『ブラックリベンジ』プロデューサー、覚悟を決めて臨んだスキャンダル復讐劇
スキャンダル愛憎劇の裏に生々しい人間ドラマ
「僕はずっとドラマ制作に携わっていたのですが、昨年バラエティ番組『上沼・高田のクギズケ!』を半年間、担当していたんです。そのとき、ちょうど芸能人の不倫問題などを大きく取り上げていたんですが、最初は『視聴者が有名人の不倫の事実を知って楽しんでいる』という認識だったんです。しかし、そのニュースの根底に『スキャンダルのネタ元が身内』という事実を知り、当事者が復讐のためにスキャンダルを利用していると感じるようになりました。それっておもしろいと言っては不謹慎ですが、生々しい人間ドラマだなと感じたんです」
こうして立ち上げられた企画は、完全オリジナル企画として制作が進むことになるが、そこにはテレビマンとしての覚悟があった。
「芸能界やスキャンダルといった内輪の話をドラマにするにあたり、『忖度』『迎合』『妥協』だけは決してしないと固く決めました。それをやってしまうと『身内がつくった、身内を守るドラマ』と思われるし、内容もペラペラになってしまう。覚悟を決めて臨みました」
「元週刊文春の中村竜太郎さんに監修に入っていただき、記者という仕事のリアリティにもこだわっています。木村多江さん演じる沙織は、悪に対してスキャンダルを暴くことで復讐をしていくのですが、決して正義のヒーローではない。記者側にもゲスな部分はある。ゲスなことをする人、それを報道する記者、その記事を読んで笑う読者……。だれも正義ではない。このドラマを観て笑う人が『もしかしたら自分が一番ゲスなのかも』と感じてもらってもいいのかもしれません。誰の立場に忖度することなく、世の中にしっかり向き合ったドラマを作っています」
こうした気概に溢れた作品を制作するうえで欠かせなかったのが、主人公・沙織を演じる木村だ。彼女への信頼は絶大なものがあるという。
「一緒にやりたいと思う役者さんに集まっていただけました。そのなかでも、今作のスキャンダルの裏側にある愛憎劇をしっかり表現できるのは多江さんしかいないと思っていました。映画『ぐるりのこと』での狂気を見せる芝居が印象に残っているのですが、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』での優しいお母さん像など、いろいろな顔を持つ女優さん。そんな彼女の“攻撃性”という表現を見てみたいと思ったんです」
逆算の脚本構成はしないオリジナルならではの制作
「脚本でこだわったのが、逆算で構成しないということです。原作ものだと、結末が決まっていることが多いので、ラストに向かって逆算して脚本を書いていくのですが、僕は絶対にそれはしません。今作は、いま8話の撮影をしているところですが、まだ最終回(10話)がどうなるのか決まっていません。多江さんが演じる沙織の演技を見て、現場で感じたことを脚本に活かしていきます。視聴者を良い意味で裏切りたい、ドラマにハマってほしいという思いも強いので、オンエアが終わったあとの反応も意識しています。いろいろな想いを取り入れながら進めていくことが、オリジナル脚本の良さでもありますから」
こうしたドラマ作りは、変わりゆく視聴者の生活スタイルに合わせた有効な手法のように感じられるが、一方でかなりの労力を要するうえ、企画としてのリスクもある。それでも妥協せずドラマ作りに励むモチベーションとは。
熱い想いで制作された『ブラックリベンジ』。現在4話まで放送されているが、意外にも(?)各界から好意的な反響が多いようだ。
(文:磯部正和)
木曜ドラマ『ブラックリベンジ』
出演:木村多江、佐藤二朗、DAIGO(特別出演)・鈴木砂羽
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