ORICON NEWS
King & Prince新曲「Magic Touch」、世界に羽ばたく本気と気概 ジャニーズの概念を変える試金石に?
キラキラの王子様からアングラ感も… 両方表現できる“ギャップ”で魅了
シングルでは「シンデレラガール」「君を待ってる」「koi-wazurai」など、キラキラの王子様を思わせる印象が強く、ジャニーズを体現する王道のグループとして君臨。だがそれはあくまで彼らの多彩な表現のなかの一面に過ぎず、ジャニーズJr.時代から、ダンスを武器に活躍しているメンバーもいるなど、そもそも“技術力”で魅了してきたグループである。
例えば高橋海人(※高ははしごだか)は幼少期にダンス大会での全国優勝経験が。ダンスの師匠は日本を代表するダンスパフォーマンスグループ「s**t kingz」のNOPPOだ。パフォーマンス力の高さでグループの支柱となっている平野紫耀は、体幹と筋力に支えられたダイナミック、かつ表現力豊かなダンスで、“ジャパニーズアイドル”の枠を軽々と凌駕する。
5月3日には「Magic Touch」のMV -Dance ver.がYouTubeに公開。高橋・平野の実力が遺憾なく発揮されており、これに呼応して他のメンバーもハイレベルなダンスを披露。公開わずか1週間(5/10現在)で約155万回を記録し、SNSでは「ゴリゴリに踊っている、こんなキンプリが見たかった」「平野紫耀のアイソレ可動域が広い」「キンプリがこんなにダンスが上手いことを初めて知った」などの反応が。
またダンス系YouTuberが続々とダンスをカバー。ダンス解説のチャンネルでは「踊れる人たちだということが伝わってくるダンス動画」「曲の主人公になりきれている」「上手いだけではなく表現力がずば抜けている」と感想が語られている。王道路線という世間のイメージがありながらも、HIPHOPやR&B調の世界観も表現できるギャップを明確に示す形となった。
キンプリの“新たな挑戦”を感じる官能的な全英詞のダンストラック
一方で、サウンド面の中心を担うのがダークなトラップ系のビートと怪しげなベース音。振り付けは世界的なトップダンサーのメルビン・ティムティムが手掛けたことで、緩急のついた切れ味鋭いパフォーマンスが展開されている。
注目したいのは、曲の途中でダンスだけを魅せる時間(ダンスブレイク)があることだ。ここでは高橋海人がセンターとなる。ヘルシーかつ怪しげな肉体のウェーブ感で衝撃にも似た存在感を放っており、バックにいる他メンバーを見事に率いる。『JOHNNYS' IsLAND(ジャニーズアイランド)』という2020年に帝国劇場で開催された舞台で、高橋海人が“ダンス選抜”としてJr.メンバーを率いて、ゴリゴリのダンスを踊る演目があったが、醸し出す雰囲気がその時の演目に似ているようにも感じる。
その背後で永瀬廉は滑らかでスイートなダンスで手先まで丁寧に表現。神宮寺勇太は平野に負けず劣らず曲の世界観そのものの空気を醸成して大きな存在感を。岸優太の歌唱力はさらにパワーアップ。舞台で鍛えられた華麗な動きとともに、独特の癒やしボイスが曲に別のニュアンスを帯びさせる瞬間も。後半部分のところどころに入るフェイクも秀逸だ。
平野のハスキーボイスは以前より特徴的だったが、まさにこの曲のために生まれたのではと思わせるマッチぶりで、ラップパートの歌詞〈Can’t stop,baby you know,gimme just a touch,I’m so finito〉も印象的。高橋海人の特徴的な声でのラップなど聞き所はもりだくさんだ。
洋楽とJ-POPのいいとこ取り! ギアチェンジしてからの流れに注目
歌詞においては、メインの英語詞の中に多少の日本語が混ざっているが、ほとんど語感を意識した言葉選びのため非常にリズミカルに仕上がっている。〈C’mon! Next phase〉を境にギアチェンジして雪崩れ込む終盤、この曲の心地よいフロウとサウンドに自然と心も体も揺れる感覚に。
MVは近未来サイバーSF感を思わせるCG映像からスタート。ボリュメトリックと呼ばれる最新技術を用いて撮影され、ほぼ物理的に不可能なカメラの移動によってメンバーたちのパフォーマンスを 3DCG で映し出している。
そもそもキンプリは「誰もがセンターになれる」と言われるほどハイスペックなメンバーで組まれており、MVでスポットが当たるメンバーも流動的。これが最新的なテクノロジーとコラボすることで、それぞれが新たな武器を備えたような印象が感じられる。世界を見据えた意思表示としてのパフォーマンスにーー彼らのそんな“気概”が感じられる一曲となっている。
同リリース曲たちは近年のダンスボーカルグループのシーンを賑わすクリエイターたちによる世界基準の作品作り、成長し続け飛躍した彼ら自身の表現力も併せ、King & Prince が世界へ向けて踏み出す一歩となる一枚になるはずだ。
(文/衣輪晋一)