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俳優陣も驚嘆した“渋谷完全再現セット”の裏側 VOD時代に広がる新たな表現の可能性とは?

破損や落書き…人為的な劣化を違和感なく表現 セットは作品に応じてアップデートも

 『今際の国のアリス』のメイキングを見ると、改札や公衆トイレ、交番、広場に展示されている元東急5000系の車両にいたるまで、細部にこだわって制作されているのが分かる。

「駅の改札やトイレ・道路の汚れなど、実物の再現性にこだわって制作しました。綺麗な素材に、あえて汚しを施す作業をしています。塗料を使うことが多いですが、実際に飲み物をこぼしたり、乱暴に扱って意図的に破損させたりすることもあります。また、時間の経過とともに風雨や排ガスで色あせていく自然な劣化と、多くの人々が行き交うゆえに発生する破損や落書きといった人為的な劣化を違和感なく表現しています」

 セットの増築やアップデートも作品に応じて行われている。一番最初の撮影の際には、着工から撮影開始までは概ね3カ月程度かかったが、大規模なセットがゆえに一部を作りながら撮影を行っていたそう。その後、作品を撮影するたびに少しずつセットが追加されて今の状態になっている。

すべてをCGでという流れには懐疑的…セット活用したVODの可能性「新しい映像作品を発表できるきっかけに」

 CG技術が発達している現代で、これほど大規模なセットを建設した理由は何だろうか。

「すべてをCGにするのではなく、実際のセットと併用することでよりダイナミックな映像表現が可能となりました。時間をかけて撮影をする際に人や車の流れを止めるわけにはいかないので、それを可能にするセットが必要でした。例えば実際に車を走らせる、爆破をする、時代を変えるなどの撮影が可能となることで、CGにはない絶対的な臨場感が表現できると思います。またエキストラも大人数を入れられるので、規模の大きな撮影にも対応ができ、作品のクオリティも上げられると考えます」

 『サイレント・トーキョー』では観光バス10台を出して、1000人以上のエキストラが何日もこのセットに集まった。監督も「このオープンセットがなかったら映画はできなかった」とコメントを残している。

 当初は予定していた作品の撮影のためだけのセットであり、撮影終了時に取り壊す予定だった。しかし、各制作会社からの要望や足利市との協議の中で、「この財産を是非映像制作の今後の可能性に役立てたい」との考えが現在のスタジオとしての運営に繋がっているという。

 最後にセットを活用したメディアの可能性について聞くと、映画だけでなく、近年登録者が急増しているVODへの可能性を示唆した。

 「日本の映像配信サービスでもオリジナル作品の制作が盛んになり、母数増加に伴い撮影の需要が高くなることは想定されます。実際にNetflixの作品も当スタジオで撮影が行われました。また、VODは地上波などに比べると表現の自由度が高い媒体だと思いますので、これまでは映像化が不可能と思われていた作品や、全く新しい映像作品を多く発表できるきっかけになると考えています。制作者にとっても、新しいことにチャレンジできる場があることは嬉しい状況です」

 近年テレビなどの予算は縮小している中で、各VODでのオリジナルコンテンツの制作にはかなりの予算が投じられることも多い。特にNetflixは世界規模で配信していることもあり、『今際の国のアリス』は全8話というドラマ仕立ての作品に惜しむことなく予算をかけられている。同作品の監督である佐藤信介は「Netflixでやれるならこの作品は躊躇なく作ることができるという確信がありました」と述べている。これからも、このような大規模なセットを駆使した、今までに見たことのない映像作品が生まれることを期待したい。

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