• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • 芸能
  • 月9『朝顔』P、震災を描く裏にあった覚悟 ホームドラマ要素の融合は「交流」が決め手に

月9『朝顔』P、震災を描く裏にあった覚悟 ホームドラマ要素の融合は「交流」が決め手に

有識者と視聴者が共に支持する“質の高いドラマ”を表彰する『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』(週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』主催)が、19年7月期放送の主なドラマ33作品を対象に実施した第17回の結果を発表した。2作に贈られる「優秀作品賞」の1つには、“命を見つめる”物語であるフジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』が選出。また、同作で主演を務めた上野樹里が「主演女優賞」に輝き、同作が2部門を制した。

現地での取材を経て、東日本大震災に向き合う使命感が芽生えた

 本作は、法医学者の主人公・万木朝顔(上野樹里)が、父親で刑事の平(時任三郎)と共に遺体の“生きた証”を探し、遺された人々の心を救っていくヒューマンドラマ。なお、この物語には、朝顔の母親・里子(石田ひかり)が東日本大震災で被災し、遺体も見つかっていない状況という背景があり、各話でさまざまな事件が起こる一方で、朝顔と平が里子を失った事実を少しずつ受け止め、時間をかけて哀しみを乗り越えていく様子が全編を通して丁寧に描かれた。
 プロデュースを手がけたのは、初の連ドラ単独プロデュースとなった金城綾香氏。主演の上野とは小児外科を舞台にした『グッド・ドクター』(18年)で現場を共にしており、彼女の真摯な役作りを目の当たりにした際、いつか上野と一緒に「命を見つめる本作を作ってみたい」と感じたという。そんな思いを抱くなかで出合ったのが、2006年〜13年にかけて発表された同名原作漫画だ。原作では阪神大震災で母を亡くしたという設定になっているが、今回ドラマ化するにあたり設定を変更した。未だ哀しみの癒えない東日本大震災を扱うことについては、相当な覚悟と配慮が求められるはずだが、ためらいはなかったのだろうか? 金城プロデューサーはこう語る。

「昨年の年末あたりから関連書を読んだり、法医学の先生方にお話を伺っているなかで恥ずかしながら初めて知ったのは、東日本大震災が発生した際、多くの先生方が身元確認のために東北に行っていらっしゃったということ。その話を受けて今年の2月、私とチーフ演出の平野(眞)、脚本家の根本(ノンジ)さんとで、毎年この時期に出向いていらっしゃる研究者の先生や法医の先生方と共に、東北に行かせていただきました。そこで、ご遺族の方々と交流をさせていただくなかで、皆さんが今もなお、哀しみや葛藤を抱えながら生活されていらっしゃるということを体感したんです。今もなお苦しまれている方をテーマにドラマを作ることが誰かを傷つけてしまうのではないか、正直不安でした。ですが、実際に被災地を訪れた時に感じた胸が締め付けられるような想いをなんとかドラマにしたい、この想いを伝えるべきではないか、と突き動かされるものがあったんです」(金城氏)

母を亡くした女性が、母になるということ

 この物語は、1話〜5話を第1章、6話〜11話を第2章として展開されていくが、主人公の朝顔は第1章と第2章とでライフステージが変化する。1〜5話では未婚の新米法医学者だが、そこから舞台は5年後へ。6話以降は、恋人だった桑原真也(風間俊介)と結婚して妻となり、また4歳の娘・つぐみの母親となった朝顔が、家事をこなしながら法医学者としても成長した様子が描かれる。この表現手法も、東日本大震災に真摯に向き合った結果だ。

「東北で母と一緒に被災した朝顔が、再び東北に足を運べるようになるには8年という時間を要しました。その時間の経過を3ヶ月という放送期間の中で表現することは、非常に難しかったですが、同時にこだわった点でもあります。そこがしっかり描けていないと、今もずっと苦しんでいる方々に失礼だからです。6話から5年後の“未来”を描くことで、今悩んでいらっしゃる方々に対して『時間が経てば何かが変わるかもしれない』というメッセージを添えたいと思いました。そして母を亡くした朝顔が、母になる姿を描きたかったんです」(金城氏)
 決して派手さはないものの、父娘らの心の機微が丁寧に描かれたストーリーが支持され、視聴率は全話で平均2ケタ、最高14.4%(第6話)を記録(ビデオリサーチ調べ・関東地区)した。また、『コンフィデンス』誌のドラマ満足度調査「オリコン ドラマバリュー」では、初回の59Ptから堅調に推移(100Pt満点)。最終11話では自己最高タイとなる90Ptをマークし、有終の美を飾った。

「撮影前の交流」が、ホームドラマの要素を盛り込むきっかけに

 震災を扱ったことに加え本作が注目されたのは、法医学ドラマでありながらホームドラマでもあったという点だ。それは父娘の日常を描くことで、哀しみを乗り越えていく様子を印象的に見せるためだが、そのバランス感は非常に難しいはず。このホームドラマの要素を盛り込む挑戦は、「撮影前からスタッフ・キャストとしっかりコンセンサスが取れていたからこそできたものだと思います」と金城氏は話す。

「配役に関しては、ご一緒したかった上野さんが決まってからは、上野さん(朝顔)の父親であってほしい人、旦那さんであってほしい人、上司であってほしい人という感覚で決定していきました。皆さん『基本のき』を大事にしてくださり、また『今』を全力で楽しんでいらっしゃる方々ばかりだったので、非常に良い空気感のなかで撮影していくことができました。また、今回はクランクインする前にしっかりとリハーサルを行ってから撮影することができたので、それも良かったです。私たちスタッフは現場で家族のシーンを見ながら、『(朝顔一家)が1時間すき焼きを食べているだけでも観ていられるね』なんていう会話も(笑)。時任さんは放送を観たご家族から、『普段のお父さんまんまじゃん』なんて言われたそうです(笑)。全体のバランス感については、撮影をしながらベストを探っていきました」(金城氏)

女性ならではの感覚を大切に、面白い作品を作っていきたい

 近年、各局では女性ドラマプロデューサーの活躍が顕著だが、フジテレビにおいて金城氏は唯一の女性プロデューサーだ。女性プロデューサーの活躍については、どのように見ているのだろうか。

「あまり男女の差を感じることはあまりありませんが、ドラマの視聴者は女性が圧倒的に多いですから、そう考えると女性が作るドラマが支持される面もあるかもしれませんね。女性はライフステージによって、男性以上にいろいろな変化がありますよね。キラキラしていた20代が終わってしまうとか、体力的な衰えとか。女性ならではの視点が、物語を面白くする要素になることもあるかもしれません。ですから、私も日々を大切に生活したいと思います。自分の感覚に素直になっていきながら、その時々で素敵なキャスト、スタッフと一緒に面白い作品を作っていきたいです」(金城氏)

 今回、始めて連ドラの単独プロデュースを手がけ、「若手でもみなさんの力を借りればちゃんと放送できる」と金城氏。「大変ありがたいなと思いながらも、ものすごく負けず嫌いなので『最優秀作品賞』を狙いたかったなという気持ちも(笑)。今後も他局さんと切磋琢磨しながら、頑張っていきたい」という強気も見せる若き女性プロデューサーの活躍に今後も期待したい。

提供元: コンフィデンス

あなたにおすすめの記事

 を検索