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『紅白歌合戦』Pが明かす、黒柳徹子の司会起用の理由

国民的な“何か”がなかったからこそ「ザッツ、紅白!」というキーワードが必要

――また、ディズニーとのコラボや、スターウォーズと嵐のみなさんとの共演も発表されましたが、こちらはどのような内容に?
柴崎 どちらも有名キャラクターが、ステージにやって来てくれます。ディズニーのキャラクターが紅白司会のおふたりやV6・Perfumeのみなさんと一緒に歌って踊るのは、見応えがあると思います。また、嵐のみなさんとスター・ウォーズの共演は、見てのお楽しみです(笑)。

――あと、小林幸子さんの『紅白』復帰も話題ですが。
柴崎 テーマが「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」ですから、『紅白』の風物詩といえば小林さんとおっしゃる方も非常に多いですよね。ある種の定番感や安心感がありながら、久々に帰って来ていったいどう進化していのるかというところでは、私たちも楽しみにしています。最近の彼女はインターネットのフィールドでの活躍がめざましく、「千本桜」という選曲や演出は、そういうところを加味したものになると思います。

――あと近年、メドレーを歌う方が多い気がしますが、そこにはどういった意図があるのでしょうか。
柴崎 生放送では1組あたりの持ち時間が限られますので、そのなかでできるだけそのアーティストのすべてを見せきってほしいと思っていますし、出場者も見せきりたいと思って臨んでくれているはずです。そういうときにメドレーはフィットする手法だと思います。たとえば今年のテーマに絡めた形で「ザッツAKB48」とか「ザッツEXILE」といったステージを見せたいと、アーティストのみなさんとはお話をさせていただきました。大晦日の夜に、1年の集大成を作りたいと私たちは臨んでいますが、アーティストのみなさんも同じように考えてくださったのだと思います。近藤真彦さんが久しぶりに出場して、「ギンギラギンにさりげなく」を歌うというのも、これぞまさしく「ザッツ近藤真彦」というところで選曲させていただきました。

――ここ数年、『妖怪ウォッチ』や『アナ雪』、『あまちゃん』といった、音楽を巻き込んだ国民的ムーヴメントがあり、『紅白』でもそれらを採り入れていましたが、2015年はそういった国民的な何かがなかったように思います。そういう点では、出演アーティストの選定は難しかったのでは?
柴崎 そうですね。だからこそ「ザッツ、紅白!」というキーワードが必要でした。『紅白』らしいパフォーマンス、キャスティングや演出、ストーリーを出していくしかないと考えました。そこで実績に加味して、私たちがやろうとしている演出にフィットすると言うか、それを体現できる方々に出ていただきたいと思いました。

あらゆる世代に訴求するテレビ番組をどう創るのか、そう簡単に正解が見つからない

――個々の出場者についても、少しお伺いしたいと思います。BUMP OF CHICKENの初登場も話題となっていますが。
柴崎 特に30代の世代にとってはカリスマ的な存在で、本当に素晴らしいバンドなので、出場して欲しいと思っていました。ちょうど彼らは来年が結成20周年ということなので、活動の節目で『紅白』というものに目を向けてもらえたのかなと思っています。あと私はレベッカの世代なのでレベッカのみなさんも楽しみですね。会見のときNOKKOさんがおっしゃっていた「青春時代を共有した人たちと楽しみたい」という言葉には、心打たれるものがありました。大人の女性として素敵な生き方をしていらっしゃるので、そういう姿を若い人たちに見てもらって、こんな素晴らしい伝説の人たちがいたんだ、と知ってもらえたらと思います。

――三山ひろしさん、山内惠介さんという演歌の若手2組については、どんなお考えでしょうか。
柴崎 久々に登場した演歌の若いパワーです。それを期待してくださっているファンの方も多いですし、私たちも大いに期待しています。実際に演歌を楽しみにしてくださっているNHKの視聴者は、たくさんいます。それは『歌謡コンサート』という番組を制作していて、実感していることです。そういう方々の期待にもしっかり応えたいと思っています。

――星野源さんと大原櫻子さんといった、俳優としても活躍されている方の初出場も目立っていますが。
柴崎 星野さんは、サブカル的なフィールドから一気にお茶の間へと、グッと躍り出てきた存在だと実感しています。とてもめざましい活躍をされていますよね。大原さんも実績や活躍、注目度も申し分ありません。大原さんはある種若い世代の新しいヒロインだと思っています。

――誰に白羽の矢を立てるかは、常日頃からチェックしているわけですね。
柴崎 1年中考えています。『紅白』の制作陣としては、年に一度の大晦日の夜に、あらゆる世代の視聴者のみなさんがそれぞれどういう曲を聴きたくて、どういうアーティストやシーンが見たいのかということを考えます。私たちは普段から『SONGS』や『MUSIC JAPAN』などの制作で、1年中音楽シーンの現場におりますので、常にアンテナを張っています。

――そういうアンテナを張る中で感じた、今年の音楽シーンはどのように映りましたか?
柴崎 今年に始まったことではありませんが、すごく細分化が進んでいると思いました。特に若い世代は、ソフトを買うというよりは共有するといった音楽の楽しみ方が主流になっていて。世代ごとに、それぞれで音楽の楽しみ方が全く異なっています。一方では、フェスやライブの隆盛も感じました。刻一刻と変化している音楽シーンの中で、年に1回という特別な音楽番組、あらゆる世代に訴求するテレビ番組をどう創るのか? そう簡単に正解が見つかるとは思っていませんが、その答えに極限まで迫りたいと思って『紅白』をやっています。

(文:榑林史章)
【プロフィール】
柴崎哲也(しばざき てつや)
NHK制作局 第2制作センター エンターテインメント番組部 チーフ・プロデューサー
1968年生まれ。
1992年、NHK入局。
エンターテインメント番組部、大阪放送局制作部などを経て、『ポップジャム』や『ミュージック・ポートレイト』、『夢音楽館』などの番組を担当。現在は、『SONGS』の制作に携わる。

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