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「猫の神様」がくれた生きる力、後ろ脚なくても生き抜き天国へ…その名は今も“二代目”に受け継がれる
後ろ脚に奇形、でも…「猫の神様はちゃんと生きていかれる能力をくれた」
子猫は、茶白の小さな男の子。後ろの右脚は根本から完全になく、左脚は小さくねじれて縮んでいた。この状態では、さすがに外で生きるのは難しい。保護されたとしても、普通の猫のような自由な生活を送れるのかどうか…。
だが、そんな不安をよそに、その子猫は驚きの能力を見せる。前脚のみで身体を持ち上げて移動し、キャットタワーにも登ることができる。お気に入りのハンモックにも登れるし、うまくバランスを取って爪とぎだってできた。たとえ脚がなくても、子猫は生きようとする気持ちを失ってはいない。当時のブログには、「猫の神様は、ちゃんと生きていかれる能力をくれたんだね」と、感動をもって綴られている。
溝上代表によると、「初代『あんよ』も、本当に穏やかで人懐っこい、とてもいい子でした。なぜか障害を持っている子には、いい子が多いんです」とのこと。子猫は、強くしっかりと歩んでいけるようにと願いを込めて、「あんよ」という仮名をもらった。
虹の橋を渡っても、「あんよ」という名前は願いとともに生き続ける
「その方の家にはすでに、後ろ脚を片方切断している先住猫がいて。そのため、ご自宅はバリアフリーになっていて、脚が悪い子でも快適に暮らせるようになっていました。初代『あんよ』のように障害がある猫だと譲渡は難しいと思われがちですが、実はそうした猫こそ家族に迎えようという人が一定数います。優しい方々のおかげで、そんな猫たちも幸せに生きていくことができます」
「“かわいそう”だからではなく、“可愛いから”」。そうして優しい家族に巡り合った初代「あんよ」は新たな名前をもらい、「コチビ」として生きていくことになった。新たな家では、前脚2本で階段を上がるなど、できることもたくさん増えたという。家族の愛情にたっぷり浸り、可愛らしく、幸せに暮らしていた。
ずっとずっと、そんな「コチビ」の日々は続くかと思われたが、3月初旬に突然の訃報がもたらされた。一番つらいのは「コチビ」の家族とは思いながら、送り出した『ねこけん』のボランティアメンバーも悲嘆にくれたという。
だが「コチビ」は、障害があっても前へ進むことができること、生きていける強さがあること、そして愛情と幸せを分かち合えることを教えてくれた。家族にも、『ねこけん』にも、たくさんの宝物をくれたことは間違いない。
「『コチビ』のほかにも、うちには障害があったり、体が不自由だったりする猫たちがたくさんいます。それでも、幸せに生きられる、生きる権利があることを知っていただきたいです」
虹の橋を渡っていった「コチビ」。もっともっとその幸せを見守りたかったけれど、もう会うことは叶わない。だが、最初にもらった「あんよ」という名前は二代目に受け継がれ、「強くしっかりと歩んでいけるように」という願いとともに、今も生きている。
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