりません。今後、経験を積んでwebtoonが国内でもさらに多く読まれるようになれば、確実に世界で勝負できるはずです」(小川さん)

 加えて、映像分野の経歴がある小川さんが指摘するのがメディアミックスの重要性だ。

「近年は『女神降臨』『地獄が呼んでいる』など、webtoon原作の韓国ドラマのヒットが続出しています。日本が世界に誇れるコンテンツはアニメですが、マンガのアニメ化は確立されているものの、webtoonのアニメ化はこれから。作品のマス認知を得るためにも、メディアミックスは必須です」(小川さん)

 もちろんメディアミックスにつなげるためには、webtoonシーンの盛り上がりも欠かせない。

「業界が成長していくためには、人気作が次々と生まれ、入れ替わっていくことが大切だと感じます。今は各社ともwebtoonの王道である恋愛もの、バトルもの、ファンタジーものに注力していますが、さらに多様なジャンルが生まれることで新規読者も獲得できるはず。webtoonというメディアのさらなる可能性にチャレンジしていきたいです」(木村さん)

(文:児玉澄子)
2周目冒険者は隠しクラス<重力使い>で最強を目指す(外部サイト)/猫子(原作・脚本)ちくわ(キャラクターデザイン・作画)
「LINEマンガ」にて毎週水曜先行配信中

次元の穴から魔物が襲来し、それに対抗できるレベルやスキルなどの能力が発現するようになった現代。早期に限界が来ることを知らずに〈盗賊〉というクラスを取得したイコマはS級冒険者まで登りつめたものの、能力的に伸び悩み落ちぶれてしまっていた。そんな時、住んでいた都市が凶悪なドラゴンに襲われる。果敢に立ち向かうが、相手にならず致命傷を負ってしまうイコマ。しかし、奇跡的に〈盗賊〉のスキルでドラゴンから時間を巻き戻すレアアイテムを奪うことに成功する。十年前に戻ったイコマは、一周目で得た知識を用いて隠しクラスと言われていた〈重力使い〉を取得する。「今度こそ俺は……最強の冒険者になってみせる!」

マンガの続きはコチラから『2周目冒険者は隠しクラス<重力使い>で最強を目指す』(外部サイト)

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