ドラマ&映画 カテゴリ
ORICON NEWS

池松壮亮×仲野太賀×渡辺大知、『季節のない街』文字通り、笑って、泣けて、感動できる理由

(左から)仲野太賀、池松壮亮、渡辺大知(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

(左から)仲野太賀、池松壮亮、渡辺大知(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

 ディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の「スター」にて、宮藤官九郎が、企画・監督・脚本を手がけるドラマ『季節のない街』(全10話)が配信中だ。黒澤明監督によって『どですかでん』のタイトルで映画化され、1970年に公開されたことでも知られる山本周五郎の小説「季節のない街」を映像化。舞台となる「街」を、12年前に起きた“ナニ”の災害を経て、建てられた仮設住宅のある「街」へ置き換え、現代の物語として再構築している。仮設の「街」での物語をリードしていく3人の青年を演じた池松壮亮、仲野太賀、渡辺大知に撮影時のエピソードや本作の見どころを聞いた。

物語に真実味を与えてくれる大きな力をもらったオープンセット


――今回のドラマは、宮藤さんが長年温めてきた企画で、脚本も監督も務めたこん身作。しかも、関東近郊の廃校の校庭に仮設住宅の「街」(オープンセット)を造って撮影したと聞きました。撮影を振り返って思い出されることは?

池松素晴らしいオープンセットでした。海辺の街を連想させるような湖が見えるロケーションでした。仮説住宅の街を丸ごと作って、それぞれのキャラクターに合った部屋が作り込まれ、そこに人々が12年間暮らしている生活の匂いがありました。寒い中(主な撮影は2022年12月から23年2月にかけて実施)、毎日みんなで朝日を浴びて、夕日を眺め、星や月を見て、じゃあまた明日、とホテルに戻って。ホテル近くの銭湯に行ったらサウナに荒川良々さんがいて、水風呂に入ったら宮藤さんがいて、外気浴してたら太賀が隣で寝てて…、お風呂上がりに青年部の3人で乾杯して。ものすごく贅沢(ぜいたく)で幸せな環境での撮影でした。物語に真実味を与えてくれる大きな力をもらえました。

渡辺僕も初めて仮設住宅が建っている現場を見た時、本当に誰か暮らしているんじゃないか、と思いました。空き部屋もあって、すでに出て行った人もいる感じがリアルで、そこがまたすてきだなと思いました。阪神淡路大震災(1995年)があった時、僕は、神戸市に住んでいて5歳だったんですけど、近くに仮設住宅が建てられて、親に連れられて行ったことがありまして、その時の記憶がよみがえってきました。子どもながらに、なんて言ったらいいか…元気そうだけど、元気じゃない感じがしたことを思い出しました。そういうところもこのドラマで伝えられたらいいな、と思って初日に臨みました。

 ちょうど僕のクランクインは、第1話で六ちゃん(濱田岳)が女の子を背負って初めて一人で「街」の外に出ていった時に一瞬すれ違うというシーンだったのですが、その前に六ちゃんが「街」の外の道路を走り始めるシーンの撮影を見学していて、六ちゃんと同じように僕も「街」の外の道路がどこまでも続く線路に見えたんです。そのことが印象的でした。「街」の閉塞感みたいなものが生々しくて、ちょっと切なくもあり、すごくいい場所で撮影させてもらえているんだな、と実感しました。

仲野初めてセットを見た時は、すごく感動しました。大掛かりなセットで一棟ごとに細かいところまで作り込まれていて、それぞれの部屋の人たちの暮らしぶりが見えてくる小物類があって。三ツ松けいこさんをはじめ美術チームのものすごい熱量と、工夫と、リサーチ力が手に取るようにわかるというか、相当気合を入れて作り込んでくださったんだなと思って。そこでのびのびと撮影ができたのは、俳優部としてはこれ以上ないくらい、ありがたかったです。

(左から)仲野太賀、池松壮亮、渡辺大知(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

(左から)仲野太賀、池松壮亮、渡辺大知(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

宮藤さんの作品には弱い立場の人への温かいまなざしがある

――池松さんは、主人公で、街の住人を観察し、それを報告して収入を得るために街に潜入した半助こと田中新助を演じました。宮藤組は初参加なんですね?

