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「95歳のつぶやき」が話題、内海桂子師匠がツイッターで紡ぐ“大切な日常”

  • 9月には96歳を迎える内海桂子師匠

    9月には96歳を迎える内海桂子師匠

 16歳で初舞台を踏んで以来、現在御年95歳となる現役最高齢の芸人であり、人気お笑いコンビ・ナイツの師匠としても知られ、漫才協会名誉会長でもある内海桂子師匠。桂子師匠は2010年からツイッターを開始しているが、日常のことから世間の話題まで独自の目線でほぼ毎日投稿し続け、現在フォロワーは47万人。大正、昭和、平成と3時代を駆け抜ける「95年の年輪」が紡ぎ出す“貴重ツイート”に、今多くの人が注目している。

桂子師匠のツイッターの凄さは「年輪の数」だけある経験値の深さ

 『大正11年生れの漫才師です。体の右側はゲタ骨折、大腿骨折、右乳がん、右手首骨折、右目緑内障と大体やられています。でも舞台で踊りもしています』(原文ママ。以下『 』内同)とのプロフィールにはじまる桂子師匠のツイッターは、1日に1回のペースで投稿され、その日の天気や自身の体調、世間を騒がせた時事ネタとそれに対する感想等々、多岐にわたる。今年のツイートを振り返ってみると――。

 『徳島の阿波踊りは夏の風物詩でこの猛暑も飛んで行けと皆さん頑張っていると思っていたが何かトラブルが起こっているとか。祭りは大規模になると行政や警察も加わってくるから厄介になるが元々は庶民の喜びを皆で盛り上げたいのが望みで上からどうこういわれてもやりたい人の気分を抑えるのは至難の業』(2018年8月13日)

 『猛暑だからそれもありと思ったけれど早朝に試合を組むオリンピック大会には違和感が。某国の都合で八月開催になり朝っぱらから試合をさせるなんて。開催国の言い分が通らずTV放映権料を多く払う国の時間に合わせるというなら東京が大金を使って開催するのはとてもお人よしを絵に描いたように思える』(2018年7月23日)

 『小学校の制服に高名なデザイナーの物を選べばそりゃ高価でしょうが選んだ動機が何なのかあまり触れられず。賛否は別にしてもしそれを着なさいと言われたときにちゃんと着ることができるか。着物もそうだが着こなす努力も面白い挑戦事になると思う。もし採用されたら入学式の子供達の表情を見てみたい』(2018年2月15日)

 時事ネタでは、徳島の阿波踊り問題や、猛暑に絡めて東京五輪を語ったり、銀座・泰明小学校のアルマーニ制服のことであったり、世間の注目を浴びたニュースを桂子師匠ならではの視点で綴っている。中には、最近のテレビでは避けられるような強烈な批判なども織り交ぜられているが、どれもが“正論”であり、批判するだけではなく“提言”も加えられているので炎上することもない。

 そして、桂子師匠のすごさは、その“年輪の数”にもある。

 『巨人軍長嶋選手の初舞台は確か散々な目にあったと記憶しているが実力者はすぐに力を発揮してなるほどと感心させられた。今日は清宮選手があわやホームランかのヒットを打って一安心』(2018年5月2日)

 もちろん、長嶋選手=一茂ではなく、父・茂雄だ。往年の国民的スター・長嶋茂雄選手のデビュー時(1958年)のことをサラッと語るも、桂子師匠は当時35歳。リアルタイムで見聞した“普通”のことを語っているだけなので、言葉にリアリティーがあるのも当たり前。その飾らない生々しい言葉は、戦争体験を綴る際にも読む者に迫ってくる。

 『2.26事件は昭和11年だから私は13歳で奉公から返され三味線と踊りを習っていた。下町でも明治通りを兵隊さんが乗った大きなトラックや多くの車があわただしく走ってるのを見て何か起こった事は察知できた』(2017年2月25日)

