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Mr.Children、前代未聞の全国ツアー『REFLECTION』をレポート☆既存のスタイルにとらわれない新たな音楽の届け方
発売前のアルバムの収録曲を披露…前代未聞のツアー
「レコーディングを2年間くらい、ずっとやっててね。曲ができるたびに“早く聴いてほしい”と思って、やっとこの日が来たよ!」と嬉しそうに話す桜井。「新しいアルバムの曲をお届けしたいと思ってます。聴いたことのないメロディもあるし、“歌詞、何て言ってるかわかんない”ということもあるかもしれない。“つまんない〜”ってならないように万全の準備をしてきました。ときには聴覚を、ときには視覚を、ときには嗅覚を研ぎ澄ませて、僕らのオッサンくささではなくて、人間くささを感じてもらえたらと思っています」というMCのあとは4曲続けて『REFLECTION』の楽曲が演奏された。
穏やかな旋律を持つミディアムチューン「Melody」、「ずっと何かと戦ってきた人、そして、いまも戦い続けてる人にこの歌を贈ります」という桜井のコメントも印象的だったロックナンバー「FIGHT CLUB」、オルタナカントリー的な要素を反映させた「斜陽」、フォーキーな手触りの「I Can Make It」。それぞれにテイストは異なるが、アンサンブルの中心になっているのはメンバー4人の生々しいバンドサウンドだ。2年以上のアルバム制作のなかで彼らは、自らの音とまっすぐに向き合い、新たなミスチル・サウンドを掴み取ったのかもしれない。
ミスチル・ナンバーが持つ普遍的なパワー
続いては2008年発売のシングル「HANABI」。直前に桜井が「ペットショップの人に“水は常に酸素を取り込んで動かしていかないと、死んでしまう”という話を聞いたことがあります。人の心もいつも動かしていないと生き生きしていられないと思い、この曲が出来ました」というエピソードを話し、イントロが響いた瞬間に「おぉ〜!」「これか!」という声が上がる。サビの<もう一回 もう一回>はもちろん、観客全員が人差し指を掲げて合唱。それはまさに、ミスチル・ナンバーの普遍的なパワーを示すシーンだった。
既存の形式にとらわれない新たなスタイルを提案
アンコールではファンへの感謝の気持ちを込めた「Everything(It’s you)」(1997年のシングル)、イントロが始まった瞬間に大きな歓声が上がった「エソラ」、カラフルなポップチューン「Marshmallow days」で華やかなエンターテインメント空間を演出。そして最後は「未完」。エッジ―でエモーショナルなサウンドと“常識という壁を越え、自由に進んでいこう”というメッセージが融合したこの曲はまちがいなく、アルバム『REFLECTION』を象徴するナンバーのひとつだ。
6月4日に発売されるアルバム『REFLECTION』は全23曲収録の{naked}、厳選された14曲を収めた{Drip}の2形態。発売前に大規模なツアーで新曲をたっぷり披露したことを含め、そこにはメンバーの“既存のリリース形態、プロモーション、ツアーの形式に縛られず、いまの時代に合ったスタイルを提案したい”という意思が反映されているのだろう。彼らは今回の作品で、今の音楽業界の現状に一石を投じることができるか? モチベーションの高さ、デビューから20数年が経ち、誰もが認めるスーパーバンドになった現在も、常に向上心を持ち続ける。その真摯なスタンスこそが、いまのミスチルのパワーなのだと思う。
(文/森朋之,写真/石渡憲一)