ORICON NEWS
『ブラッシュアップライフ』P語る、豪華すぎるキャスティングの理由「バカリズムの脚本は現場への“挑戦状”」
壮大なスケールの設定で、ドラマチックなことは起こらない「初回放送まではかなり不安でした」
「最初の『市役所編』を書くために、まずバカリズムさんと一緒に市役所の方に取材しました。1〜2時間お話を聞いて、仕事のやりがいとか色々聞いたのに、その中でも“そんなことどうでもよくないですか?”が脚本になっているんです。ですから、1話でも“何を見せられているんだろう…”と思うような、一見中身のない会話が15分ほど続きますが、視聴者の方がそれをどう思うかは気になりました」
「またバカリズムさんのすごいところは、全体の構成をしっかり考えずにとりあえず書き始めること。私からしてみると、先々の展開を考えないと怖くて書き始められないんじゃないかと思うんですが…。それなのに、今1話を読み返すと、最終回がわかって書いているかのような内容になっています」
バカリズムは、「今まで誰もそこを書いてなかったけど、みんな必ず一度は思ったよね、みたいなことをドラマにする天才」だと小田Pは絶賛する。
実際、物語の核となる幼馴染のなっち(夏帆)とみーぽん(木南晴夏)との3人の会話劇には、“女子会あるある”が詰め込まれており、視聴者からは「え?バカリズムってほんとは女子なの?」「バカリズムって多分20代〜30代くらいの女を心の中に飼ってるんだと思う」などと、あまりにリアルな描写に驚きと共感の声が毎週寄せられている。
「服の色は人生の回数を表してる…?」転生の度に服装変わる麻美、ネット考察の真相は
「バカリズムさんの脚本なら出たい、安藤サクラさんの出演する作品なら出たいといった問い合わせが役者さん側から度々あり、全体を通して豪華キャストが集まる結果となりました」
これまで誰もドラマ化しなかった、何気ないシーンを取り上げる天才・バカリズムが書く脚本を、演者やスタッフは「挑戦状」として受け取っているという。彼の書く“リアル”を追求するために、制作現場が常に意識しているのは「没・個性」だ。
これが、本当の幼馴染の“リアル”ではないだろうか。よく会う友人とは服の趣味も合い、同じような格好をしているというのは、実際よくあることだ。2回目の人生では麻美だけ白系の服装に変わっていたことから、SNS上では、服の色がそれぞれの人生の回数を表しているのでは…などと考察を呼んだ。
しかし真相は、1回目の人生では地元の市役所勤務だったために地味目の茶系、2回目は薬剤師になったために結果的に白系の服装を着るようになった麻美を表現、3回目は東京に出てテレビ局勤務となったので洗練された黒系の服装を着ている、ということらしい。
豪華俳優のスポット起用に、子役は1200人審査… バカリ脚本のリアル追求した「没・個性」
「演技うますぎるし可愛すぎる」「キャストの面影がある子役さん達を見つけてくるのってほんと凄い」などと反響を呼んでいる子役は、1200人の中から選出された。ただ演技がうまいだけではなく、大人のキャストに似ている子役を選ぶため、納得いくまで毎週末、オーディションを行ったという。
ほかにも、カラオケボックスを出るギリギリまで歌う、最後に1口ドリンクを飲む、みーぽん(木南)が授業中や運転時だけ眼鏡をかける、免許取り立てでやたらと隣の車線を見てしまう、玲奈ちゃん(黒木華)が通話後にスマホ画面についた皮脂を拭く…といった、要所要所で細かすぎる芝居が何気ない日常を体現化しており、流し見や倍速再生が当たり前となった現代の視聴者も、じっくり見たくなる作品になっている。
視聴者からは、「ドラマみない勢の私が面白くて見てます」「社会人が最も嫌な日曜日の夜を楽しみに変えてくれた」「面白すぎて日曜の夜が憂鬱じゃなくなった。バカリズム、それだけでかなりの徳を積んでいる」といった声までも上がっている。TVerのお気に入り登録数は今期ドラマトップの104万人に上り、それだけ見逃したくない人が多い証拠だろう。
小田Pは、これだけの反響を呼んでいる理由を、“寄りと引きの共存”だと分析する。「1話ごとに楽しめる“寄り”の面白さ、タイムリープものならではの全体を通しての“引き”の面白さが共存しているからこそ、何度も見返したくなる、話題にしたくなるドラマになっている。バカリズムさんが今後、まだまだ思いもよらなかったところに連れて行ってくれるので、7話以降も楽しみにしていてください」と自信を見せる。脚本家の「挑戦状」に怯まず、日和らず制作する彼女に、テレビマンとしての矜持を見た。
(文/衣輪晋一)