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SMAP反戦ソング「Triangle」なぜ再注目? “解散”時にもファンからの支持、裏側に“この曲と歩んだ人々の物語”

 ロシアによるウクライナ侵攻で、緊迫感が深まる3月初旬、エンタメ界にもある動きが起こった。それが、SMAPが2005年にリリースしたシングル曲「Triangle」の再浮上である。SMAPにとっても異色と言える“反戦ソング”だが、なぜ今、再び注目を集めることになったのか。この曲が生まれた経緯、そして今もファンの心の中に残り続ける楽曲の意味を読み解きたい。

15年以上前の曲が再注目、なぜSMAPが反戦ソングを歌ったのか?

 「Triangle」に動きが見られたのは、2月後半。ウクライナ情勢に心を痛めたSMAPファンを中心に「今こそこの曲を聴いてほしい」と自然発生的に声が上がり、じわじわと話題になっていった。すると、2月28日には元メンバーである稲垣吾郎が自身がパーソナリティーを務めるラジオで「平和への願いを込めて、この曲をお届けします」とフルコーラスでオンエア。リスナーからは「世界中に届けたい」「いつも以上に涙があふれて止まりませんでした」と、多くの感想が寄せられた。

 すると、ランキング上でも影響が見られ、3月1日付「オリコンデイリーデジタルシングル(単曲)ランキング」で3位にランクイン。「オリコン週間デジタルシングル(単曲)ランキング」でも、3月7日付けで89位に浮上、14日付けではなんと11位に急上昇し、初のTOP30入りを果たした。『おはよう日本』(NHK総合)で桑子真帆アナウンサーが、同曲を紹介する際に思わず涙ぐむ、といった場面も見られた。

 そんな「Triangle」がSMAPのシングルとしてリリースされたのは、実に15年以上前の2005年。解散目前の2016年12月21日に発売された、最後のベストアルバム『SMAP 25 YEARS』にも収録された。

 それまで約400曲を発表してきたSMAPにとっても、異色といえる反戦ソングである同曲は、なぜ生まれたのか。そして、そんな曲が400曲の中からファン投票(総数200万票)で20位に選ばれ、ベストアルバム収録に至ったのはなぜか。世の中に反戦ソングは数々あれど、「Triangle」がいま再注目された理由は、そのあたりに潜んでいるのかもしれない。ここでは、解散が発表された2016年にORICON NEWSで実施された連載企画から、『SMAPベスト盤を読み解く PART.4 あの頃にしか歌えなかった意外な“反戦ソング”』を再掲載。「Triangle」の背景から、ファンの受け止め方、長く愛される楽曲になるまでの経緯を探る。長年SMAPを追ってきたライターが読み解いた、「Triangle」の姿とは?

「Triangle」発売前夜、シングル発売はなく紅白出場も辞退

 2004年、SMAPはシングルを1枚もリリースしなかった。

 「世界に一つだけの花」が“ダブルミリオン”を記録した翌年のことだ。この年、香取慎吾はNHK大河ドラマ『新撰組!』に主演、SMAPがデビューして以来初の“ライブツアーのない1年”であり、「シングルを発売しなかったため、披露する曲がない」という理由から、その年の『NHK紅白歌合戦』出場も辞退している。

 とはいえ、個々のメンバーの新しい分野への進出ぶりは目覚ましく、中居正広は同年TBSの五輪キャスターに就任、木村拓哉は、ウォン・カーウァイ監督の映画『2046』が公開され、『ハウルの動く城』でジブリ映画の声優に抜擢された。稲垣吾郎がストーリーテラーを務める『本当にあった怖い話』(フジテレビ系)のレギュラー放送が始まったのもこの年だし、三谷幸喜脚本の映画『笑の大学』では役所広司と丁々発止の会話劇の中で、現在に通じる“コメディセンス”を存分に発揮していた。草なぎ剛は、“僕シリーズ”の2作目、『僕と彼女と彼女の生きる道』(フジテレビ系)をヒットさせ、また全編韓国語の日本映画『ホテルビーナス』も話題となった。

 ツアーのない夏。SMAPと一緒にはしゃげない夏。それは、ファンの心にちょっとした空洞感のようなものをもたらした。けれど、でも夏の終わりに、香取主演の映画『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』が公開されたりして、ファンは物足りなさを感じつつも、「来年はきっとすごいお祭りが待っている!」と信じさせてくれるパワーが、それぞれのメンバーには漲っていた。

「世界に一つだけの花」の呪縛? 国民的ソング路線への疑問

 翌2005年にリリースされたシングルは3枚。1月リリースが「友達へ〜Say What You Will〜」で、なんと、作曲を手がけたのはエリック・クラプトンだった。作詞は竹内まりや、編曲は小林武史と、これぞ当時考えられる最強タッグが実現!という布陣だったが、正直、待ち望んでいた新曲としては、肩すかしを食らった気分だった。曲がどうのというよりも、「“あの”エリック・クラプトンがSMAPに曲を書き下ろしてくれました!」的ビッグネーム先行のリリースが、内容よりも権威が重視されているようで、漠然と、「世界に一つだけの花」の呪いというか、“また引き続き国民的ソングを歌い続けます”という宣言のようで、SMAPが守りに入ってしまった気がしたのだ。

 でも、7月には宮藤官九郎作詞の「BANG!BANG!バカンス」がリリースされ、ツアータイトルも『SMAPとイク? SMAP SAMPLE TOUR』と遊び心のあるものだったし、シングルとツアーとアルバムの合わせ技で、お祭り的SMAPが帰ってきた嬉しさはあった。シングル曲のように、“1曲”で今のSMAPを表現されても、不満が残ったり、趣味が合わなかったり。大勢の欲望や願望を満たすことは難しい。でも、コンサートでなら、絶対にSMAPは期待を超えるエネルギーや輝きを見せてくれた。

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