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SMAP反戦ソング「Triangle」なぜ再注目? “解散”時にもファンからの支持、裏側に“この曲と歩んだ人々の物語”

哲学的な反戦ソング「Triangle」が選ばれ、残り続ける理由

 前置きが長くなってしまった。これは、アルバムレビューの第4弾なのだけれど、全50曲を10曲ごとに区切ると、31曲目に当たるのが「Triangle」で、正直を言えば、この曲がリクエストの20位に入ったことが、少々意外だった。その理由は、「友達へ〜Say What You Will〜」同様、その歌詞やメロディに若干“守り”のようなものが感じられたからだ。「Triangle」は、この『SMAP SAMPLE TOUR』で初披露され、草なぎ剛と香取慎吾がメインパーソナリティーを務めた2005年の『24時間テレビ』(日本テレビ系)でも歌われた。そこから話題になり、シングル化を望む声が多数上がったことから、11月にSMAP38枚目のシングルとしてリリースされたのである。アンチとまでは行かないが、あまり「世界に一つだけの花」に心酔していなかった私は、“SMAPの曲に、こういう道徳的な路線が増えるのはイヤだなぁ”という気持ちがあって、「オレンジ」を手がけた市川喜康の楽曲であるにも関わらず、この曲に強い思い入れはなかった。

 どうしてこの曲がこんなに上位なんだろうと疑問に感じ(失礼!)、ビクターのサイトで、リクエストした人たちのメッセージを読んでみた。すると、本当に、リクエストした人たちが“この曲と歩んだ物語”が切々と綴られていた。若い世代にとっては、“教科書に載っていた”という事実も、歌と歩む物語を生み出す上での手助けになっていたのかもしれない。とはいえ、あらためて歌詞を読み、歌を聴くと、世の中とそこに生きる人々を見守る視線に含蓄がある。「世界に一つだけの花」が絵画的なイメージなら、こちらはむしろ哲学的で、9.11以降の平和を祈る“反戦ソング”として、さまざまなことを思考させる。情報が溢れ、不寛容が蔓延し、正解ばかりを模索する時代に、“絶対に思考停止をさせないぞ”とでもいうような、力強いメッセージが漲っている。ある意味、この時代のSMAPにしか歌えない曲だったのだろう。彼らは年末の紅白で、大トリとしてこの曲を披露した。

 人が生きていく上で、物語は必要か。音楽は必要か。絵画は必要か。娯楽は必要か。それは、エンタテインメント業界の人たちと話しているときに、ときどき出てくる話題である。物語も、音楽も、絵画も、コンサートも、たしかにライフラインではない。でも、人が生きていく上で、“これがあるから頑張れる”とか、“あの瞬間を思い出すと、つらいことも乗り越えられる”と思える、宝物のような時間を胸に生きている人は、たぶんきっと多い。「Triangle」は、誰かにとっての心の支えになっている曲で、その楽曲のポテンシャルから言えば、また何か大きな諍いや対立や紛争があったとき、この曲が人々の心に平安をもたらすこともあるのかもしれない(でももちろん、そのときこの曲を歌っているのは、SMAPの5人であってほしい)。

(2016年12月15日掲載 【連載番外編】SMAPベスト盤を読み解く PART.4 あの頃にしか歌えなかった意外な“反戦ソング”より)

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