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川村真木子「エリート女性の生きにくさ」を埋める、“運営者”に徹することで見えてきたオンラインサロンの価値

川村真木子さん

川村真木子さん

 オンラインサロン業界で最大規模の会員数を誇るのが、川村真木子さんがオーナーを務める『Holland Village Private Community』。月額の会費が10,000円と高額にもかかわらず、なんと1万人以上の会員を有している。ゴールドマンサックス出身の金融系バリキャリ女子として、金融経済知識をはじめ、子どもの教育、トレーニング、グルメ、旅行、美容など多岐にわたる情報を提供し、会員の9割は女性が占めている。その規模感に「オンラインサロン界の帝王」と呼ばれることもあるが、芸能人でも維持していくことが難しいオンラインサロンで、なぜ川村さんはここまでの成功を収めたのか。

芸能人、有名人ではないからこそ“価値”を提供する重要性

 川村真木子さんは1976年奈良出身。東大阪の公立高校を3年生の時に休学し、米国カリフォルニア州にあるフランス系インターナショナルスクールへ留学。20歳で日本の高校を卒業した。大学は再び渡米。コミュニティカレッジから編入し、カリフォルニア大学バークレー校を2000年に卒業。卒業後は米投資銀行リーマンブラザーズ、ゴールドマンサックスに勤務し、2010年にはゴールドマンサックスの最高職位とされるマネージングディレクターに就任している。アメリカの大学を出て、誰もが憧れる企業に就職…まさに“金融バリキャリ女子”である。

 このネーミングは川村さん自ら付けたもので、2019年にゴールドマンサックスを退社する時からSNSやオンラインの世界で生きていく決意を固め、フックになる面白そうなキャッチフレーズをつけてInstagramを投稿し続けていた。米系投資会社で 2 年勤務し、美容系アプリ事業で起業したが、その間も川村さんのInstagramは金融知識、子どもの教育、自身の美容整形レポートなど幅広いトピックスで話題に。オンラインサロンを開設した2021年当時、Instagramフォロワーは8万人まで拡大していたという。

 「2021年、オンラインサロンを開設しないか? という話をもらいました。オンラインサロンの当時のイメージといえば、有名人のファンクラブ的なものだったり、堀江貴文さん、勝間和代さんのような有名な方が“学校”や“塾”、“道場”のようなコンセプトで学びの場を開設しているというイメージがありました。ですが私は堀江さんのようなカリスマでもなければ芸能人でもない。ですから私に勝機があるとすれば、コミュニティの運営者にとことん徹することだと思いました。会員の皆さんや色々な先生が主役となる場を作ろうとしたのです。ただしめちゃくちゃ口は出します。ですけど、やるのは皆さんですよ、という場を提供しています」

 すでにInstagramで8万人のフォロワーが集まっていた所以を川村さんは「色々な情報を知っていそう、この人が持っている知識や情報を知りたいと思ってもらえる土壌ができていたから」と分析。「真木子さんが知っていることを教えて欲しい」というリクエストも寄せられており、その情報を届けるのにオンラインサロンというクローズドな場も適していた。

 「情報を届けるとき、私は芸能人ではない、という考えが前提にありました。芸能人であれば、SNSに日常をアップしていればいい。でも、私は違いますから。何を届けると、喜ばれるのかというのは、すごく分析しました。そもそも自分がカリスマではないということを意識した情報発信を心がけたのです」

 その当時、運営会社との打ち合わせでも驚かれたというのが“金額の設定”だ。メンタリストDaiGoのサロンは1000円ほど、勝間和代も3000円ほどの月額料金の相場で、川村さんが提示したのは10,000円という料金。なぜ、強気とも言えるほどの金額をつけたのか。

10,000円は高いか、安いか…高額であることの利点とは?

 「当然、カリスマでも芸能人でもない私に、10,000円はありえない、それじゃ誰も来ないということは皆さんにすごく言われました。ですが私としては月額10,000円の価値があるコンテンツを出せばいいじゃないと思っていたいんですね。例えば皆さんがアクセスしづらい金融や経済の知識、巷やネットにはないインターナショナルの受験情報や良い医者のリスト。ネットで検索しても出てこない情報をしっかり発信していけば一月10,000円の価値になると信じていたんです」

 会員は川村さんのフォロワーが起点となる。最初は会員数200人程度と見込んでスタートしようと思っていた。ところが蓋を開けると、募集当日に1,800人の応募が。そしてオープン当月に3000人まで増加し、半年後には8,000人に到達。それだけ増えると一人では手に負えない。ゴールドマンサックス時代の知人を集め講師をしてもらうほか、事務局スタッフを増やしていった。幸い金融機関に強いネットワークがあったので、産休育休中の優秀な元同僚や、金融機関で働くことに疲れていた後輩などが、どんどん集まってくれた。

