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松田龍平インタビュー『関係性が父と息子から男同士になっていく』

本気か冗談なのかわからない

――つくづく永吉って、つかみどころのないキャラクターですね。
松田「俺は俺なりにいろいろ考えてみたんだけど、なんだかんだ言ってお前が正しいよ」っていうセリフが2回あるんですけど、(最初に脚本を読んだとき)そのセリフがけっこう引っかかったんです。永吉っぽいなって。本気で言っているのか、冗談なのかわからないところがあったので、沖田さんに聞いたら「本気で言ってます」って言うから、“本気なんだ!”と思って。トボけ方がすごいじゃないですか。みんなが真剣な話をしているのに「結局お前が正しいよ」って(笑)。でも、あの感じが永吉なんだと思いましたね。

――泰然としているようで、中学生の野呂くんの言葉に感銘を受けたりして!?
松田あんな少し考えればわかることに、すごく影響を受けてしまう永吉は、やっぱりちょっとズレているというか(笑)。一見、永吉って頼もしそうに見えるじゃないですか。でも実はああいうキャラ(笑)。中学生の言葉にもすぐ影響を受けてしまう。バンドのメンバーに手紙を書くシーンも、言葉数があまり多くない永吉の本当の気持ちが読み取れるなあと思いました。脚本にはなかったんですけど、撮影の途中で「手紙を書くシーンを入れたい」って足されて。あれだけデスメタルで「死に方いろいろ」とか歌っていた永吉が、父のそばで気づいたことをメンバーにうれしく報告する、永吉の愛らしさみたいなところです(笑)。完成した映画を観たら、わりと永吉がんばっているなって感じたから、ちょっと嬉しかったですね。

――野呂くんと対峙したときの、永吉と治それぞれの表情に、親子ってやっぱり似ているんだなと感じました。ひょうひょうとユーモラスな永吉と治、由佳と春子、そばにいる時間が募っていくうちに、家族の顔がどんどん似ていくというのか。
松田そうですね。初めに脚本を読んだときは全然想像できなかったけど、家族みんなが集まったとき、不思議な感覚になりました。

その役をやることによって自分がどんな気持ちになるか?

――本作をはじめ、松田さんが作品の参加を考えるとき、世代を超えて誰もが楽しめる作品に惹かれるところはありますか?
松田その役をやることによって、自分がどんな気持ちになるか? という欲の方が強いのかもしれない。例えば俺がいま前を向いて生きていきたいから、そういう役をやりたいということではなく、その役をやることでどんな影響を受けるのか、自分のなかでどんなことが起きるのか? という興味の方が強いというのか。

――そういう意味では、本作のどんなところに魅かれたのでしょう?
松田パワフルな役だから、俺自身、永吉を演じて元気をもらいましたね。自信のある人じゃないですか(笑)。永吉っていいなあと純粋に思いました。

――一瞬いそうに思うけど、本当は絶対にいない、松田さん独特のリアリズムの枠に捕らわれない、自由な人物像がいきいきと映し出されています。沖田映画らしい作品の世界観については、どんな印象を抱かれましたか?
松田映画はフィクションなので、どこかやっぱり夢を見たいなって俺も思うし。映画のなかで、心地のいい夢を体験したいなって思いは、漠然とあります。この映画も、父親の最期といい、病院のなかの結婚式もノスタルジックだし、外の雨も妙な雰囲気で……。みんなの記憶に残っている思い出と、実際に起こったことが違っていたりすることってあるじゃないですか? そういう感覚を映画にしていくって、すごく素敵だなって思います。どこかファンタジーというか……そういうのが好きですね。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

モヒカン故郷に帰る

 売れないデスメタルバンドのボーカル永吉(松田龍平)は、恋人・由佳(前田敦子)が妊娠したことをきっかけに、故郷・戸鼻島へ結婚報告がてら7年ぶりに帰ることになる。そこにはいつのまにか弟(千葉雄大)も帰郷していて、久々の一家団らん……と思ったら、親父(柄本明)のガン発覚。俺の親父、もうすぐ死んじゃう!?

監督・脚本:沖田修一
出演:松田龍平 柄本明 前田敦子 もたいまさこ 千葉雄大
広島先行公開中、4月9日(土)全国拡大公開
(C)2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会 
【公式サイト】(外部サイト)

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