 『広島に新型爆弾が落ちて物凄い数の死者が出たと聞いたのは数日後でそれも噂話程度に耳に入ってくる程度。とんでもない事態が起こったと知るのはかなり後だった』(2017年8月6日)

 『8月15日朝上野から常磐線で水戸に向い昼過ぎに着いた。軍隊慰問なのに出迎えがいない。おかしいと言いながら営舎に行ったら中は大混乱。日本は降参したんだと。何もしないでとんぼ返り。深夜に帰宅。戦争が終わったという安堵感。だが心の片隅には明日からどうやって暮らしていこうかという悩みが』(2018年8月15日)

 2・26事件(1936年)と言えば、多くの人にとっては歴史の教科書やテレビのドキュメンタリー番組の中の出来事であるだけに、当時のことをその場にいた市井の人の視線から語るというのは、非常に貴重な歴史的資料でもある。こんな“芸当”ができるのは、桂子師匠しかいないのではないだろうか。

仲睦まじい夫婦間のやり取りも綴られるチャーミングな側面も

  • 世間の話題からご自身の健康のことまで師匠流の見方がある独特の140文字

    世間の話題からご自身の健康のことまで師匠流の見方がある独特の140文字

 桂子師匠が“生き字引”的なツイートをはじめたのは、日々のことを紙に綴っていた桂子師匠を見た夫、兼マネージャーでもある成田常也氏に薦められたことがきっかけ。2010年8月からほぼ毎日、びっしりと140字書かれたツイートが投稿されているが、時には夫婦間のほほえましいエピソードや、桂子師匠の“かわいらしさ”が伝わってくるツイートもある。

 ご主人がお土産に買ってきた「あずきアイス」を頬張っているシーンでは、『かなりの時間を使って食べ終えると相当充実した気分になる。なにせ百円で味わえる楽しみが良い』とツイートするなど、桂子師匠のご満悦した様子がうかがえる。また、夫婦で外出しているシーンでは、『二人で手をつないで歩いていると仲のおよろしい事でと冷やかされたが最近は転倒防止用生活維持必要行為』とツイートし、桂子師匠自身の体の不自由さをもおもしろおかしくネタにすることで、読んでいる側をどこかホッコリさせてくれるのだ。

文章から感じられるフットワークの軽さ!そこにあるのは「粋」

 さらにツイッターからは、桂子師匠ならではの“粋”も伝わってくる。夜の銀座街についてつぶやいた際は、事故防止用に敷かれているキラキラ光るアスファルトを題材に挙げ、『演出された街を創り出したのは流石』としながらも、『銀座通りを外れた途端に暗くなるあの自然な街通りも捨てがたい』と“粋”を重んじた締めが小気味よいと同時に、桂子師匠の軽やかなフットワークも感じさせてくれる。

 また、海外スポーツ中継もお気に入りのようで、テニスのウィンブルドンの中継を見て、『主審や関係する皆さんの制服がラルフローレンでカッコいい』と服装についても見逃さない。自身の身だしなみに関しても『年をとってもきれいにしていたいのが女の本性』と語っており、95歳を迎えてなお女性らしさに気を遣い、また噺家として第一線に立ち続けようという気概が、桂子師匠をチャーミングに見せているのかもしれない。

 実際、“年齢”をネタにしたツイートでも、『この処私の周りで「アラ百」という言葉がよく聞こえてくる。アラフォーは知っているがアラ百とは何かというと私みたいな百歳に近い老人を指しているようで長寿国になったと感心するが私も含まれるとは光栄というかあきれているというか。でもこれは何と読んだらいいのかね。アラヒャクでいいのかな』(2018年5月23日)とユーモアたっぷりにつぶやいており、ひょっとしたら、こうしたいい意味で“落とす”スタイルこそが、何かと炎上しがちなツイッターの実は健全な使い方なのではないかと思えてくる。

 今年の9月12日には、満96歳を迎える内海桂子師匠。これからもずっとずっとわたしたちに「桂子師匠の日常」をつぶやいてほしいし、今後も進むであろう高齢化社会の“生きしるべ”となっていただきたいものである。

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