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『ブラッシュアップライフ』P語る、豪華すぎるキャスティングの理由「バカリズムの脚本は現場への“挑戦状”」

 現在放送中のドラマ『ブラッシュアップライフ』(日テレ系)が、「今期一番」「面白すぎる」「次回が待ちきれない」などと反響を呼んでいる。安藤サクラの民放連ドラ初主演となる同作で、脇を固める夏帆、木南晴夏、松坂桃李、染谷将太、黒木華、水川あさみ、仲村トオルなど、豪華キャスト陣が並ぶが、レギュラー出演は安藤、夏帆、木南の3人のみで、その贅沢すぎる配役にも注目が寄せられている。バカリズム脚本の魅力、映像化や配役の苦労、さらにはネットで話題を呼んだ“服の色”考察の真相などを小田玲奈Pに聞いた。

壮大なスケールの設定で、ドラマチックなことは起こらない「初回放送まではかなり不安でした」

 本作は、安藤サクラ演じる主人公がタイムリープして人生を何周もするという、かなりぶっ飛んだ設定でありながら、基本的には何気ない会話が多く、劇的な場面は少ない。当初はバカリズムもその地味さを心配していたというが、これまで『生田家の朝』や『住住』でタッグを組んできた小田Pは、「壮大なスケールでありながら、ドラマチックなことが起きない」からこそ、バカリズムの才能が光ると確信していた。が、1話が放送されるまでは、実はかなり不安だったという。

「最初の『市役所編』を書くために、まずバカリズムさんと一緒に市役所の方に取材しました。1〜2時間お話を聞いて、仕事のやりがいとか色々聞いたのに、その中でも“そんなことどうでもよくないですか?”が脚本になっているんです。ですから、1話でも“何を見せられているんだろう…”と思うような、一見中身のない会話が15分ほど続きますが、視聴者の方がそれをどう思うかは気になりました」
 観た方にはわかると思うが、そこには意外と大事な話や伏線が潜んでいる。ありふれた日常シーンや何気ない会話には「わかる」「めっちゃリアル」という声が相次ぎ、「放送後の反響を見て、私たちは間違ってなかったと安心しました」と、初回から確かな手応えを感じたという。

「またバカリズムさんのすごいところは、全体の構成をしっかり考えずにとりあえず書き始めること。私からしてみると、先々の展開を考えないと怖くて書き始められないんじゃないかと思うんですが…。それなのに、今1話を読み返すと、最終回がわかって書いているかのような内容になっています」

 バカリズムは、「今まで誰もそこを書いてなかったけど、みんな必ず一度は思ったよね、みたいなことをドラマにする天才」だと小田Pは絶賛する。

 実際、物語の核となる幼馴染のなっち(夏帆)とみーぽん(木南晴夏)との3人の会話劇には、“女子会あるある”が詰め込まれており、視聴者からは「え?バカリズムってほんとは女子なの?」「バカリズムって多分20代〜30代くらいの女を心の中に飼ってるんだと思う」などと、あまりにリアルな描写に驚きと共感の声が毎週寄せられている。

「服の色は人生の回数を表してる…?」転生の度に服装変わる麻美、ネット考察の真相は

 また、本作はレギュラー出演となる安藤、夏帆、木南に加え、いわゆる脇役勢も豪華すぎると話題を呼んでいる。ゴールデンプライム帯の連続ドラマで類を見ない、これだけの俳優陣を揃えるのには相当尽力したのではないかと小田Pに尋ねると、主要キャスト3人を含め、キャスティングにはそれほど苦労はなかったのだという。

「バカリズムさんの脚本なら出たい、安藤サクラさんの出演する作品なら出たいといった問い合わせが役者さん側から度々あり、全体を通して豪華キャストが集まる結果となりました」

