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『私たち結婚しました』“異質”なネット番組が成功した理由、「いざこざはナシ」制作側に問われる恋愛番組の在り方

 「もしもあの芸能人たちが結婚したら…?」。出演者の結婚生活エピソードが、ネットやSNSを中心にたびたび話題を集める『ABEMA』の『私たち結婚しました』シリーズ。フィクションをドキュメンタリー風に見せる結婚モキュメンタリー番組で、有名芸能人同士の期間限定の結婚生活をのぞき見できる内容。なかなか見ることができない出演者たちの姿が見どころだ。これまでに様々な形態の恋愛番組が誕生し大きな反響を呼んできたが、一方では予期せぬ誹謗中傷に晒されるなど、課題にも直面してきた。リアルとフィクションの絶妙なバランスが織りなす影響力について、さらに今の視聴者が求める恋愛番組の在り方について番組プロデューサーの吉澤美玖氏に聞いた。

シーズン2で早くも総視聴者数100万人突破、「尊い」感情を求める視聴者

 同番組は、『ABEMA』にて21年7月からシーズン1が配信開始。シーズン2は同年11月、そしてシーズン3は22年6月3日より毎週金曜23時に配信されている。シーズン2では最終回配信開始後、1週間足らずで総視聴者数が100万人を突破。これは「予想外だった」と吉澤氏は語る。

 「弊社コンテンツの恋愛番組で、『オオカミ』シリーズや『今日、好きになりました。』シリーズも100万を突破しています。でもそれは、シーズンを重ねることで、だんだんと作品ファンの方々が積み重なっていった結果だと考えていました。そのため、複数回シリーズを重ねなければ、100万という大台はなかなか難しいのではないかと想定していました。『ABEMA』は地上波とは違い、無意識に流れているものをなんとなく観るという視聴方法よりも、“観たい”というモチベーションを持って利用いただくことが多いサービスです。そういう意味でも、100万人にそう思っていただけたのはありがたいですし、今後のハードルも上がりましたね(笑)」

 同番組の反響でとくに多いのが、“尊い”というワード。昨今のアイドルブームなどの影響で、比較的若い人の間で“尊い”という感情が流行している。負の感情で疲れたり、傷ついたりするのではなく、「好き」「感動」「眼福」など、感情がプラスに触れるような「尊い」と感じる瞬間を求めている今の日本のトレンドに、番組のコンセプトがマッチしているのではないかと吉澤氏は予想する。

 「『私たち結婚しました』シリーズは、SNSでの番組の“会話量”や“会話の質”もひとつの指標にしているのですが、その中でも“胸がほっこりした”“キュンとした”“尊い瞬間が見れた”といったワードが他番組と比較しても多いのが特徴です。とくに“尊い”のワードはその大多数を占めています」

 コンテンツ自体の原作は、韓国の地上波放送局である株式会社文化放送(MBC)が制作。韓国では2008年に放送がスタートし、日本でも話題になった。

 「これまで『オオカミ』や『今日好き』などティーン向けの作品でヒットは生まれていましたが、マス向けのサービスを目指す上でF1世代(20〜34歳女性層)から、より支持されるコンテンツを作る必要がありました」

 その狙いに対して、昨今のトレンド傾向やF1世代の興味関心、並びにABEMAの強みである恋愛番組のフォーマットを鑑みて、ピッタリな番組内容であることから、2020年頃に韓国・MBCと交渉を開始。原作の持つ世界観を大切にしてほしいという条件をしっかり遵守することで、スムーズな交渉・購入ができたという。

フィクションを“リアルに”見せるバランス感覚

 同番組の大きな特徴は、夫婦の“ほっこり感”が売りであるところである。MCのノブ(千鳥)と三浦翔平や、出演夫婦やシリーズとゆかりのあるゲストのトークで、スタジオは和やかな空気が流れている。ライバルが登場することも、大きなトラブルで夫婦に亀裂が入ることもなく、ここに負の感情は一切なし。ただただ平和な時間が流れている。この“いざこざのなさ”は、他番組と比べてもかなり異質である。

 「実は、どうしてこの番組がウケるのか分からない、とよく色んな方から言われます。もし地上波だったら、企画自体が通っていなかったかもしれません。ですが、とくに今の現代人には、人間関係を築いていく様を応援したい、見届けたいという「応援」や「推し」の感情が存在します。さらに、昨今のSNSのトレンドを見ても、ターゲットとなる視聴層が、負の感情で疲れたくない、“眼福”や好きなもの、尊いものを好んで選び、心を癒してプラスの感情に振れることを求めているようにも感じました。ここに熱量を持たせた番組にしたことで、いい反響を得ることができたのかもしれません」

