『下町ロケット』で嫌味な男を怪演 好青年イメージ覆した“第二の裕次郎”徳重聡の新境地
“第2の石原裕次郎”というコンセプトから、“爽やか好青年”イメージからの脱却に苦戦
放送業界で活躍するジャーナリストの長谷川朋子氏は「デビュー当時はイメージ戦略を打ち出していくことに利点がありましたが、そこからいかに脱却するかが課題にあったと思われます」と、徳重がターニングポイントに差し掛かっていたことを指摘する。その課題と向き合い、“爽やかイケメン”というセールスポイントを脱ぎ捨て、心機一転で臨んだのが『下町ロケット』の軽部真樹男役だ。
見た目の変貌ぶりに「別人」との声も…ギャプを活かしたキャラ作り
こうした一概には悪役とは捉えられない難しい立ち位置の役柄について、「前作では、立川談春さん演じる殿村直弘役が“お金のことばかり考えている元銀行マン”かと思いきや、実は誰よりも熱い男を見せどころとしていた。徳重さん演じる軽部は“ドライで嫌味な男がみせる、実は絶品の強いハート”に期待が高まります。こうしたキャラクターの妙は、制作陣のドラマ作りのこだわりであり、日曜劇場のブランド戦略だと分析しています」と、軽部の存在に前述の長谷川氏も注目する。実際に第1期でも山崎育三郎が演じた真野賢作が、佃社長を裏切ったのちに改心するという流れがあり、ギャプを持った役どころがこれまでも物語のキーになっていただけに、軽部の動向には多くの期待が寄せられている。
イメージの脱却に成功した徳重聡、40歳でブレイクの兆し
スタッフ陣の“キャスティングの妙”も光る
『下町ロケット』をきっかけに、ネットでは「一気にブレイクの時が来ましたね」といった期待の声までも上がっている徳重。前作での山崎育三郎のように、役者としての幅が広がり、今後は好青年役以外のオファーも多くなることが予想される。もちろんこれまでのような好青年を演じても安定した演技が期待できるだろうが、もっと違った悪役やヒール役を観てみたいと思わせてくれる存在感を放つ、軽部という役は徳重の役者人生にとって大きな宝になったと言える。
“芯の強い熱い男前”といったイメージのある石原プロモーションのなかで、“嫌な奴”を演じきる役者として新たな立ち位置を掴んだ徳重。役者として確かな爪あとを残したその上で、今後どんな役を演じていくのか。今年7月に40歳を迎えた徳重が、40代から50代になってからの役者人生が、どのようなものになるのか。まずは本作で軽部をどう演じるのかを見届けたい。
(文/榑林史章)