 これまで誰もドラマ化しなかった、何気ないシーンを取り上げる天才・バカリズムが書く脚本を、演者やスタッフは「挑戦状」として受け取っているという。彼の書く“リアル”を追求するために、制作現場が常に意識しているのは「没・個性」だ。
「その要となるのが、あーちん(安藤サクラ)、なっち(夏帆)、みーぽん(木南晴夏)の幼馴染3人です。バカリズムさんは、“ファミレスで普通に隣にいそうな3人”ということにこだわった。これを映像に落とし込む際に、太った人、背の高い人、メガネなどと個性を付けるのはよくあるパターンです。もしくは、服装を赤・青・黄などにして、キャラクターを作りやすくする。物語の中心人物を、分かりやすく視聴者の皆さんに覚えてもらうためです。しかし本作では、全員茶系の服装で登場しました」

 これが、本当の幼馴染の“リアル”ではないだろうか。よく会う友人とは服の趣味も合い、同じような格好をしているというのは、実際よくあることだ。2回目の人生では麻美だけ白系の服装に変わっていたことから、SNS上では、服の色がそれぞれの人生の回数を表しているのでは…などと考察を呼んだ。

 しかし真相は、1回目の人生では地元の市役所勤務だったために地味目の茶系、2回目は薬剤師になったために結果的に白系の服装を着るようになった麻美を表現、3回目は東京に出てテレビ局勤務となったので洗練された黒系の服装を着ている、ということらしい。

豪華俳優のスポット起用に、子役は1200人審査… バカリ脚本のリアル追求した「没・個性」

 4話からの『テレビ局編』では、「日本テレビ」を舞台にするということに、はじめは躊躇したという。「ラウンドワン」や「夢庵」など、リアルにこだわってきたが故、テレビ局だけ架空のものにするのもおかしいと、覚悟を決め「日本テレビ」に。結果、『花咲舞が黙ってない』『家売るオンナ』など、実際のドラマも登場することになった。

 「演技うますぎるし可愛すぎる」「キャストの面影がある子役さん達を見つけてくるのってほんと凄い」などと反響を呼んでいる子役は、1200人の中から選出された。ただ演技がうまいだけではなく、大人のキャストに似ている子役を選ぶため、納得いくまで毎週末、オーディションを行ったという。
 また、バカリズムが書く“普通”を見事に映像化したのは、錚々たる俳優陣の手腕も当然大きい。安藤は、同じ麻美を演じる子役の演技を見て、微妙に自身の演技を変えているそうだ。自然すぎてアドリブにすら見える安藤、夏帆、木南による3人の会話劇にしても、実際はほとんどアドリブなしだというが、幼馴染同士の会話のトーンやテンポはかなりリアルだ。

 ほかにも、カラオケボックスを出るギリギリまで歌う、最後に1口ドリンクを飲む、みーぽん(木南)が授業中や運転時だけ眼鏡をかける、免許取り立てでやたらと隣の車線を見てしまう、玲奈ちゃん(黒木華)が通話後にスマホ画面についた皮脂を拭く…といった、要所要所で細かすぎる芝居が何気ない日常を体現化しており、流し見や倍速再生が当たり前となった現代の視聴者も、じっくり見たくなる作品になっている。
 結果的に、勇気を持って“個性”を捨てながらも、とても個性的なドラマに仕上がった。「皆さんが台詞を覚えるだけではない、次元の違うお芝居をしたこともあり、雰囲気は似てても、そのキャラクターの内なる部分がより際立つようになった」と小田Pは感服する。

 視聴者からは、「ドラマみない勢の私が面白くて見てます」「社会人が最も嫌な日曜日の夜を楽しみに変えてくれた」「面白すぎて日曜の夜が憂鬱じゃなくなった。バカリズム、それだけでかなりの徳を積んでいる」といった声までも上がっている。TVerのお気に入り登録数は今期ドラマトップの104万人に上り、それだけ見逃したくない人が多い証拠だろう。

 小田Pは、これだけの反響を呼んでいる理由を、“寄りと引きの共存”だと分析する。「1話ごとに楽しめる“寄り”の面白さ、タイムリープものならではの全体を通しての“引き”の面白さが共存しているからこそ、何度も見返したくなる、話題にしたくなるドラマになっている。バカリズムさんが今後、まだまだ思いもよらなかったところに連れて行ってくれるので、7話以降も楽しみにしていてください」と自信を見せる。脚本家の「挑戦状」に怯まず、日和らず制作する彼女に、テレビマンとしての矜持を見た。


(文/衣輪晋一)

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