 ここ数年、とくに配信系サービスで、出演者の恋愛模様を見せる“リアリティ番組”が大きな注目を集めている。『私たち結婚しました』シリーズは“結婚モキュメンタリー”という、フィクションをドキュメンタリー風に見せる番組ではあるものの、制作陣が意図しなかった視聴者の反応への対策も必要だろう。またその一方で、視聴者のニーズや心境も変化しているのかもしれない。

 「視聴者が観たいものに率直に答えるのが、人々に受け入れられる近道だと考えているので、視聴者が番組に対してどんな感情の揺れ動きを求めているのかを意識しながら、番組を作るようにしています。『私たち結婚しました』シリーズでは、VTRをチェックするプレビュー作業の際に、もし自分が“尊い”と思った瞬間が編集で抜け落ちていたら、戻すようにお願いすることもあります。まるでファンのようですが…(笑)、いち女性視聴者として、自分の感覚も大事にするよう心がけています」

 フィクションをリアルに見せれば見せるほど、より“没入感”を得られるだろう。しかし、あまりリアルを追求しすぎると、視聴者に大きな誤解を招くことにも繋がる。そのバランス感覚が、ますます制作側に問われるようになってきたようだ。

徹底的にインタビューをして本人を深掘り、“没入感”をもたらすこだわり

 『私たち結婚しました』シリーズで重要なのは、2人の有名芸能人が結婚したらどうなるかというテーマと“没入感”である。演出面では、出演者のありのままに近い姿を見せることに注力するという。

 「事前に出演者にインタビューを行います。ご本人たちの趣味や傾向、さらに彼らのどんなところが魅力的なのか、“人間性”をしっかり制作陣一同が把握した上で、番組を制作しています」

 パブリックイメージとはまた異なる、パーソナルな魅力を盛り込むことも意識しているという。

 「素顔のイメージが想像しにくい方の、知られざる一面に迫ることも、この番組の魅力のひとつです。俳優の方だと演じた役のイメージが強かったり、元アイドルの方だと恋愛禁止の印象が強くて異性と過ごす様子が想像できなかったりしますよね。“夫婦”という設定になった際に、異性とどんなふうに関係を築いていくのか、想像つかない方も多いと思います。そういった方のまだ知られざる新たな魅力を伝えることも、番組作りの上で大切にしています」

 韓国ではバラエティ色が強い内容だが、日本版ではモキュメンタリーにして、より世界観に没入できる作りを模索した。また、人気漫画家の東村アキコ氏が監修した、「誓いのキスをする」「バックハグしながら相手の好きなところを言う」など夫婦の仲を深める「ラブミッション」が出題されることで、出演者の意外な一面を引き出したり、2人の絆を深めたりする構成となっている。

 「今の時代の視聴者が求める“尊さ”とは、いわば少女漫画的な“キュン”の要素が多分に含まれている」と吉澤氏。さらに番組制作において、誰かに話したくなる要素だけでなく「どんな感情で情報が伝わるのか」というところまでイメージして番組を設計しているという。ポジティブなイメージで番組が拡散していることも、人気を拡大させている要因なのかもしれない。
『私たち結婚しました 3』
毎週金曜23:00より『ABEMA SPECIAL チャンネル』にて配信中。

韓国で 2008 年から約 9 年間レギュラー放送された国民的大ヒット番組『私たち結婚しました』(※1)を日本版にリメイクした、「ABEMA」オリジナルの結婚モキュメンタリー番組。有名芸能人同士の期間限定の結婚生活に密着し、夫婦の様子をお届け。今シーズンは、佐野岳さんと島崎遥香さんのペア、中田圭祐さんと川島海荷さんのペアの 2 組が結婚生活を送っている。初回放送では、「ABEMA」オリジナルの『私たち結婚しました』シリーズ史上最高視聴数を記録し、大きな反響が寄せられた(※2)。
※1:『私たち結婚しました』は、韓国の地上波放送局、株式会社文化放送(MBC)が企画、制作した番組。
※2:シーズン 3 第 1 話放送終了後、1 週間の総視聴者数をもとに算出

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