池松宮藤さんから初めてオファーをいただき、やっと来たかと思いました。とてもうれしかったです。宮藤官九郎×山本周五郎×どですかでん×ディズニープラスというこれ以上ない組み合わせに、良い作品の匂い、心ときめく予感がありました。時代の大きな変化の最中で、失われていくものはたくさんあるけれど、たしかにそこに在ったこと、そこにいたということ、それを信じること。目に見えない大切なことによって、ささやかに美しく輝き、つなぎ止められる営みがあるということ。この物語はきっと、時代の変化に置いていかれそうになる人々を、宮藤さんが宮藤さんなりのやり方で救ってくれたんだと思います。今、届けるべき物語だと思いました。この物語をこのチームで届けられたことをとても誇りに思っています。

――渡辺さんは宮藤さんとミュージシャンとして、俳優として共演してきた中で、宮藤監督の演出はいかがでしたか?

渡辺そうですね、宮藤さんとはフェスなどでお会いすることが多く、同じステージに立って、同じマイクで歌ったこともあり、爆発した宮藤さんをたくさん見ていたので、今回、宮藤さんの内面というか、一番大事にしているもの、隠してた宝物みたいなものに触れた気がして、すごく光栄でした。いただいた脚本にそれがにじみ出ていたというか、宮藤さんの覚悟を感じましたし、オファーいただいたからには微力ながらも精いっぱい自分のできることでお返ししたいと思いました。

――仲野さんも『ゆとりですがなにか』をはじめ、いろいろご縁もあったと思いますが…

仲野宮藤さんが脚本を書かれた作品に出演したり、共演したり、とこれまでご縁はあったのですが、宮藤さんが演出する作品に出演するのは初めてだったので(※その後、宮藤演出の舞台に出演)、初めての宮藤組で直接演出を受けられる喜びは大きかったですね。宮藤さんのこの作品かける情熱をすごく感じたので、それに是非とも応えたい、という気持ちでした。宮藤さんの作品にはとても現代性があると思います。一見ユーモアにあふれているけれど、その根底には社会を鋭く洞察しながら、弱い立場の人へのとても温かいまなざしがあり、それが今回、震災を背景に徹底的に描ききるすごみを脚本から感じました。僕も気合いを入れて臨みました。

(左から)仲野太賀、池松壮亮、渡辺大知(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

(左から)仲野太賀、池松壮亮、渡辺大知(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

――仲野さんは、池松さん演じる半助を街の青年部に引き入れるタツヤを演じました。母親の愛情に飢えた、承認欲求高めな“親思い”の次男坊で、登場人物の中でもかなり可哀想な男にも思えるのですが…。

仲野タツヤ周辺では悲しい出来事がとても多く、思いもよらない方向に巻き込まれて、裏切られ、失望させられたりもする。こんなにも人生上手くいかないものか、家族というのは切っても切り離せないものか、心を痛めるシーンがたくさんありました。「街」への執着、「家族」への執着、「未来」への執着がありながらも、タツヤの前を向いて生きていこうとする姿勢は、この物語を象徴していると思って。そのことを多少意識しながら演じていましたが、なにせ「街」の人たちが本当にすてきな俳優さんばかりで、皆さんが演じるキャラクターがパワフルで生命力にあふれていたので、「街」の人たちからパワーをもらってタツヤもポジティブでいられたんじゃないかと思いましたね。

このドラマぐらい痛みを描いていないと「人間ドラマ」と言えない

――渡辺さんは青年部のメンバーで仮設住宅の「街」近くの酒屋の息子で、街でいちばん内気なかつ子(三浦透子)に恋しているオカベを演じています。

渡辺宮藤さんから初日に「オカベとかつ子は、この物語の唯一恋愛要素、ロマンティックパートなのでお願いします」みたいなプレッシャーをかけられました(笑)。このドラマは恐ろしいバランス感覚で成り立ってるというか、単純に明るいとか面白いとか、つらいとか切ないとか、そういう言葉で表せないところがあって、すごい人間ドラマだなと思ったんです。これまでも「人間ドラマ」という言葉をよく耳にするし、使いがちですけど、「人間ドラマ」と言うからには、このドラマぐらい痛みを描いていないと「人間ドラマ」と言えないんじゃないか、と認識が改まるくらいでした。

 人が人を好きになる「恋愛」というものも「人間」を描く上で、あるいは「街」を描く上での1要素。オカベのかつ子への思いは記号的にならないようにしつつ、記号的にやるみたいなことを心がけていました。そんなわけないだろうとツッコミを入れたくなるほどかなりうそっぽいんだけど、本当に好きなんだな、と共感してもらえたらいいなと思っていました。

(左から)仲野太賀、池松壮亮、渡辺大知(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

(左から)仲野太賀、池松壮亮、渡辺大知(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

――宮藤さんは「どこか冷めていた半助が、ラストに向かって変貌していく様も見どころ」とコメントされていました。池松さんが思うこのドラマの魅力は何だと思いますか?

