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ベストアルバム55万枚超え、人気上昇中のback numberが抱える歌詞への葛藤
今まで以上の覚悟を持って臨まないとダメだな
清水依与吏 本当にいろんな意味で磨かれた1年でした。その中でもやっぱりアリーナツアーは大きかったですね。今まで以上の覚悟を持って臨まないとダメだなと思いました。でも、そのおかげで今はフラットな状態でいられるので、ありがたいなと思っています。
栗原寿 大変さもありましたけど、その経験を今年後半のレコーディングに生かせました。ツアーで得たものが体の中に残っていて、意識しなくても音に出せるようになったんですよね。
小島和也 だから、3人でスタジオに入るのが今すごく楽しいんです。ツアーでは緊張していたので、今はゆっくり音楽をやれている気がします。
今まで以上に誰かの人生に関わることだと考えました
清水依与吏 実話を元にしたお話なので、今まで以上に誰かの人生に関わることだというのは最初に考えました。いろんな意味に受け取れる、曖昧さのある曲だとダメだなと思って。映画も、ものすごく強い意志の塊のような作品なので、その隣に立つ音楽として、これは何かきちんと言い切らなきゃいけないんじゃないかと思ったんです。最初に「幸せとは」という言葉が出てきたんですけど、実は僕は、そうやって言い切るのはあまり好みじゃないんですよ。そういうことは、本当に何かを悟ってる人がやるべきだと思うので。でも、「星が降る夜と」という言葉が続いたときに、きちんとその先を言い表せるならいいかなと思ったんですよね。間違いを恐れずに、「自分の今のところの答えはこれです」という曲にしないといけないと思いました。
――すべての人にとっての「幸せとは」ではなく、今の自分にとっての答えを強く描いた歌詞ですけど、なおさらリアルな感情として突き刺さりました。
清水依与吏 この歌の主人公は、全力で自分の話をしているんです(笑)。説教くさくなるのは嫌だったんですけど、この映画の隣に立つ歌としてはそのくらいの力を持っていなきゃいけなかった。なので書いた後から、詞の中に「清水依与吏が書いた詞だ」という証を探したし、「清水依与吏印」のための微調整をたくさんしたんです。この曲はメッセージソングとは違って、自分の想いを言っているだけ。どうしても説教臭くしたくなかったからこそ、「なるべく届かないでくれ!」っていう部分があったのかもしれない。この感覚は初めてでした。
プロデューサーの小林武史さんが、キラキラ成分を入れてくれる
清水依与吏 僕ら3人の中では、「ちょっとずれていてもいいから、インディーズのときの自分たちのような感覚で音を出そう」と話していて。曲で言いたいことは明確だけど、整頓されすぎちゃうとものすごく美しい歌になってしまうので、それは避けたかったんです。だからギターも、グワン、ヴォンってすごい音で録ってるんですよ(笑)。「これ大丈夫か!?」とも思ったけれど、二人と合わせるとばっちりハマる。3人のオケとしては、現代の流行りと真逆の音をしてるんです。
――ストリングスを外すと、かなりゴワゴワしていますよね(笑)。
清水依与吏 プロデューサーの小林武史さんが、キラキラ成分を入れてくれるんです。毎回そうなんですが、back numberの音って裸にするとけっこう無骨。無骨な男性がパンダの着ぐるみを着て、汗だくでやってます、みたいな感じなんですよね(笑)。今回もプロデューサーがいい服を着せてくれるから、僕らはすごく3ピースっぽい演奏をできました。
小島和也 最初にスタジオ入ったときは、何も飾り付けのない状態だから、「これ、バラードなのかな?」と思うくらいの楽曲でした。
清水依与吏 そのときは歌詞もできてなかったし、イメージだけ伝えながら「本当にバラードになるのか?」と俺自身も思う、みたいな(笑)。今までもわりとそうですが、サウンドに関しては最後まで、歌入れが終わるまでどうなるかわからないんです。
――緻密に計算した上で作るというより、わりとセッションに近い作り方ということ?
清水依与吏 そうですね。だから演奏を決めたあとに、歌詞を変えることもあります。デモを録ったあとに、別の部分で弾いていたベースの音を勝手にまた別の部分にくっつけて、小島本人が「えぇっ、俺そんなことやったぁ!?」みたいなになったり(笑)。たまに人間が弾けないフレーズになったりもするんですけど、律儀に再現してくれるんです。
栗原寿 本当に予想だにしない編曲をしてきたりするんです。さっきまでノリノリで「いいじゃん!」って言っていたのに、全然違うものを持たされる…。あんなに一生懸命に詰めた(音の)おかずが、一切なくなってたりするんですよ。
清水依与吏 「ドラムなくなってるじゃないッスかぁ!」みたいな(笑)。
栗原寿 でも、フレーズひとつにしても、自分では思いつかないことばかりなので面白いです。一瞬「マジか!」って思うことはありますけど(笑)。
清水依与吏 でも逆もあるんです。俺がすごく考えてきたフレーズを、自分で平気で無くしてしまうことも彼らは知っているから。一時期そういったことが行き過ぎたので、もう少しベースはベースの意地、ドラムはドラムの意地を出すようにしようという話をしたんです。でも、そういうのが今はすごく面白くて。きっと3人とも、自分の存在をどう出すかより、楽曲としてどうかという視点で考えることができているんだと思います。