好調理由は“地に足ついたドラマ作り”にアリ、『緊急取調室』Pに聞く制作のこだわり
15年のSP版の放送で手応え「同作でやるべきこと、方向性が見えた」
「取調室が主な舞台ですから、刑事ドラマとしての派手さはありません。そういう不安はありましたが、狭い空間で緊迫した雰囲気の中、人1人を深掘りして、丸裸にしていく人間ドラマとして、今までにない刑事ドラマが作れたのではと思っています」(ゼネラルプロデューサー・三輪祐見子氏/以下同)
「今、ニュースを見ていても、親族 殺人や、つい最近まで普通にお付き合いしていた近所の人が殺人を犯すなど、思ってもいなかったような悲しい事件がたくさん起きています。 人が越えてはいけない一線を越えるきっかけとは何なのか。誰でも罪を犯す可能性を秘めているし、いつ何時被害者になるかもしれない。人には皆、そのギリギリの見えないラインがあるのではないかと考えたのです。
それは一般的な事件ものや刑事ドラマではなかなか描きづらく、難しい部分ですが、そこにもドラマが あると考えました。刑事ドラマがたくさんあるテレ朝で、ほかではできないことをやり、もっと面白いドラマにするためにもあえてそこを攻めてみようと思いました。脚本の井上由美子さんがその部分を、社会性のある切り口で、絶妙に書いてくださっています」
明暗の演出とベテランキャストで緊迫の取調劇を実現
取調室という狭い空間が主な舞台となるだけに、こだわっているのが演出面とキャストだという。
「室内のシーンが多いので、単調にならないよう、カメラワークも含めて照明や色調整にまでこだわっています。舞台が変化しないぶん、音楽はダイナミックにしてほしいと、音楽担当の林ゆうきさんにオーダーしました」
「舞台出身の役者さんが多く、皆さんには思う存分自由にやっていただいています。犯人役に関しては、芝居がしっかりできて、まるで舞台を観ているような独特の雰囲気を作れる方をキャスティングしています。取調室というワンシチュエーションで、天海さんと対峙しなければいけない役どころですからね。キャスティングも含めて、流行に取びつくことはせず、地に足がついたドラマ作りをしているつもりです。その安心感や安定感も視聴者に楽しんでいただけているのかもしれません」
大人の心に響くドラマ作りにこだわり、新たな刑事ドラマを生み出した本作の挑戦に注目したい。
◆三輪祐見子(みわ ゆみこ)
テレビ朝日 総合編成局 制作2部 ドラマ制作ゼネラルプロデューサー。92年に入社。『OL銭道』で連続ドラマ初プロデュース。近年では、「遺留捜査」シリーズ(11年〜15年)、「DOCTORS 最強の名医」シリーズ(11年〜15年)、『刑事7人』(15〜16年)、『グッドパートナー 無敵の弁護士』(16年) などを手がけた
(文/河上いつ子)
(『コンフィデンス』 17年5月15日号掲載)