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【話題のマンガ試し読み】いじめに家出少女の売春、貧困ビジネス…グローバルで話題、現代の闇を抱えた“腐った学校”を立て直す教師に反響
日本でのヒットの理由とは?「日韓の学校で起こる事件・事故は似ているから共感」
チェ・ヨンテクさん日本の読者の方々からも支持をいただいているという話を聞き、とてもうれしいです。
最近読んだLINEマンガの「鉄槌教師」は面白いと思いました。細かい設定をもうちょいローカライズして、日本を舞台とすることも無理なく出来そう。実写化したら当たりそう?令和のGTOになるかも。
— 諏訪部順一 Junichi Suwabe (@MY_MURMUR) June 21, 2023
あ、すでに音声ついてるのあるみたい?ウヒ〜、やりたかった〜!
チェ・ヨンテクさん最初から日本のみなさんにも読んでいただけるとは思っていなかったので、特別に日本の読者の方々に向けてアピールするような要素などは、意識せずに描き始めました。ただ、小さい頃から日本のマンガを読みながら育ちましたし、マンガの描き方も日本の作品で勉強しました。なので、ストーリーの流れや演出のところで日本の方々にとっては、なじみがある部分もあるのかもしれません。また、学校で起きる事件・事故については、日本も韓国も似たようなところが多いと思いますので、共感していただけたんじゃないかと思っています。
――本作は、「体罰禁止法」の成立以降、生徒によるいじめや教員への暴力が蔓延。モンスターペアレントの存在も含め、教師が圧倒的に弱い立場となり、生徒がやりたい放題できる“腐った学校”に対し、特別指導を施す“教権保護局”から派遣された主人公のナ・ファジンたちが、“鉄槌”も厭わない強攻策で、学校を変えていく学校を変えていくというフィクションの設定を交えた物語です。そもそもこの原作のアイデアは、どのように着想したのでしょうか?
チェ・ヨンテクさん前作の『復活する男』という作品に、お金をもらって学校内の暴力を解決する学生組織を登場させたことがあります。この作品は、学校の話より主人公の物語がメインだったため、学校に関しては深い話ができず、残念でした。なので、当時の設定を元に拡張させて書いたのが、この『鉄槌教師』です。
調べて分かった児童虐待事件の本質「親が子どものことより自分を優先している」
チェ・ヨンテクさん(エピソードの題材になる問題の)資料調査を行って、生み出します。この資料調査をしながら1つ感じたことがあって。それは、似たような事件は似たようなメカニズムで起きるのではないか、ということです。
――例えば?
チェ・ヨンテクさん児童虐待を題材にしたエピソード編を連載する際、数々の児童虐待事件を調べましたが、さまざまなパターンの事例があるなかで、もっとも共通しているのが、子どもにご飯を食べさせないことでした。では、なぜ子どもにご飯をあげないのでしょうか。確かに、子どもに毎日ご飯を作って食べさせるということは大変なことですが、だからといってご飯を食べさせなくていい理由にはならないと思います。
――では、何が理由だと思いますか?
チェ・ヨンテクさんそれは、親が子どものことより自分のことを優先しているのです。私は、それが児童虐待の本質なのではないかと資料調査を経て感じました。このように、題材を決めたら、1件の事件だけをモデルにするのではなく、それと似たような事件もできる限り調べて、加害者がどんな気持ちでそのような行為をしたのか、本質に迫るような展開を考えています。
――なるほど。事件の本質に迫るための入念な準備が、作品の人気につがっているのですね。教師と生徒が登場する日本のエンタテインメント作品は、「更生」を前提にしているからか、暴力的な行為に対しても、寄り添い諭すことが多く、その多くは「更生」していきます。一方、本作で描かれている物語は、生徒たちに対しても強行策が取られるほか、生徒自身も「更生」する者もいれば、更生できずに「変わらない」者も描かれています。なぜ、「更生」できない生徒も描こうと思われたのですか?
チェ・ヨンテクさんリアリティのために、いろいろなケースを描きたいと考えています。世の中は童話の世界とは違いますから。上記のように、資料調査をして本質を探り、キャラクターをどんどん深掘りしていくうちに、そのキャラクターが更生する者なのか、変わらない者なのか、段々と見えてきます。
――物語が進むにつれ、主人公のナ・ファジンの過去や因縁も明らかになっていきます。その中で、“教育者”としての姿を一瞬忘れるような描写もありましたが、彼にとっての「正義」は、いったいどういうものなのでしょうか?
チェ・ヨンテクさんナ・ファジンにとって正義というものはありません。物語の中で主人公の正義を強く主張しないことで、読者それぞれの主人公とは違う正義についての考え方も尊重したいからです。正義に正解はありませんからね。ナ・ファジンの行動は、とてもシンプルです。問題の本質を見極めて解決する。その中で加害者が更生や反省をするとか、最後まで悪人のまま変わらないとかは、重要ではないと思っています。
今夏から「シーズン2」を連載「新しく登場するキャラクターがいます」
チェ・ヨンテクさんハン・ガラム先生のコンテを見ると、キャラクターの気持ちや成長背景までが、デザインと顔の表情に投影されています。先生が私に一番よく聞く質問も「このキャラクターはこのとき何をどう考えているか」という心の奥底にある気持ちについてです。私が考えていた…いや、それ以上のことを表現してくださっていると思います。
――100話を超える「シーズン1」が完結し、今夏から「シーズン2」の連載が再開すると伺いました。今後はどのような展開が待っているのでしょうか?
チェ・ヨンテクさん「シーズン1」は完結しましたが、『鉄槌教師』の物語が終わったわけではありません。なので、これから始まる「シーズン2」もこれまで同様、既存の流れを続けていくつもりです。そういった意味では特別に新しいことはしないと思いますが、新しく登場するキャラクターがいます。
――新キャラの登場も楽しみですね。それでは最後に、本作を通して、先生が読者に届けたい、伝えたいメッセージを教えてください。
チェ・ヨンテクさん作品全体を通して伝えたいまとまったメッセージは実は特にないんです。どちらかというと、『鉄槌教師』を通していろいろな事件を見ていただくことで、個々の事件の本質についてみなさんにお話していきたいというのが主軸です。事件の本質はケースごとに違うので、それぞれのエピソードから色々なことを感じ取っていただけたら嬉しいです。