 ここに月額10,000円という数字が“効いた”。それだけの金額を払えるということは、その会員自体もそれなりの社会生活を営んでいる人たちだ。つまり様々な情報もあれば人脈もある。次々と様々なエキスパートが集まる上に、10,000円のハードルで荒らし行為をするような人たちをシャットアウトできた。つまり治安維持にも一役買った。結果、サロン内には同好会が150開設されるまでの大所帯になった。「その同好会は会員の方々に運営をお願いしているのですが、懸念は暴走する方が出るのではないか、ということでした。中には2,000人規模の同好会もあり、その2,000人に向けて何かを売りつけたり、妙な発信をされると大変なことになる。2,000人に何かを発信できるという立場は相当なパワーを持ちますので、正直底の部分ではびびっていました(笑)」

 紆余曲折しながら会員数は1万人以上に。ネットでは、オンラインサロンは「信者の集まりだ」「課金式ファンクラブ」という意見も多く散見されるが、これを川村さんはどう見ているのか。「そもそも、一人のスターがいて、その下にファンが集まるという形は飽きられやすい」と川村さん。

「私はそもそも巷でいうスターでもないですし、芸能人でもない。なので、運営者として会員さんが求めているものを提供することに徹しようと決めました。主役はそこにいる皆 さん全員であって、私は脇役。一人のスターの人気にファンが集まるという形は、ビジネスモ デルとしてもサステナブルではなさそうとも思っていました。人間1人で出来ることは限られていますから。」

男性ばかりの組織で本音を明かせないバリキャリ女子の受け皿にも

集まりの様子

集まりの様子

 またこれほど多くの会員が集まった理由としては、「女性の現実社会での生きにくさ」があると分析できる。管理職や役員となって活躍する女性も増えてはいるが、その根本は「男性社会」であるというのは変わっておらず、言いたいことが言えなかったり、様々な場面で気を使う部分もあるはずだ。

 「確かに私のサロンの皆さんはバリキャリ女子が多いです。女性役員やお医者様もいます。会員さんの声としてよく上がるのが、組織のなかで居場所がないと感じることなんです。私自身も男性社会でキャリアを進めてきたので、その気持ちはよく分かります。役職を得ても、男性の中でうまくやっていくために一歩引いていなければいけない。会議では私が部長なのに、まずは男性に話させなきゃいけない。部下の男性とクライアント先に行ったら、私は秘書だと勘違いされて名刺をもらえなかったりとか、男性同士で結託してキャバクラやゴルフなど、私が呼ばれない場所で意思決定されるなど悔しい想いを何度もしてきました」

 そういった意味で川村さんの『Holland Village Private Community』は、女性がありのままで自然体でいられる部活のような役割も果たしている。サロンの会員からは「現実社会よりも仲良くなりやすい」という声も挙がるという。金銭感覚の問題で、ランチに友人を誘うにも、相手の懐事情を鑑みたお店選びをしなければならないケースもあるが、同サロンではそれがなく気兼ねせずランチに誘える利点もあるそうだ。

「人が羨むようなキャリアを築き、生き生きと人生を送っているように見えても、ありのままでいられない孤独や 苦しさを感じる人もいます。そうした女性たち、また男性の会員さんたちにも「自然体で居られる」場所を提供していきたいです。
それに私は口コミのパワーをとても信じていて、サロン内で本当に価値があることを提供し続けていれば、オンラインサロンに偏見を持つ人がいたとしても、私のサロンには入りたくなるはず。事実、ここ数ヶ月は退会する人が殆どいない状況です。オンラインサロンは運営者とそのコミュニティを形成するメンバー次第でまったく違うものになります。すべてが信者ビジネスではない。ひとくくりにされないよう今後も、本当に価値がある情報を全力で集めにいきます」

 バンコクやシンガポール、ハワイに事務局があり世界展開もしている『Holland Village Private Community』。これまで一人で抱えていたバリキャリ女子もオンラインの発展により同士が見つけられ、さらには各分野で一流の先生ともつながれる時代になった。世の中ではオンラインとオフラインを分ける傾向にあるが、オンラインもまぎれもない“リアル”だ。川村さんの活躍は、オンとオフの境目がなくなり始めた現在の象徴のような現象のように感じられる。

(取材・文/衣輪晋一)
川村真木子

PROFILE 川村真木子

コラムニスト・実業家。1976年奈良県生まれ。親の転勤で千葉県、大阪府、シンガポールで幼少期を過ごす。1994年、高校三年生の春にロサンゼルスの高校へ転入を決意。帰国後、関西学院大学に入学するも自主退学し、渡米。2000年カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、米系投資銀行に就職。2021年8月よりオンラインサロン事業をスタート。現在はオンラインサロン「Holland Village Private Community」の運営に専念。その他、炭酸パックブランド「Carrie」の開発・販売を展開。2022年10月にはHolland Village Private Cafeをオープン。

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