デジタル配信シェア、初の50%超に IFPI『Global Music Report 2018』

 国際レコード産業連盟(IFPI)は4月24日、2017年の音楽市場をまとめた『Global MusicReport 2018』を公表した。これによると、全世界の音楽市場は前年比8.1%増の173億ドル。前年比増は3年連続となっており、世界規模で音楽市場のV字回復が続いている。

ストリーミング配信は前年比41.1%増と急拡大

 なかでもデジタル配信はとうとうシェアが54%と、初めて50%を超える結果に。特にストリーミング配信は前年比41.1%増と急拡大。全世界の有料サブスクリプションサービスの利用者は1億7600万人に達している(前年比6400万人増)。

 その一方で、デジタルダウンロードは20.5%減と大幅に減少しており、デジタル配信のビジネスがダウンロードからストリーミングに移行していることを窺わせる結果となっている。

 一方、フィジカル市場は5.4%減で、全体のシェアでは、30%まで減少している。フィジカル市場が全体のシェアよりも高いのは、日本(72%)、ドイツ(43%)。また、CD市場の減少傾向が続くなか、ここ数年のトレンドの1つであるアナログレコード市場は22.3%増と、17年も好調をキープ。フィジカル市場全体で3.7%までシェアを広げている。

 上述したように、ストリーミングの急拡大は、フィジカルの落ち込みを補完するどころか、V字回復にまで繋がっているものの、IFPIでは、1999年のピーク時に比べると68.4%に留まっており、まだまだ成長の余地を残していると指摘。このままストリーミング市場を成長させていくには、やはり違法配信対策が必要で、特にストリーミングサービスへの楽曲の違法なアップロードは大きな問題であり、ブロッキングなどについての議論を進めていくことが急務であるとも解説している。

 このほかにもアーティストなど楽曲制作者への正当な利益還元という点では、昨年同様、有料のストリーミングサービスと無料(広告型)ストリーミングサービスとの楽曲使用料の格差=「バリューギャップ」の解消についても指摘された。

日本のストリーミング市場は8.0%増にとどまる

 なお、アジア・オセアニア地域で見ると、市場全体は5.4%増で、全世界と同様に3年連続で前年比増を記録した。けん引しているのはやはりデジタル配信で、デジタルダウンロードこそ7.5%減となったものの、ストリーミング市場は38.2%増で、デジタル配信全体では前年比22.4%増となっている。

 ただし、全世界で見るとストリーミング市場は40%超の成長となっているのに対して、やや成長度が鈍い。これは、インド(60.8%増)、韓国(47.0%増)、フィリピン(24.3%増)とほとんどの市場で高い数値を記録しているのに対して、日本が8.0%増に留まっているためで、日本ではいまだフィジカル市場の減少分を相殺できていないと同レポートでは指摘している。

 なお、中国は音楽市場全体が35.3%増。ストリーミング収益は26.5%増となった。その他の地域では、南米が前年比17.7%増となったほか、北米も12.8%増を記録。ヨーロッパは4.3%増に留まった。

 今回のレポートを見ても、フィジカル市場がいまだ7割超の日本市場は世界規模で見るとますます特殊な市場として際立ってきていることがわかるが、それがネガティブな要素かと言えば、必ずしもそうとは言えない。この特殊性を活かして、いかにして、手に取って楽しむ“モノ”としての価値を追求していくかは、今後も変わらず大きな課題であり、そうした商品提案が、世界的にも音楽市場のさらなる成長のヒントになるだろう。

 もちろん、ストリーミング市場の成長は世界的なトレンドであり、フィジカル市場を維持しながら、いかにしてこの新たな市場を日本で根付かせ、拡大させていくかも急務だ。日本でも世界規模と同程度にまで同市場が成長し始めたとき、世界の音楽市場はさらに活気づいてくるはずだ。

提供元: コンフィデンス

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