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『民衆の敵』Pが語る“新しい月9”への挑戦

『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』より (C)フジテレビ

『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』より (C)フジテレビ

 10月期の月9ドラマ『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』は、ごく平凡な主婦だった篠原涼子演じる主人公・佐藤智子が、ある日、新米女性市議となり、政界にはびこる悪や社会問題に立ち向かう痛快“市政エンタテインメント”。フジテレビ、また同ドラマ枠においてチャレンジングな要素が詰まった力作だ。プロデュースを手がける草ヶ谷大輔氏に、本作での月9の新たな挑戦、こだわりなどについて聞いた。

髪を切ってもらい、メイクも薄めに…“篠原涼子らしさ”を封印

  • (C)フジテレビ

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 若年層をターゲットに据えることの多い月9ドラマだが、『民衆の敵〜』では、「主演に篠原涼子さんを迎えるにあたり、その世代を中心に狙ったほうが世帯視聴率にも繋がるのではと考え、大きく舵を切った」と、草ヶ谷プロデューサー。同作ではほかにも数々の挑戦を試みている。

 「企画の最初のきっかけは、ワイドショーなどを観ていて『不祥事議員も含め今、政治がおかしなことになっている。しかも、その中には一種のエンタテインメント要素を感じるものもある』という気付きでした。そんな時、ある本を読んだところ、市議会議員は倍率が1.2倍で、大抵の人が立候補すると受かるという情報を得た。これは面白い切り口だと考え、普通の主婦だった主人公が市議会議員に立候補する物語を考えたんです」(草ヶ谷氏・以下同)

 篠原演じる佐藤智子は、いわゆる一般人の代表。政治の知識もないからこそおもねることなく、おかしいことはおかしいと平気で言えてしまう。草ヶ谷氏はこの人物を篠原のイメージで作り上げた。

『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』より (C)フジテレビ

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 「篠原さんを作り込まず、自然体な演技をしていただきました。セリフも語尾や言い回しを喋りやすいよう変えてもらっている。髪も切っていただき、髪をかき分けるなど“篠原さんらしさ”を封印し、メイクも極力薄め。斬新な篠原さんの姿を見せたのが挑戦の1つです」
 もちろん、若年層を意識して前田敦子や千葉雄大、主題歌にAAAを起用するなど、広い世代にアピールしていけるよう配慮している。そんな本作の脚本を担当するのが黒沢久子氏。彼女は、若松孝二監督の映画『キャタピラー』や平成ウルトラマンシリーズ、ネットドラマの『東京女子図鑑』も担当したことがある異才だ。これも挑戦の1つ。

 「制作陣の想いとしては、今までのドラマの概念にとらわれない挑戦をしたかった。実際、テレビドラマの脚本家の方々とは人物の行動のアプローチや台詞のかけ合いが違い、いい味わいがあります」

 さらに本作で特徴的なのは、実在の政治的な事件を思わせる人物やエピソードが数多く散りばめられていること。メッセージ性はあっても、あくまでもエンタメでありたいと考えたことが、黒沢氏に脚本を依頼した決め手になっている。

トレエン斎藤を起用、“俳優芸人”のメリットは

 連ドラ初レギュラーとなるトレンディエンジェル・斎藤司を起用したことも話題だ。彼を入れることで、政治という固い世界観に柔らかさを加えた。昨今、芸人の俳優としての活躍が目立つが、草ヶ谷氏は芸人を起用するメリットを次のように語る。

 「それは現場のムードメーカーになるだけではない。芸人さんは“表現者”という意味では俳優さんと違いはなく、相手のリアクションに対応したお芝居ができることが特徴的です。相手のお芝居を見て、返し方を即座に変えられますし、逆にこう返して欲しいと誘うようなお芝居もできる。これは芸人さん特有のかけ合いの感覚で、さらに間の取り方が素晴らしい。斎藤さんもこれを機会に多くのドラマのオファーが来るのではないでしょうか」
  • 『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』より (C)フジテレビ

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 前期の「コード・ブルー」の好調を受けての放送に、プレッシャーを感じないわけではない。「今は何がヒットするか何もわからない状態。セオリー通りではダメだという危機感が監督を含め現場レベルにある。それならばまずは作り手が面白いと感じるものを第一にしようと。私は本作をいい意味で月9だと意識していない。とはいえ月9を壊してやろうと思ってもいない。私たちの挑戦と作品が発するメッセージをうまく伝えられるよう制作していますので、ぜひご注目ください」

文/衣輪晋一

(『コンフィデンス』 17年10月23日号掲載)

提供元: コンフィデンス

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