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視聴率は低くてもブレない 『あな番』Pが向き合うSNS時代の能動的な視聴スタイル

『あなたの番です-反撃編-』(C)日本テレビ

『あなたの番です-反撃編-』(C)日本テレビ

 クライマックスに向けて怒涛の展開が続くミステリードラマ『あなたの番です-反撃編-』(日テレ系)。ネットでは真犯人を推理する考察が飛び交うなど、テレビを超えた盛り上がりを巻き起こしている。SNS時代の能動的な視聴スタイルで楽しまれる本作の鈴間広枝プロデューサーに、その取り組みを聞いた。

万人ウケする内容ではない、ブレずに突き進んできた

 田中圭と原田知世が年の差夫婦役でW主演する2期連続ドラマ『あなたの番です』の第2章『〜反撃編』が、クライマックスに向けてさらなる盛り上がりを見せている。1話完結ではない連ドラとしては異例の2クールで放送される本作は、とあるマンションで始まった交換殺人ゲームを起点に、凄惨な事件が次々と起こるノンストップミステリー。第1章のラストでは、主人公の1人である菜奈(原田)が何者かに毒殺されるというショッキングな展開が大きな反響を呼び、放送終了後にはTwitterの世界トレンド1位を獲得した。

 謎が謎を呼ぶ展開にハマる人が続出しており、ネットでは「#あなたの番です考察」でさまざまな推理が飛び交う現象が起きている。4月にスタートした第1章の前半こそ視聴率の苦戦も報じられていたが、第1話より毎話の放送後にはTwitterの日本トレンドの上位に登場しており、「深く刺さる」「語りたくなる」作品であることは当初から証明されていた。

「万人ウケする内容ではないので、世帯視聴率が取れないだろうことは想定済みでした。その上で『中毒性がある作品であることは間違いないから、たとえ数字が取れなくてもブレない』というのが会社としての姿勢でしたので、当初から描いていたプロットからブレずに突き進んできました」

 とは言え、数字を背負うのもプロデューサーの宿命。ネットでの反響に興味を持った新たな視聴者を呼び込むための施策にも注力してきた。

「途中参入していただきやすいように、YouTubeなどで配信する5話分ごとのダイジェスト版の編集にはかなり力を入れています。ここまでの流れをわかりやすく説明するとともに、謎解きのおもしろさもしっかり残す。また『怖いドラマなんでしょ』と苦手意識を持っている方には、意外とくだらないことを全力でやっていることをお伝えできれば、というのもダイジェスト版の目的です」

盛り上がる“深読み”には台本を追記してフォローもする

 袴田吉彦が演じるマンションの住民・久住譲が「袴田吉彦に似ていると言われるのが恥ずかしい。最近はポイントカードって呼ばれたり」と、自身のスキャンダルをネタにした自虐セリフを連発した回も話題を呼んだ。そうした一見、笑い要素と思われた小ネタが後の事件の伏線となっている場合もあり、一瞬も見逃せないと繰り返し視聴する推理ファンも多い。

「ネットの考察には、スタッフやキャストも『こんなにじっくり観ていただいているんだ』と励まされています。鋭い推理もけっこうありますね。なかには深読みしすぎな推理もありますが(苦笑)。ただ、モヤッとした読後感を残すのはミステリーではよくないことなので、盛り上がっている“深読み”については、台本を付け足すなどしてフォローするようにしています」

 ミスリードや謎などの構成といった、もともとの物語のプロットは完成しており、視聴者の声やネットのリアクションによって変わることはないが、視聴者の誤解や誤認を生んでしまっているとわかった点などは、ストーリーを進行させる細かな要素や流れの一部として台本に落とし込まれ、物語の一部となることもあるようだ。それが物語をよりおもしろくし、視聴者を納得させてドラマに引き込んでいる一面もあるのだろう。

“2人のどちらか”が真犯人

 また地上波放送と連動して、Huluでマンションの住民それぞれを主人公とした連続ショートドラマ『扉の向こう』を配信。コアなファンはこちらでも推理のヒントを探っているようだ。

「基本的には、地上波放送を観ていただければ、犯人がわかる構成になっています。ただ、よりヒントに近づきやすくなる要素もショートドラマには盛り込んでいます」

 2期連続放送もさることながら、こだわリ抜いたダイジェスト版や配信ドラマなど、通常の連ドラ以上に制作者たちが汗をかいている本作。その成果は、能動的に推理に参加する視聴者を多く生み出すという形で現れている。そして、急展開の連続で視聴者をさらに引きつける第2章では、AIを研究する大学院生を演じる横浜流星がメインキャストの1人となることで、翔太(田中)の復讐劇にアクセントを加えている。

「もちろん7月期までの全20話ですべてを回収して、モヤモヤを残さない結末を迎えます。最終話の最後の最後まで真犯人が誰かを引っ張りたいのですが、“2人のどちらか”まではその前の放送で進むかもしれません。いかに視聴者を盛り上げて、おもしろく終わらせることができるかに奮闘しています」

 真の黒幕の正体や目的が解明されるのはまだまだ先のこと。ネットの推理合戦もますます白熱していきそうだ。
(文/児玉澄子)

提供元: コンフィデンス

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