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『名探偵コナン』灰原哀、「推し」心理をかき立てるキャラの魅力 アニメ版で補完された人間味も後押し

 『名探偵コナン』の主人公・江戸川コナンの相棒的存在にして、同作のサブヒロインである灰原哀の人気が勢いを増している。見た目は子どもだが中身は大人。姉を殺され、黒ずくめの組織から逃亡中という暗い過去を持つ。クールで大人っぽいイメージだが、最近は“推し”に一喜一憂するなど、等身大の女の子の一面を覗かせることもあり、そのギャップに男女問わず熱い支持が集まっているようだ。漫画連載開始から30年近く経つ今もなお、独自の立ち位置でファンを増やしている灰原哀の魅力とは?

今年は「灰原哀イヤー」、闇を抱える孤独な少女に「心から幸せになって」“熱量高い”ファン心理

『マガデミー賞2022』で助演女優賞を受賞した『名探偵コナン』の灰原哀

『マガデミー賞2022』で助演女優賞を受賞した『名探偵コナン』の灰原哀

 漫画連載から約30年(1994年〜)、アニメ放送から27年(1996年〜)と、親子2代にわたって愛されている国民的作品『名探偵コナン』。「見た目は子ども、頭脳は大人。その名は名探偵コナン」をキャッチフレーズに、数々の難事件を解決する人気シリーズだ。

 主人公・江戸川コナンの本来の姿は高校2年生の工藤新一であり、黒ずくめの組織から毒薬を飲まされ、小学1年生に幼児化してしまった背景がある。この毒薬を開発したのが灰原哀で、もともとは組織に所属する有能な研究者だった。姉を殺されたことで組織を裏切った彼女だったが、追い詰められて服毒自殺を試みる。ところが、彼女もコナン同様に子どもの姿に変わってしまった。

 2023年は、そんな彼女が大フィーチャーされる「灰原哀イヤー」だ。1月には、彼女の過去を振り返るTVシリーズ特別編集版『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン』が劇場公開。さらに4月14日に公開された新作映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』は、灰原哀がキーパーソンとなっている。

 暗い過去を抱える灰原哀だが、公式などで開催されるキャラクター人気投票では常に上位にランクインし、メインヒロインである毛利蘭を抑えて1位を取ることも多い。

 毛利蘭と言えば、コナン(工藤新一)と相思相愛で、誰からも愛される明るい性格。強さと優しさを兼ね備えた王道ヒロインで、もちろん彼女の人気も高い。しかし、灰原哀に寄せるファンの想いは、蘭とはまた違った“重み”のようなものがあるようだ。

 今年3月に発表された漫画キャラクターを讃えるアワード『マガデミー賞2022』(ブックライブ主催)でも、灰原哀が助演女優賞を受賞した。ブックライブの書店員すず木さんは、「灰原哀推しの読者は、総じて熱量が高い。投票コメントも、単に『好き』ではなく、彼女の幸せを心から願い、想いやる内容が多かったのが印象的だった」と証言する。

 物語では、コナンと同じ境遇であることから、蘭以上に共に行動することが多い。コナンとは恋愛を介在しない絆で結ばれた、良き相棒的な立ち位置だ。それでも時折見せる女心は切なく、彼女の抱えた孤独の深さはファンの胸を締め付けている要素となっているようだ。

アニメで伝わる人間味、「温かみ&感情のゆらぎ」を表現した声優・林原めぐみの功績

 灰原哀の初登場は、原作コミック18巻(1998年2月発売)、アニメ129話(1999年1月放送)であり、影のあるミステリアスな存在感と、子どもとしての可愛らしい見た目のギャップは、初期からファンを惹きつけていた。しかし、近年ますます熱を帯びている“灰原哀推し現象”は、「アニメで声優を務めてきた林原めぐみさんの功績も大きい」と、書店員すず木さんは推察する。

 「初期の彼女は、その境遇から周囲に心を閉ざしており、アニメでも落ち着いた低めのトーンの声で表現されていました。しかし最近は、声や口調に年相応の可愛らしさや温かみ、感情の揺らぎなども現れるようになっています。いわば“ツン要素”だけでなく“デレ要素”も垣間見せるようになったことが、ますます推し心理を掻き立てているのではないでしょうか」

 林原めぐみといえば、言わずもがな長年にわたって第一線で活躍する声優。「コナン」前には、テレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995〜1996年)の綾波レイ役で、社会現象を巻き起こしている。

