ORICON NEWS
新たなアンセムの誕生も…5年ぶりアルバム『暁』から紐解くポルノグラフィティの現在地
“ライブアーティスト”としての存在感を示してきた5年間
しかし、2020年春から広がった新型コロナウイルス感染症の拡大によって、ライブ活動は停止。世界中の音楽家と同様、ポルノグラフィティも停滞を余儀なくされた。そんな閉塞感を打ち破るように開催されたのが、2020年12月4日のハイブリッド型ライブ『CYBERロマンスポルノ’20 REUNION』。翌年8月に『ポルノグラフィティ 2021 “新始動”』を宣言し、シングル「テーマソング」とともに本格的なリブートを果たした。
昨年行われた全国ツアー『17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”』では、「サウダージ」「メリッサ」「ハネウマライダー」などの代表曲に加え、新曲もたっぷり披露。ライブのオープニングを飾った「IT’S A NEW ERA」(シングル「テーマソング」収録)、「また皆と会ったときに、この次の曲を一緒に歌おうよ。一緒に今度こそ声出して、ひとつになれるように歌おう」(岡野)というMCに導かれた「テーマソング」、さらに“最新の音と言葉をいち早く届けたい”という思いで演奏された「メビウス」「ナンバー」といった楽曲は、“現在進行形のポルノグラフィティ”を強烈に印象づけた。
音楽に対する真摯な姿勢と前向きなメッセージが色濃く出た5年ぶりのアルバム
荘厳な弦の響きから始り、ヘビィな音圧としなやかなスピード感を共存させたバンドサウンドへと移行。ドラマティックな展開を見せるボーカルライン、美しく歪んだギターが共鳴するロックナンバー「暁」の背景にあるのはもちろん、2020年以降のリアルな世界を表している。未曾有の事態に直面した人々は本音を隠さないようになり、それぞれの価値観、世界観によって分断が進んでしまった。そんな現状から眼を背けることなく、<弱き者よ どれほど待っている? 暁>というフレーズを打ち立てる同曲は、いまを生きる全ての人に大きなインパクトを与えるはずだ。本作を象徴すると同時に、ポルノグラフィティの新たなアンセムと呼ぶべき楽曲といえるだろう。
また、「悪霊少女」(作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一)も強烈なインパクトを放っている。ダークゴシック的な雰囲気を色濃く反映した音像は、明らかにポルノグラフィティの新機軸。神父、十字架、暗黒の館といったフレーズが並ぶ歌詞はまるでホラームービーだが、その根底にあるのは、初めて恋愛の入り口に立った少女の感情。新藤の創造力が炸裂するユニークで刺激的なロックナンバーだ。
多くの音楽ファンに前向きなパワーを与える珠玉のアルバムが完成
そしてもう1曲、「証言」(作詞:新藤晴一/作曲:岡野昭仁)にも触れておきたい。<悪魔が黒い翼 羽ばたかせ飛び去った>という冒頭のフレーズからグッと引き込まれる同曲は、エモーショナルに尖ったギターを軸にしたミディアム・ロックチューン。エキゾチズムを滲ませる旋律とともに映し出されるのは、大切なものを失いかけている“私”の姿。過酷な運命に見舞われたとしても、決して奪われないものが自分にはあるという思いを刻んだ歌、そして、楽曲の世界観を増幅させながら、まるで祈りのように響くギターソロにも強く心を揺さぶられる。寓話的なイメージと生々しい現実感を同時に表現することで、全てのリスナーが自分のこととして受け取れる構成も素晴らしい。
9月22日からは、本作を引っ提げた全国ツアー『18thライヴサーキット“暁”』がスタートする(ファイナルは2023年1月23日、24日の東京・日本武道館公演)。常に現実と向き合い、音楽の力によって現状を打破してきたポルノグラフィティ。アルバム『暁』が放つ未来を照らす光はここから、多くの音楽ファンに前向きなパワーを与えてくれるはずだ。
(文/森朋之)
◆ポルノグラフィティオフィシャルサイトはこちら(外部サイト)