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「私と娘の心臓を取り替えて!」心臓に穴があった娘とママの奮闘記…自身に生じた“無力感”との闘い
産まれた直後から感じた違和感、それは病気のサインだった
事態が大きく変わったのは産後2週間の検診時だった。「ちゃんと3時間おきにミルクあげてる?お母さん、もっと頑張らないと」と、あまり増えていない体重を医師に指摘された。この頃、さくちゃんは相変わらずミルクの飲みが悪く、吐くことも多くなっていたが、ネット検索すると「新生児によくあるケース」として扱われていたため、不安ながらも周囲に相談できないでいた。
検診での指摘をうけ、アドバイスをもらおうと近所の助産院がしている母乳外来を受診。すると、さくちゃんの様子を見た助産師はその日のうちに小児科に行くよう声をかけた。さらに小児科から総合病院の緊急外来へと紹介が続き、ついに病気が発覚。心臓の中の壁に穴があいている『心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)』という心疾患だった。作中で当時の心境が綴られている。
『漫画やドラマで観る告知のシーンでは母親は涙を流したり呆然としたりしていた。だけどこの時私は、心底ほっとしていたのである。吐くくらい苦しむ娘にミルクを無理やり飲ませるのが辛かった。毎日命をむしばむ闇のようなものが迫ってくる恐怖感があった。何もわからない闇の中から治療という光を見つけた気がした』
その後、検査によって生後6ヵ月での手術が予定されていたが容体が急変。生後3ヵ月で4時間に及ぶ緊急手術をうけたさくちゃんは驚異の回復をみせ、今では元気いっぱいに走り回るおてんば娘に育っている。今年2月まで1年間かけて描いた闘病記をこやまさんはこう振り返る。
「私はお母さんなのに無意味で無力でごめんなさい」
子育てに不慣れな新米ママが新生児の病気に気が付くのは難しい。だからこそ、自身の経験もふまえてこうアドバイスする。
「不安や悩みは小さいことでも相談するといいと思います。話せば楽になることもありますし、もしその気になることが何ともないことだったとしても、周囲の人や専門家に『大丈夫だよ』と言ってもらえるだけで、安心できると思います。ネットはいつでもどこでも気軽に調べられることがメリットですが、やはりたくさんの情報があって、自分にとって都合の良い情報を信じていた気がします。わからなくてモヤモヤする時はやはり病院の先生に聞くのが一番です」
また、作中で『娘が大変なときにただ立ち尽くすことしか出来なくて、あげれるものなら私の心臓をあげたいと願いました』『私はお母さんなのに無意味で無力でごめんなさい。痛みも苦しみも変わってあげられなくてごめんなさい』と何度も自身の無力さに苦しむ様子を綴っていたこやまさん。周囲に病児を抱える親がいたらこんな風に接してほしいと話す。
「親御さんはそれでなくても後悔や不安を抱えているので“責めないで”ほしいかなと思います。『妊娠中栄養足りてなかったんじゃないの』『仕事で無理しすぎたんじゃないの』など根拠のないことや今更どうしようもないことは言わないであげてほしい。私だったら『治療を頑張っているんだね。かんばりやさんだね』と声をかけたいです」
さくちゃんの病気を通して「健康でいることは当たり前ではない」と痛感し、自身の意識の変化と周囲への感謝も口にする。
「入院中たくさんの子どもが入れ替わりで、心疾患を抱えた子どもだけでもこんなにいるのかと驚きました。健康でいるために自分にできることは努力しようと改めて思いました。また、医療従事者の方々が想像以上に患者さんに寄り添い、治療のために尽力してくださっていることを知ったので、医療従事者の方々へ感謝の気持ちを忘れずにいたいです」
闘病記を描くことで「自分の気持ちや病気への理解を整理できた」と話すこやまさん。今後は3歳のさくちゃんと1歳の弟あおくんとの面白いエピソードと、育児での悩みを投稿していく予定だ。病気を乗り越え笑顔いっぱいのさくちゃんの成長を見守りたい。