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「GLAYもいろいろありましたから」HISASHI、デビュー30周年で辿り着いた“ロックバンドの在り方”語る
「夢が叶わなかったこと=不幸じゃない」人生のストーリーとして肯定できる曲にしたかった
HISASHI MVのシナリオは、僕が書いたんです。こう言うと誤解があるかもしれないけど、「夢が叶わなかったとしても、人生は素晴らしい」ということをこの曲では書きたくて、歌詞だけでは言い切れなかったことを映像で補った。コロナ禍では、これまで以上にSNSに接する機会が多かったのですが、そこにはいろんな人の人生がデータとして残されていて、その1つひとつが僕は純粋に「美しいな」と思ったんです。
──たしかに「夢は叶う」という世の言説に追い詰められたり、苦しんだりする人は少なくないかもしれません。
HISASHI 考えてみれば、ピアニストだってバンドマンだって狭き門だし、たとえプロになれても、その先にはいろんな障壁がある。それでも人生は続いていくし、夢が叶わなかったこと=不幸じゃない。それも1つの人生のストーリーとして肯定できるような曲にしたかったんですよね。
──歌メロもすごくキャッチーで、前向きな印象です。HISASHIさんの作風といえば、GLAYの中でもトリッキーなセンスが光るようなイメージがあったのですが。
HISASHI アレンジのサクライケンタくんにも「すごくGLAYっぽい」って言われました。毎回、TAKUROの作る曲はTERUも歌いやすそうなのに、俺の作る曲はなぜか苦戦しているなって思っていたんです(笑)。今回はモバイルゲームアプリ『ブラッククローバーモバイル 魔法帝への道 The Opening of Fate』というポジティブな世界観のゲームのために書き下ろしたこともあって、作品に寄り添った結果、ポジティブなメロディーラインになったところはありました。
積極的にバラエティ出演するようになった理由「“GLAYを止めない”ことに個々が必死に動いた」
HISASHI 全く同じ気持ちです。GLAYもこの30年いろいろありましたからね。それでも一緒に歩んでくれたファンには感謝しかないし、真面目にやっていれば、誰かが見ていてくれる。それはファンもそうだし、氷室(京介)さんもそうでした。“あのとき”には、皆が助けてくれたということを、TAKUROの書いた歌詞を見ながらいろいろ思い返していました。(2006年にGLAYは氷室京介と共作シングル『ANSWER』リリース、競演ライブを実施。この年、GLAYは自立的なバンド活動を目指して事務所を独立している)
──<真面目に愛唄うオマエが愛おしい>という歌詞が出てきますが、“ロックバンド=真面目”というのは、ひと昔前にはなかった価値観ですよね。
HISASHI たしかに(笑)。最近の若いバンドは、「お酒を飲まない」って言いますしね。それもちょっと寂しいなと思いつつ、何かを続けていくためにはやっぱり“真面目”にやるしかないなって思うんです。海外のミュージシャンがドラッグを絶って60歳、70歳になって現役でステージに立っているのも、どこかで「真面目に音楽をやる」というところに向き合った結果だと思う。時代は変わりますよね。
HISASHI 「エンターテインメントは二の次だ」と言われて、音楽がなくても生きていける人は多いし、最初の頃は「それもそうだよな」と受け入れてたんですよ。ただ、映画や舞台を見ているうちに、「この感動のために生きていける人もいるんじゃないか」と自分でも思い返したんです。僕はYouTubeライブをやったけど、TERUは配信ライブ『LIVE at HOME』をやっていて、彼は相当お金使ったと思います。でも、とにかく僕らとしてはコロナに屈したくなかったんですよね。
──コロナ禍以降には、HISASHIさんをバラエティ番組でお見かけすることも増えました。クールな印象だった“あのHISASHIさんが?”と意外だったのですが。
HISASHI 世間に「GLAYは動いているよ」ということを伝え続けたかったので、オファーがあったらどこでも行こうと思っていました。別にバラエティ担当というわけじゃないんですけどね(笑)。たしかに「GLAYを止めない」ことに個々が必死に動いたのも、コロナの影響だったかもしれないですね。
──来年には、デビュー30周年を迎えますが、意気込みはいかがですか?
HISASHI 今年は11月から2度目の全国ツアーをやりますが、春のツアーも含めて「THE GHOST」というコンセプトからわりとマニアックな選曲をしてきたんですね。「HOWEVER」や「誘惑」といった曲もやらなかった。その分、来年は“ザ・GLAY”というか、ど真ん中のGLAYを楽しんでもらえるような1年にしたいですね。
(文/児玉澄子 写真/草刈雅之)
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