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講師もバーチャルな時代!? 教育分野にも広がるバーチャルYouTuber

 YouTubeやニコニコなどの動画サイトを中心に、3DCGなどで造形された架空のキャラクターが配信者として活動するバーチャルYouTuber。2017年末より急速にブーム化、現時点で既に2000体以上のバーチャルYouTuberが存在し、トップ人気のキズナアイは180万人以上のチャンネル登録者数を獲得している。今年5月にはグリーがバーチャルYouTuber特化型のライブエンターテインメント事業を開始し、100億円規模を投資を発表。この突然のブームに触発され、すでにエンタテインメント周辺業界以外でも、バーチャルYouTuberを起用する動きが見られる。eラーニングサービスを行う「Aidemy」では、バーチャルYouTuberを講師として起用。同サービスを提供するアイデミーの代表取締役CEO・石川聡彦氏に話を聞き、教育分野にまでも広まりつつあるバーチャルYouTuberの可能性を探っていく。

バーチャルYouTuberの起用で多言語展開も可能

  • アイデミーの代表取締役CEO・石川聡彦氏

    アイデミーの代表取締役CEO・石川聡彦氏

 バーチャルYouTuberという仕組みは、エンタテインメント周辺に限らず、さらに幅広い領域で活用できる大きな可能性を秘めている。AIやブロックチェーンなどの先端技術をオンラインで演習できるプログラミング学習「Aidemy」は、講師(トレーナー)としてのバーチャルYouTuber をオーディション形式で採用するとし、募集をかけた。同サービスは、PC 上に環境構築の手間をかけることなく、ブラウザ上ですぐに学習を始められることから、開始3ヶ月あまりで登録会員1万数千人、コード実行回数100万回を突破した注目のeラーニング。現状、基本的には静止画+テキストで講義が行われている。
「たとえば機械学習で必須の数学をどう使うのか、といった内容の場合など、人の声で解説してほしい、声で聴いたほうが理解は早い、といった要望が寄せられることがあり、講義動画の導入は課題の1つでした。一方で、私たちにはAI関連エンジニアの世界的な人材不足を解消するという大きな目標が根本にあり、そのための多言語展開も最初から視野に入れてのサービス構築を行ってきています。テキストというのは素直に翻訳すれば済むわけですが、仮に日本人の講師が登場して解説する動画を作って吹き替えを行ったとしても、正直それは海外のユーザーには、まったく受け入れてもらえないだろうと考えていた。そうした状況で、バーチャルYouTuberという素晴らしいフォーマットがあることに気づいたという流れです」

 多言語化の際、吹き替え声優を変更するだけで容易に別言語での講義動画が作成できる。それ以外にも、バーチャルYouTuberには複数のメリットがあるという。
「人気の塾講師といったケースを思い浮かべてもらえれば分かりやすいと思いますが、バーチャルなキャラクターなら講師の属人的なスキルや魅力に依存するわけではありませんので、安定した長期のコース提供が可能になります。基本的に、権利が会社に帰属する形で管理できる。また、現在のAidemy利用者はIT系エンジニアが半分ほどを占め、ある程度プログラミングの素養を備えた層がさらなるスキルアップのために使っている傾向が顕著なのですが、そうした層は同時にいわゆる新しいモノ好きでもあります。人工知能、ブロックチェーンといった領域を知ろうとする人たちには、バーチャルYouTuberという概念も親和性が高いのではないかと考えています。また、特に英語圏ではオンライン講座サービスとして後発にあたるため、ある程度エッジを立たせるためにもバーチャルYouTuberが役立つのではと期待しています」

ターゲットの幅も広がるバーチャルYouTuber講師

 今回のバーチャル講師募集でのコンタクトは、実はすべてが法人からのものだったとのこと。
「動画教材を作る、という点で考えると、そうした企業様との協力で、いわば分業でやれるというのも大きな利点だと思います。私たちが持っていないノウハウをゼロから蓄積するのではなく、技術を学ぶための教材を構成する人、3D モデリングする人、カメラの前で動く人、それを聴きやすい音に吹き替える人、といったそれぞれ専門の人に任せる。そうした分業制で、一定水準の動画があまり余計な動きをせずとも実現できるというのもバーチャルYouTuber的フォーマットの魅力ですね。そういう意味では、オリジナルキャラクターを使って動かすコンテンツビジネスという側面も確実にありますし、運営する私たちの側にもそういう意識が生まれてきています」

 今夏にはテストケースとなる動画講座シリーズ第1 弾を公開予定。現状で事前に想定している留意点などはあるのだろうか。
「エンタメに寄せすぎると逆にノイズに感じてしまうユーザーが増えるかもしれない、という点でしょうか。あまりにアニメっぽすぎる、ふざけすぎている、そういった仕上がりでは初心者の誘導には向いているのかもしれませんが、たとえば真剣に転職のためのスキルアップに取り組むエンジニアの方には邪魔な要素になる。エンタメ的な部分のバランスの微妙な調整が難しいということですね。まずはオリジナルのバーチャルキャラを1体構築し、5分×12本で1時間程度のプロトタイプ講座を公開し、反応を探っていこうと考えています」

 同じ内容の教材でも、キャラクターの差し替えや言い回しなどのチューニングにより、別ターゲット向けに仕上げることも容易になる。Aidemyのような専門分野に限らず、教育サービス全般において、“バーチャルYouTuber =親しみやすい人型のインターフェイス”を通じたコミュニケーションの有効性はますます注目されそうだ。

(文/及川望)
[18年5月28日号 コンフィデンスより]

提供元: コンフィデンス

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