池松たくさんありますが、何より山本周五郎さんの原作と宮藤さんのマッチングでしょうか。宮藤さんが長年温めてきた企画で、黒澤明監督の『どですかでん』は戦後ですが、今回の『季節のない街』は震災後の現代の物語として再構築されています。原作小説はいつの時代にも起こりうる大きな破壊の後の荒野を舞台に人間の喜悲劇として読むことができ、その普遍的な物語に宮藤さんの息吹がかかり、現代に漂う気分をつかまえて見事な物語としてよみがえりました。コンプライアンス意識が高まった現代からすると、非常に触れにくい部分もあったと思うのですが、行き過ぎた、あるいは表面的なそういったものを逆手にとりながら、宮藤さんと2人の監督(横浜聡子、渡辺直樹)は、人の悲しさ、人の苦しさ、人の人の醜さ、人の優しさ、人の情愛…、人間のさまざまな面をひとつひとつ描き出し、文字通り笑って、泣けて、感動できる物語に仕上げてくれました。是非、観てもらいたいです。

――仲野さん、渡辺さんからもまだ視聴されていない人へコメントをいただけますか?

仲野本当に面白いんですよ!池松くんが演じる半助が「街」で出会ったいろんな境遇の人たちのいろんな人生の行方をのぞき見る群像劇であり、盛大に笑って、思わぬところで胸をわしづかみにされることもあると思います。観る人によって受け取り方も全然違って、全10話最後まで飽きることなく楽しめると思います。どの扉を開けてもすてきな俳優さんたちが出てきて、個性豊かなキャラクターを演じているので、そこも面白いと思います。

渡辺宮藤さんの思いが爆発しているので、日々の生活において「本当はこんなはずじゃない」って、モヤモヤを抱えた人たちに是非、観てほしいです。ネットには楽しいコンテンツがいっぱいあって、テレビでも面白い番組がいっぱいあって、ドラマもたくさん放送されていますけど、ほかの誰もまねできないものが詰まったドラマになっていると思います。

『季節のない街』ディズニープラス「スター」で全10話独占配信中

 ”ナニ”から12年―― この街には、”ナニ”で被災した人々が身を寄せる仮設住宅があった。
 今もまだ、18世帯ものワケあり住人が暮らしていたが、月収12万超えると「即立退き」とあって、皆ギリギリの生活を送っていた。主人公の田中新助こと半助は、街で見たもの、聞いた話を報告するだけで「最大一万円!」もらえると軽い気持ちで、この街に潜入する。だが、半助こそ ”ナニ”によって何もかも失い、ただ生きているだけの男だった。しかし、ギリギリの生活の中で、逞しく生きるワケあり住人らを観察するうち半助は次第に、この街の住人たちを好きになっていく。そんな中、仮設住宅が取り壊されるという噂が街に流れはじめるのだが……。

原作:山本周五郎『季節のない街』 
企画・監督・脚本:宮藤官九郎
出演:池松壮亮、仲野太賀、渡辺大知/三浦透子、濱田岳/増子直純、荒川良々、MEGUMI、高橋メアリージュン、又吉直樹、前田敦子、塚地武雅、YOUNG DAIS、大沢一菜、奥野瑛太、佐津川愛美/坂井真紀、片桐はいり、広岡由里子、LiLiCo、藤井隆、鶴見辰吾、ベンガル、岩松了
監督:横浜聡子、渡辺直樹
音楽:大友良英
撮影:近藤龍人
美術:三ツ松けいこ  
照明:尾下栄治
編集:宮島竜治、山田佑介
録音:山本タカアキ
衣裳:伊賀大介、立花文乃
ヘアメイク:寺沢ルミ

公式サイト:https://www.disneyplus.com/ja-jp
公式Twitter:@DisneyPlusJP
(C) 2023 Disney and related entities

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索