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菅田将暉、“羞恥心”の狂いを取り戻してくれる音楽活動「最初はできればやらないほうがいいのかなと…」

 もともと大好きだった音楽の世界に入ることに対し、当初は躊躇もあったと言う菅田将暉。しかし2017年の歌手デビュー以来、数々の曲をヒットさせ、俳優業と両立しながらハードなスケジュールをこなしてきた。今年も主演ドラマ『ミステリと言う勿れ』、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、主演映画『百花』と出演作が相次ぐ中、9日には3枚目となるアルバム『COLLAGE』をリリースする。まもなくアーティスト活動5周年を迎える彼に、音楽活動への想いを聞いた。

自身作詞作曲のMVは、14歳の女子中学生に出演&制作オファー「素晴らしいものが出来上がった」

 “菅田将暉 2020-21 SONGS『COLLAGE』”には、映画『STAND BY ME ドラえもん 2』主題歌「虹」やTBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』の主題歌「ラストシーン」に加え、中村倫也、OKAMOTO’S、石崎ひゅーい、Creepy Nuts、RADWIMPSなど豪華コラボ楽曲が収録されている。
――タイトル『COLLAGE』(コラージュ)には、どんな想いが込められているのでしょうか。

菅田将暉 今作は、2020年から2021年までにリリースした曲や、プライベートでも親交のある方々とのコラボ楽曲などを1枚にまとめたアルバムです。タイトルは、自粛期間中に友人のカメラマンがコラージュを始めて、作品を見せてもらったらすごく良かったので、アートディレクションをお願いすることにしたんです。役者業も全部ストップして、なかなか人と会えない中で動いたものを1個にまとめようという思いで、色んな縁が繋がり合って作品が出来ていることも含めて、『COLLAGE』というタイトルになりました。

――初回生産限定盤にはデビュー曲「見たこともない景色」から最新曲「ラストシーン」までの全MVに加え、新たに撮り下ろした菅田さん作詞・作曲の「ギターウサギ」のMVが収録されますが、この曲の歌詞は“かくれんぼはもう飽きたよ”や“誰とも会わない そう決めた日曜日”など、不思議と自粛期間と重なる部分がありますよね。

菅田将暉 4年ぐらい前に作った曲なのですが、いま聴くと確かに自粛の歌にも聴こえるので音楽って面白いですよね。この曲を作ったきっかけとしては、ウサギって一匹でジッとしていて、赤い目で、見た感じちょっと悲壮感や孤独感があってカワイイみたいな通説があるじゃないですか。でも実際はとても活発で、プレイボーイのロゴになるくらい精力的なので、割とイメージとのギャップがある生き物なんです。その違和感がすごくいいなと思って、曲にしてみました。

――MVに出演している近藤華さんは、クリエイティブディレクター兼アニメーション制作も務めてらっしゃるそうですね。

菅田将暉 近藤さんは当時14歳だったのですが、絵を描くのが好きな女の子で、オファーする前の段階で、すでにVコンテ(映像のイメージを描いた台本)を作ってくれていたので驚きました。これはもう彼女の自由な感性で好きに遊んでもらうしかないなと思ってお願いしたら、素晴らしいものが出来上がったので嬉しかったです。自分の作った曲が映像になるという経験は初めてで、こんな曲だったんだなという発見すらあって。大人の事情や様々な制約がある中で、“自由な物作り”はプロの現場では意外と少なかったりするので、中学生の脳みそに大人がたかるみたいなのがすごく面白かったです。

歌手デビュー5年で気づき「俳優と音楽の同時進行は無理」 今は“選択していく時期”

――デビュー当初お話を伺った際に、ご自身のパーソナルな部分が投影される作詞について「どこか恥ずかしいところを見てほしい気持ちがある」と答えてらっしゃいました。その想いは今も変わらないですか?

