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アニメ視聴権をブロックチェーントークン化 クリエイターの新たな選択肢へ

syo5監督の『微睡みのヴェヴァラ』(C)SYO5 - VEVARA IN YOUR DREAM

syo5監督の『微睡みのヴェヴァラ』(C)SYO5 - VEVARA IN YOUR DREAM

 オリジナル短編アニメ映画の視聴権などをブロックチェーントークン化し、限定数販売するサービスがスタートした。シンガポール拠点のスタートアップBlockPunkと共同で今回の試みを展開するのが、独立系アニメ企画プロデュース会社ARCH。代表の平澤直氏に、その目的や今後のイメージなどを聞いた。

クリエイターとプラットフォームの今後の関係性において大きな意味

 7月に米ロサンゼルス『Anime Expo 2019』のカンファレンス会場で上映された『微睡みのヴェヴァラ』。この作品は、BlockPunkの運営するプラットフォーム上で販売され、そこでは動画の視聴権がブロックチェーン上に記録されるトークン化されることがアナウンスされた。500トークン限定、15USドル(または等価なイーサリアム)での販売。本編映像のストリーミング視聴権に加え、オーディオコメンタリーやアートワーク素材などの特典へのアクセス権も含まれる。

「パブリッシャーとして、クリエイターとプラットフォームをつないだ形です。特典を付与するなど付加価値を整え、実装したという意味では、商材としてのパッケージングにあたる部分も手がけました。買い切り型の動画配信・ESTに近いイメージですが、視聴者がより直接的にクリエイターに対価を還元でき、スピーディーで透明性のある取引が記録されていくことは、今後の配信プラットフォームと個々のクリエイターとの関係性を考える上で、大きな意味があることだと考えています。単純に、コンテンツ流通の形態が新しく増えることとしても、クリエイターにとって新たな選択肢が加わり、生態系が豊かになるということですから」

 今回のプロジェクトは、『微睡みのヴェヴァラ』監督のsyo5(しょうご)氏と平澤氏の出会いからスタートしている。そこに、平澤氏とBlockPunkとのつながりが重なり合った。

「syo5氏は、明らかに能力は非常に高いけれど、まだ世間一般には知られていない才能です。一方、BlockPunkのCEOジュリアン・ライハンは、Netflixで全世界のアニメ部門と日本のコンテンツ統括などを手がけていた人物で、以前からの知人。彼から、ブロックチェーンを活用したサービスにふさわしい良い作品はないか、と問い合わせがあり、マッチングしたのが今回の経緯です。プラットフォーマーとしてのBlockPunkには、既存サービスとは異なるユーザー体験やデベロッパー体験を提供できる大きな可能性を感じています。事実上、改ざんのできないデジタルコンテンツを簡単に販売し、ファン同士での二次売買の際にもクリエイターに還元がされる仕組みですから、今回のような動画へのアクセス権だけでなく、より多様な活用法が生まれてくると思います」

コミュニティ要素のある会員権ブロックチェーン化も視野

  • 平澤直氏/ARCH 代表取締役 プロデューサー

    平澤直氏/ARCH 代表取締役 プロデューサー

 ブロックチェーン=独自コインや仮想通貨エコシステムではなく、むしろ分散台帳技術という面にフォーカスしているのがBlockPunkの特徴。『微睡みのヴェヴァラ』は、視聴権の根拠となるトークンを500個限定で販売中で、トークンが完売した場合、個人が購入したトークンをBlockPunk上で別の個人と売買することが可能になる。取引ごとに、プラットフォーム側、クリエイター側へと一定の金額が還元され、記録され続けていくことになる。BlockPunkには優秀な映像作品の初トークン化、syo5氏には新たなファン層の開拓と認知拡大という実績がもたらされるが、アーチにとってのメリットとはどのあたりにあるのか。

「前提には、アニメ業界のより多くのクリエイターや才能を支える宿木でありたいという思いがあり、そのために、まずはリスクをとって先鞭をつけることが大事だと常々考えています。試行錯誤のなかで成功例が生まれていけば、コンテンツの新しい届け方が定着していく。クリエイターにとっての新たなエコシステムの構築を目指しています。日本のアニメは今、20年に一度の産業としての変革期を迎えています。マネタイズ方法、制作のワークフロー、ユーザーへの届け方。すべてが変化する過渡期で、オフライン興行とオンライン配信のバランスという収益構造の変革の一方で、デジタル化も制作環境の効率化という領域まで進んできています。どういう形で中間素材を入出力してリテイクを戻すか、より柔軟にプロジェクトに合わせて開発環境がデザインされるようになってきている。個々のクリエイターと同じくらいエンジニアが重要になりつつあり、数年後にはCTO的な存在がアニメ制作には不可欠になっているかもしれません」

 デジタル化によって、制作現場での変化が進むのと同時に、完成した作品や、作品の成立過程でのユーザーとのタッチポイントの多様性もより豊かに変化してきている。クラウドファンディングやオンラインサロン経由など、資金調達のルートも増えつつあり、異業種や海外資本など、出資者もまた多様化。そうしたなか、ブロックチェーン技術には看過できない大きな可能性を感じるという。

「今回の『微睡みのヴェヴァラ』では、いわば単品売りという形式でしたが、たとえば月額課金でクリエイターや作品に対してサポートができる、会員権のような仕組みもブロックチェーンと相性が良いかもしれません。会員ユーザーが毎月何かのサービスが享受できるような、偽造できない限定の会員権。そこには単純なESTにはない、コミュニティ要素が生まれてくるはずで、それはアニメファンの気質とも親和性が高いように思います。また、アニメ制作の現場でのワークフローにブロックチェーン技術が応用できる領域もありそうで、今後の動向を自分も注目しています」
(文/及川望)

提供元: コンフィデンス

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