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吉岡里帆の自己分析「役者として華がない。脇役の役割を担うことで勝負」

「人生、チョロかった」の名セリフが視聴者に強烈なインパクトを残し、演じたキャラクターが良くも悪くも世の女性たちの話題になった女優・吉岡里帆。その『カルテット』(TBS系)での目が笑わない、小憎たらしい小娘・有朱の好演が評価を受け、『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』新人賞を受賞した。「賞をいただけるのは初めて」と喜ぶ吉岡にドラマを振り返ってもらった。

役者として華がない自分が勝負できるのは

――新人賞おめでとうございます。個人で賞を受けるのはどんなお気持ちですか。
吉岡里帆身に余る光栄です。私は役者として自分に華がないと思っていて、そんな自分が勝負できることは脇役として主演の方がより輝けるようなキャラクター作りをして、その役割をしっかりと担うこと。それが役者としての自分のあり方だと考えていましたので、賞をいただけるなんてまったく思っていなかったですし、本当に驚きました。自分への評価が形として明確になって、こうして賞としていただけたのは初めてです。嬉しいものなんですね。トロフィーが自分のものとは思えなくて(笑)。
――ドラマは放送中から話題になり、有朱というキャラクターもSNSなどでよく取り上げられていましたが、手応えは感じていましたか?
吉岡里帆撮影中は不安もたくさんありましたし、緊張感で高ぶっていましたので、お芝居が良いとか悪いとかぜんぜんわからなくて。とにかくやれることを全力でやって、毎話毎話やりきったとは感じていました。撮影が終わるたびに心身ともに疲れ切っていましたね。ただ、撮影を重ねるに連れて、本当に目が笑えなくなってきて(笑)。優しい気持ちでいるのに目が死んでて、ほかの仕事のときに「もっと笑顔で」ってよく言われました。そんなことは初めてで、すごく作品に影響されている実感がありました。そのぶん現場は楽しかったですし、有朱という役で視聴者の皆様に認知していただけたのもうれしかったです。プライベートでもよく有朱ちゃんって声かけていただきました(笑)。

――吉岡さんが有朱そのもののように、小憎たらしく見えてしまうまでの役作りとは?
吉岡里帆憎たらしかったですよね(笑)。どの作品の役柄を演じるときも、キャラクターのバックボーンが大事だと思っています。台本は限られた言葉、場面しか書かれていないので、そこに至るまでのその人物の過去、その言葉が出るまでの経過時間など、なぜそうなったのかという“台本の前”を自分で想像して作ることを意識しています。有朱ですと、彼女は人の心を踏みにじったり、人を無下にするような言葉を平気で言うわけです。そういう言葉を言うときってつらいんですけど、それを言うのが当たり前になってしまうようなバックボーンを想像して、役柄の気持ちに自分をもっていきます。

速い人と一緒に走ると追いつきたくてどんどん速くなる

4人の繊細な芝居が話題になった(C)TBS

4人の繊細な芝居が話題になった(C)TBS

――『カルテット』は吉岡さんにとって特別な作品になりましたか?
吉岡里帆本当にそうですね。共演させていただいたみなさん、尊敬している役者さんでした。一緒にお芝居させていただいていると、マラソンと同じで、速い人と一緒に走るとこっちも追いつきたくてどんどん速くなるんです。そんな貴重な経験をさせていただきました。みなさんが私のなかから有朱を引き出すように私を扱ってくれて。とくに松(たか子)さん、満島(ひかり)さんは、私が有朱としてしたくなるようなお芝居で引っ張っていただいて、それを受けて演じることができたと思います。みなさんへのリスペクトがより大きくなりました。私1人では有朱はできていなかったです。

――今作を経て女優として得られたことも?
吉岡里帆お芝居をするときに、人間の機微を伝えるために、1ミクロンほどの小さなホコリみたいな感情を作らなくてはいけない。大味にしては伝わらないことがたくさんあるというのを今回すごく感じました。台本のセリフにも監督の演出にもすべてにつながる理由があって、細かく細かく丁寧に作り上げた作品は評価されるんだと思いました。現場で話し合っている時間も長かったですし、いい作品を作るという熱量も高かったです。

――有朱のセリフで一番印象に残っているのは?
吉岡里帆やっぱり「人生、チョロかった」です。脚本の坂元(裕二)さんともお話させていただいたんですけど、そういうふうに生きていく強さもあるんだと思わされました。普通の女性は、そう思っていても言わないじゃないですか。有朱は、あえてそう言うことで自分を保っているというか。でも、本当にそう思っているのかもしれないですけど(笑)。視聴者の方からの反応でおもしろいと思ったのは、有朱をずっと嫌な女だと思って観ていた、嫌っていたという方々から、10話のこのセリフを聞いて、一周回って嫌いになれなくなった、パワーをもらった、強く生きようと思ったという声をいただいたんです。たくましく生きていくしたたかさに感じるところがあったんですかね。私も有朱を嫌いになれなかったです。

勇気を持って挑戦したいのは等身大の“普通の人”

――前期まで連ドラ4期連続出演とご活躍中ですが、この先挑戦したい作品や役柄はありますか?
吉岡里帆基本的になんでもやりたいと思っているんですけど、今まで個性が強すぎる役が多かったんです。アクが強すぎて、撮影が終わる頃にはアク負けするというか、役に生気を吸い取られてしまっていました。特徴をしっかり出さないと視聴者に楽しんでもらえないと思って作り込んでいたんですけど、これからやってみたいのは、今の自分が素直に感じていることを表現できるような、等身大の“普通の人”。勇気を持って挑戦してみたいです。

――7月スタートのTBS日曜劇場『ごめん、愛してる』でのヒロイン役はそれに近い?
吉岡里帆そうなんです。今まで演じたことがないヒロインらしいヒロイン役です。私にとって大きな挑戦で、ひとつの転機になるような気がしています!
(文:編集部・武井保之/撮り下ろし写真:草刈雅之)

提供元: コンフィデンス

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