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『フラ恋』プロデューサー、安全策ではつまらない 「綾野剛に今までにない役を演じさせたい」

  綾野剛&二階堂ふみによる“異形の愛”を描く王道ラブストーリー『フランケンシュタインの恋』(日本テレビ系)。「そろそろ人間やめませんか?」と不老不死の怪物役に綾野を口説き落とした日本テレビの河野英裕プロデューサーに本作での挑戦と狙いを聞いた。

“人間とは何か”がテーマ。シザーハンズをやりたかった

  • 日本テレビ放送網 制作局専門部次長 河野英裕氏

    日本テレビ放送網 制作局専門部次長 河野英裕氏

 綾野剛演じる不老不死の怪物と、二階堂ふみ扮する津軽継実の“異形の愛”を描いた本作。映画を中心に活躍する演技派のふたりをメインキャストに迎えた企画の成り立ちについて聞いた。

「綾野さんとドラマを作りたいという想いからスタートした企画です。様々な役を演じてきたなかで、これまでにない役柄を演じさせたい。連ドラだから安全策をとって、という考え方もあるけど、それではつまらない。そこで『そろそろ人間やめませんか?』と口説きました(笑)。ファンタジーラブストーリーで、今までにやっていないキャラクターを提案したところ、綾野さんもそれに賭けてくれました。主人公が人間ではないと共感できない視聴者もいるので危険度は高い。ですが、そういったドラマが好きな人もいるはずだし、その一風変わった物語から話題が広がる可能性もあると考えました。さらに言えばこの放送枠は、日本テレビのドラマ枠のなかでもエッジの利いた挑戦枠。いろいろなジャンルや方法論があった方がいいと考え、あえてチャレンジしています」(河野英裕氏/以下同)

 だがなぜ今、「フランケンシュタイン」なのだろう?
「『シザーハンズ』がやりたかったんです。そんなとき、自宅の本棚にメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を見つけたんです。この怪物と『シザーハンズ』を結びつければ“人間とは何か”というテーマが描けると考えました」

 次にヒロイン。年齢設定を30代以上にすると結婚や子どもなど“要素”が増えてくる。純粋にラブの関係性で物語を作るため、年齢は20代に。そして、綾野と対峙できる演技力の女優を考えたとき、脳裏に浮かんだのが二階堂だった。

「二階堂さんしかいないと思いました。人間界に降りてきた怪物が恋をする人物なので、圧倒的な人間力とキュートさが欲しい。そこに迷いはありませんでした。2人のほかの俳優陣も演技力を優先しています。“数字を持っている役者”って言われ方がありますけど、なんだかよくわからないですし」

合格点は平均視聴率2桁。手法を探し続けて挑戦したい

 脚本は「自分の想像以上のものを書いてくれる方」ということで大森寿美男氏に依頼。“キノコ”のアイデアは大森氏からで、河野氏が提出した“菌”を発展させたもの。さらに「怪物が触れて生えてきたキノコを食べる」設定は、松本零士の名作コミック『男おいどん』からの影響もあるそうだ。

 主題歌のRADWIMPSは、ロック好きの河野氏が綾野と雑談するなかで、何気なしに綾野から勧められた彼らのサウンドを聴き、「これだ!」と膝を打ったという。

「アルバム『人間開花』の1曲「棒人間」が、偶然にもドラマにピッタリだったんです。そこで『この曲を主題歌にしたい』とRADWIMPS側にお願いしました。大森さんも気に入ってくれて『僕は人間じゃないんです』という歌詞を劇中に投影したり、柳楽優弥さん演じる稲庭を、嫉妬心やずるさもある“人間代表”とし、歌詞の世界観にある『棒人間』を体現してもらいました」

「撮影と宣伝は等価」と考える河野氏は、撮影現場でも積極的に宣伝の時間を割けるようにすることをスタッフの意識に植え付けたいと話す。だが視聴率は初回こそ11.2%と健闘したものの、第2話は7.3%。第3話は8.4%と決して満足のいく数字ではなかった。ネットでは二階堂の演技や純愛ストーリーへの高評価の意見が散見されるが、一方で「キノコが気持ち悪い」など逆の声もある。だが河野氏は「言いたい放題言ってくれる環境があるのは、逆にありがたい。何も言われなくなったら終わりですから」と前向きな姿勢を見せる。

「合格点は平均視聴率2桁。第2話の数字を見て『またやっちまった!』と思いました(笑)。でもこの先、盛り返すべくがんばるのみです。わかりやすく共感し得ない主人公には、今の人たちはついてきてくれない。今回のドラマはファンタジーですし、単純なラブストーリーの話運びでもないので、想像力を使って、物語やキャラクターに共感してもらう必要があります。それはリテラシーが難しいし、ハードルが高いんです。“ながら見”が基本のテレビドラマにおいて、僕なりに様々な計算をしているつもりですが、なかなか当たらない(笑)。でも今後も『こんなドラマがあったのか。こういうやり方があったのか』というものを探し続け、挑戦したい」

 テレビマンとして、フィクションを通しての問題定義や視聴者の求める“安らぎ”を送りたいと語る河野氏の挑戦にこの先も注目したい。
(文:衣輪晋一)
(コンフィデンス 5月22日号掲載)
日本テレビ放送網
制作局専門部次長
河野英裕氏
Profile/かわのひでひろ
68年生まれ。91年日本テレビ入社。これまでの主なプロデュース作品は『すいか』『マイボスマイヒーロー』『野ブタ。をプロデュース』『銭ゲバ』『Q10』『妖怪人間ベム』『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)『奇跡の人』(NHK)など。

提供元: コンフィデンス

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