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(更新: ORICON NEWS

会社の「代表電話」は必要? 業務の中断、“TELハラ”の苦しみ…代行サービスも活発

 企業内のあらゆる業務において、AI活用による合理化が進む昨今。会社の「代表電話」もまた、人が対応していたものから、「自動音声ガイダンス対応電話」や「問い合わせメール」に置き換わりつつある。その背景には、1to1の連絡でビジネスが進むようになり、代表電話の内容そのものが空洞化していることが考えられる。それなのに電話対応という業務だけが残ってしまっている現状。かつてのような新人の教育効果も薄くなった中、会社の「代表電話」は必要なのか。

新人にとって電話対応は恐怖、「誰かが取るだろう」疑心暗鬼も社内に悪影響?

 かつて、会社の窓口であり“顔”となる代表電話は、企業にとって重要な存在だった。それが昨今、あらゆる業務の合理化の流れのなかで「自動音声ガイダンス対応電話」や「問い合わせメール」に置き換えられ、人を経ずに自動で担当部署へまわされるのが一般的になりつつある。

 ある程度の規模の企業であれば、さらにその先に部署ごとの電話がある。そもそも「電話対応」は、電話番が必要になったり、業務が中断されたりと、仕事の時間を割かれるわずらわしさがあった。自ら積極的に取りたい人はまずいないはず。今も昔もおそらく、電話対応は新人社員の仕事だろう。

 新人は電話を受けて、用件を担当者に伝えることで仕事内容を把握しながら、その一部を担っていることを実感するとともに、ビジネス対応を身につける。かつては、そんな教育効果が電話番にはあった。しかし昨今は、携帯電話や個人直通番号の導入など、「1to1」の連絡にビジネスの重要な情報のやりとりが集約されるようになってきた。加えて、重要なやり取りは、チャットやメールで「可視化」したほうがトラブルを避けられることもある。そんな背景から、電話番には営業電話対応など、業務効率も生産性も低い仕事しか残らなくなった。

 そもそも今の20代の多くは、家に固定電話がないため、知らない人からの電話を取る機会がないという。固定電話に出たことがない世代が、いきなり仕事で部署電話を取るのを任されることは、上の世代が思っている以上に過酷な業務のようだ。20代の社員にとって、「電話対応は恐怖でしかない」という声もある。

 さらに新人や若手のいない職場では、誰も電話を取りたがらない。「誰かが取るだろう…」そんなストレスから、社内の空気がギスギスすることもあるかもしれない。「成果」として評価されない電話対応は、自然に生真面目な人の担当になっている職場もあることだろう。

“電話番”でトイレに行けない状況に「それはおかしい」

 代表電話の代行サービス「fondesk」を提供し、業界シェア1位を誇るうるる社の脇村瞬太さんは、「代表電話の対応は、今や誰からも好かれない、きつい仕事。その現状を社内で理解することがまず大事」と語る。

 ある会社では、160人の従業員中、管理部門の2人が、月間約400件の電話すべてに対応していたという。1人は電話番として必ず席についていなければならず、1人が会議に出るともう1人はトイレにも行けなかった。また、2人同時に打ち合わせや会議に出席できないため、情報共有のための時間や手間など、無駄な労力が生じていた。

 「電話対応のために仕事の効率が下がり、トイレにも行けないなんて…普通に考えればおかしいですよね。しかも、こんなに電話を取っているのに“評価”に繋がらない。なぜなら、決裁権のある上司は、そもそも電話を取らないからこの過酷さが理解できないんです。こういうことが今まで放置されていましたが、ようやく『それはおかしい』という話ができるようになったのが最近の風潮です」

 同社は、代表電話の代行サービスの有用性を世の中に訴えるために、2021年3月の朝日新聞朝刊に意見広告を出した。「今こそ、職場から「TELハラ」をなくすとき。」という内容で、新人や総務部門が電話に出るのが当たり前の職場の空気や習慣を変えていこうというもの。生産効率が求められる中、業務を有効活用しようという働き方を見直すメッセージだった。これには大きな反響があり、「TELハラ」は、その日のツイッターの国内トレンド2位に入った。

「代表電話」は“時間の有効活用”で高い価値、上手な付き合い方

 実際に最近は、担当者に直接届く「問い合わせメール」の対応が増え、IT系企業や外資系企業をはじめ固定電話機を置かない企業も増えている。では、代表電話はいまの時代には必要ないのだろうか。脇村さんは、「fondesk」が2019年2月のサービス開始からすでに契約社数4000社を超えている現状に、「今でも代表電話はビジネスの大事なチャネルの一部であり、利用者は増えている」と答える。

 代表電話が必要な理由は2つある。まずひとつは、年配層や高齢者など電話やFAX使用がメインの層にとって、電話は楽であり、確実に安心してコミュニケーションを取るためのツールであること。そこをバッサリ切り捨てるのが難しい業界は多い。また、企業側にもこのスタイルのほうが慣れている従業員が一定数いる。今はまだ、その年代とそれをうとましく思う世代が、企業内で混在している移行のタイミングなのだ。

 もうひとつは、電話とテキストメッセージの併用が、メールより迅速な対応が可能であるうえに仕事の効率もよくなること。電話をかけてくるのは、急ぎの用件の場合が多い。もし本人が出られないタイミングでも、代表電話が受けてテキストメッセージを送っておけば、用件を確認したうえで業務の合間にかけ直せることで効率化を図れる。

 「電話嫌いを公言する人は増えている印象で、最近は電話をかけてくる人とは仕事をしたくないという人まで現れて…電話はどんどん悪者になっています。でも、チャットやテキストメッセージとスムーズに連携すれば、代表電話がハブになって“Speech to Text”の大事な役割を担うことができるんです。上手に付き合えば、時間を有効に使ううえでとても価値が高いと思います」

 AIやヒューマノイド技術のさらなる進歩によって、代表電話の対応も、人ではなくなる時代が来るかもしれない。しかし、日本企業にはまだまだ、電話を重んじることによるホスピタリティ重視の文化の土壌もありそうだ。便利で効率的な仕組みに置き換わっていく中でも、代表電話という形は新しいテクノロジーとリンクし合いながら生き残っていくのかもしれない。

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