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『こども六法』異例のヒット 児童向け法律書がなぜ必要か著者に聞く

著者自身もいじめ被害者であり加害者にもなった その経験が『こども六法』に

 2018年、山崎氏の友人でもある小川凛一氏がプロデューサーとして加わり、プロジェクトは再び活性化。砂田智香氏の親しみやすいグラフィックデザインと伊藤ハムスター氏のポップなイラスト、クラウドファンディングでの資金調達などの話題性もプラスされた。

「初期バージョンとの最大の違いは、複数の種類のプロが仕事をしていること。本を作る専門家、プロのイラストレーター、なにより法律の専門家の先生たちによる強力な監修が大きな力になって、現在の形がだんだんとできていきました。実際に子どもたちに読んでもらってフィードバックする子ども監修も含め、修正は最後の最後まで続けました。感覚的には、それこそいったん完成した本を5回くらい全面改稿したような感じ(苦笑)。ですが、それだけ良い本に近づいたと思っています」(山崎氏)

 山崎氏は小学校時代に、骨折するほどの肉体的な被害を伴ういじめを経験しており、それが教育問題に取り組む原動力にもなった。だが中学時代にはいじめの加害者の側になってしまったことがあるのだという。

「部活でのトラブルです。意見の行き違いで揉めた後輩を部内の会議で辞めさせる、ということがあり、結果的に大人数で1人を追い込んでしまった。部長であった僕がその首謀者という位置づけになりました。今にして思えば、当時はむしろ自分たちが被害を受けていると思いこんでいた。いじめている側がその事実に気づいてやめるのは難しいと実感しました。そのトラブルの場合は、先生の介入でいじめがストップしました。その一点において良かったと思いますし、最終的にはその後輩と仲直りもできた。でも、被害者が先生に親告したからこそ事態が発覚して止まっただけ。多くの刑法・民法上で重視される<親告罪>というものを身をもって経験することになりました」(山崎氏)

実際の教育現場にも反響が、学校への法介入に対する考え方に変化も

 弘文堂では『甘えの構造』(1971年)以来のヒット作『こども六法』は、実際の教育現場を含め、多くの反響を呼んでいる。

「教育現場の反応は、意外にも好評です。学校に法律という概念を導入する、ということ自体に反発するような風土というのは、もっと根強いのかもしれないと事前には考えていました。ですが、そうした旧来の文化も少しずつ変化してきているようで、全クラスに置きました、といった報告なども思った以上にSNSなどで確認しています。教師の方からも、保護者の方からも、全体としては今のところプラスの評価がもらえているのかなと思っています」(山崎氏)

「購入いただいた読者の方が、ご自分の母校の図書館などに寄贈するといった広がりもあるようです。これからの世の中を力強く生き抜いていくためには、法律へのリテラシーも非常に大切だ、という流れが背景にあるのだと思います」(外山氏)

 今回の『こども六法』では2020年度の民法改正の内容を反映している。2022年度に予定されるさらなる同法の改定(成年年齢の引き下げや婚姻開始年齢の統一など)にはどのように対応するのだろうか。

「もちろん、その際には新版として更新すべきは更新しようと考えています。『こども六法』の文脈で考えるなら、たとえば労働法や著作権法などへの理解を養うような本など、まだまだやるべきことは残っているとも思います。ただ、この本が話題になったおかげで、現在いろいろな新しい本の企画なども打診されるようになってはいますが、あくまでも僕は法律の専門家ではないので、ご期待に添えないことも多い。ですが、世の中に必要で、僕が関わって作りたい、そう思えるような企画をまた考えていきたいとも思っています」(山崎氏)

(文/及川望)

提供元: コンフィデンス

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