 「綾波レイも、孤独と使命を背負ったキャラクターであり、灰原哀の声優=林原めぐみさんというキャスティングは原作ファンも大納得でした。さらに『コナン』のような長期レギュラーシリーズは、キャラクターの成長を味わえるのも醍醐味の1つです。林原さんがどんな演技プランで臨んでいるのかは、いちファンとして想像するしかないのですが…、灰原哀は、少年探偵団をはじめ周囲の人々との長年の交流と信頼関係を通して、素の自分を少しずつ出せるようになっていった。そんな彼女の環境や心情の変化まで声で表現されている、改めて素晴らしい声優さんです」

 基本的に灰原哀は饒舌ではなく、コミックではモノローグで語ることも多いが、アニメではそうした心の声も含めて、林原めぐみが表現している。また近年は、クール一辺倒だけでなく、ツンデレ発揮シーンも増えている。アニメだからこそ表現し得た「動く灰原哀」「しゃべる灰原哀」の人間味が、このところの人気を押し上げた要因であることは間違いなさそうだ。

「芯の強い女性を見守りたい」同世代からも共感

 『名探偵コナン』には、熱狂的に推されるサブキャラクターが多い。中でも「安室透」の人気は凄まじく、表紙を飾った2018年5月31日発売号の『週刊少年サンデーS』(小学館)は、同誌史上初の重版を記録。安室の本名である「降谷」のハンコが爆売れするという現象まで巻き起こした。

 灰原哀も、その系譜に連なる1人であり、推し活に応えてグッズやコラボカフェなども多数展開されている。特に今年は「灰原哀イヤー」だけに、映画公開を記念してファッション誌『CanCam』(小学館)5月号の付録に、原作イラストを使用した「日替わりカレンダー」が登場。ファンをキュンとさせたコナンへのセリフ「守ってくれるんでしょ」などが抜粋され、若い女性の心をくすぐるデザインとなっている。

 「30年以上が続く作品ながら、SNSなどをチェックしていると、灰原哀ファンには連載が始まった頃には生まれていないであろう若い女性が目立ちます。その理由として、灰原哀には現代女性に共感できる要素が多いからだと思います。現代は、『自分は自分』『人は人』と割り切り、自分の生き方を追求する芯の強い女性が増えました。それでもやはり人が羨ましく、眩しく見えてしまうこともあって…。灰原哀が毛利蘭をイルカ、自らをサメにたとえて、『相手はイルカ、海の人気者…。暗く冷たい海の底から逃げてきた意地の悪いサメなんかじゃ、とても歯が立たないでしょうね』と呟くシーンは、とても切なかったですね」

 灰原哀ファンは、彼女を「基本的に心配している」と書店員すず木さんは言う。

 「メインヒロイン(=毛利蘭)は、『最終的には主人公に守られるであろう』と安心して見ていられます。だけど、サブヒロインである灰原哀の行く末はわからない。だからこそ想像力を掻き立てられ、見守ってあげたいという気持ちにさせるんだと思います」

 『マガデミー賞2022』で助演女優賞を受賞した灰原哀だが、授賞式は欠席。その理由として、「表舞台に顔を出したくない」としつつも、「ありがと…こんな目立つ賞をもらって。組織(彼ら)の目にとまりたくはないけど、もらえるならもらっておくわ」という彼女らしいコメントを寄せている。

 「ファンからは、『あんまり騒ぐと哀ちゃんの身に危険が及ぶのではないか』と心配する声もありました。いかに実在の人物のように、彼女に心を寄せているかが伺えたコメントでしたね」

 心配だからこそ、等身大の素顔が垣間見えると、ファンもしばしホッとする。最近は、大ファンのサッカー選手の推し活に夢中で、彼の熱愛報道を受けておかしな行動を取る姿が描かれた回では、「哀ちゃんのキャラ崩壊!?」と驚きを呼びつつ、「普通の女の子として楽しんでてよかった」と安心する声もあった。

 ミステリアスな要素も多いながら、新たな魅力を少しずつ見せ始めている灰原哀。また時折覗かせるコナンへの思いも気になるところ。2人の関係がこれからどのように進展するのか、まだまだ目が離せない。

『コナン』黒ずくめの組織が『anan』ジャック 表紙にシェリー&ベルモット 裏はジン&ライ&バーボン


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