菅田将暉 変わってないと思います。俳優をやっていると、例えば、芝居でカメラの前で全裸になることもあるのですが、そういったことを日常的にやっていると羞恥心の感覚がだんだん狂ってくるんです。変な人にも堂々となれちゃうから、やっぱりちょっとおかしいんですよ。その一方で、音楽活動は自分の恥ずかしさや痛みと向き合って、それをみんなに伝えるにはどうしたらいいかを考えながら曲を作ったりするので、そこで普通の感覚を取り戻すようなところがあるんです。

――当初は、俳優として音楽の世界に入ることへの躊躇や迷いはなかったですか。

菅田将暉 ありました。できればやらないほうがいいのかなと思ったこともありましたね。ただ、最初にレコード会社の方から“デビューしませんか?”と声をかけていただいて、心のどこかで僕がやりたいって言いだしたわけじゃないしっていう言い訳があるので、“失敗してもいい”と思っていたというか、いまだに思っています(笑)。だからこそ今も音楽を自由に楽しめてるし、そうじゃなければ続けていないのかなと。
――音楽業と俳優業の両立は大変だと感じることはありますか。

菅田将暉 喉や体の状態を保つのが大変ですね。特に喉はケアしなきゃいけないことが多いので。あと、芝居をするときはキーは関係ないし、どんな声の出し方をしても心情が伝わればいいんですけど、歌うとなるとキーが決まっていてリズムにも合わせないといけないので、俳優業と音楽業の同時進行は無理なんだなっていう結論に達しました。特に、ライブの時期と俳優の現場が重なったりすると本当に難しいなと。なので、今後はキッチリ分けてやっていきたいなと思っています。

――2017年の歌手デビューから、もう5年経ちますもんね。

菅田将暉あっという間でしたね。そのうち2年間はライブもできてないので、まだ始まったところという感覚は変わってないんですけど、やっと歌う、マイクの前に立つということがちょっとずつ慣れてきました。5年前って、音楽もラジオも始めて、新しい事やるぞってすごく気合が入っていた時期なんですよ。人に嫌われてもいいやって感じもあったので、すごくピリピリしていて嫌なやつだったと思います(笑)。でも今は選択していく時期なので、自分にとって続けるものと続けないものを1回区切ろうって思っています。

菅田将暉は天才なのか?努力家なのか?「自覚しているのは“器用貧乏”だということ」

――菅田さんとお仕事された方にお話を聞くと、みなさん「彼は天才だ」とおっしゃるのですが、ご自身では才能を信じていらっしゃいますか。それとも、努力派だと思われますか。

菅田将暉 努力と才能の話って難しいですよね。ただ、自分で自覚しているのは“器用貧乏”だということ。例えば、どんな競技でも基本的な動きから少し応用編になる教科書20ページぐらいまではすぐにできてしまうところがあって(笑)。だから俳優業は自分に合っていると思うんですけど、教科書には載っていないことをやるのがプロなので、そこはただただ努力するのみというか。限られた準備期間にできるだけのことをやって、一生懸命やるしかないと思いますね。だから、あまり才能とか努力みたいなことは考えたことはないです。

――自分がやりたいことと人から求められることが違うこともあるかと思いますが、その場合はどう対処していますか。

菅田将暉 人は黒か白どっちかで考えがちですが、どっちもやればいいのにとは思います。白でも黒でもないグレーな部分は絶対にあるので、人に合わせてみてもいいと思うし、譲れないことがあれば主張するのもアリで、色々やり方はあるはず。それに、人に合わせることを“強要”と捉えるのと“サービス”と捉えるのとではモチベーションが変わるので、そういうことを考えながらやるようにしています。
――まもなくアーティスト活動5周年、今後はどのような作品作りをしていきたいですか。

菅田将暉 何かをやらなきゃという責任感や、よくわからない使命感はあるんですけど、正直、“これがやりたい”というのは特になくて、今はとにかく家でゆっくり休みたい(笑)。目に見えない疲労ってあるじゃないですか。俳優のお仕事って、作品を撮り終えると毎回脳みそや心がバキバキに骨折しているような感覚になって、その状態でまた次の作品の現場に行くので、一旦どこかで休まないとしんどいんです。だから少しゆっくりして、回復したら大好きな音楽を作りたいと思っています。


 人に合わせることを“強要”と捉えるか、“サービス”と捉えるか――。恐らく彼は、並々ならぬ“サービス”精神で、俳優、音楽、ラジオ、バラエティと、デビュー以来、常に全力で駆け抜けてきたのだろう。その原動力は、「すべて人との出会い」だという。それをまさしく体現しているのが、最新アルバム“菅田将暉 2020-21 SONGS『COLLAGE』”だ。それぞれ全く異なる曲調ながら、どんな相手にも溶け込みマッチする菅田の本懐が詰まっている。今後、また新たな出会いが彼の心に火を点け、どんなハーモニーを奏でてくれるのか心待ちにしたい。
(文=奥村百恵)

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