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仲村宗悟の歌詞に込められた思い、音楽的な素養と声優の表現力が花開く

 2015年、26歳のときに『アイドルマスター SideM』の天道輝役で声優デビュー。2019 年には『第13 回 声優アワード』新人男優賞を受賞し、大きな注目を集めている仲村宗悟(なかむら・しゅうご)。2019年には、仲村自身が高嶋智樹役で出演したテレビアニメ『厨病激発ボーイ』のエンディング主題歌「Here comes The SUN」で音楽活動もスタートさせ、声優アーティストとして高い支持を得ている。

タイアップ曲で初作詞、仲村のメッセージがこもった寄り添う言葉たち

  • ニューシングル「JUMP」初回盤

    ニューシングル「JUMP」初回盤

 中学生の頃からギターを弾き始め、高校卒業後、音楽の道を目指して沖縄から東京に出てきたという仲村。もともとはミュージシャン志望で、地道なライブ活動を行ってきた彼だが、そこで培った音楽的な素養は、現在のアーティスト活動にも確実に生かされている。そのことを証明しているのが、2月10日にリリースされる3rdシングル「JUMP」。この作品で仲村は、ボーカリストしてはもちろん、作詞・作曲、さらにサウンドメイクやアレンジに対しても、高いポテンシャルを発揮しているのだ。

 まずはタイトル曲「JUMP」。現在放送中のテレビアニメ『スケートリーディング☆スターズ』エンディング主題歌として制作されたこの曲は、“思い描いていた未来とは違っていても、可能性を信じて進んでいこう”というメッセージを込めたアップテンポのナンバーだ。

 タイアップ曲としては、初めて本人が作詞を担当した同曲。架空のフィギュアスケート団体競技“スケートリーディング”に青春をかける高校生たちを描いた物語に寄り添いながら、幅広い層のリスナーを鼓舞するような歌詞は、間違いなくこの曲の軸になっている。どんなに勝ちたいと思っていても、結果が伴わないこともある。どんなにきつくても、思ってもみない出来事があっても、僕らならきっと進んでいける――そんな真っ直ぐな感情をわかりやすい言葉で綴ったリリックには、おそらく、コロナ禍で先が見えない現状や「どんなことがあっても負けないでほしい」という彼自身の思いも反映されているのだろう。“七転八起 日進月歩”など、ノリの良さと強い意味を組み合わせたフレーズからも、仲村のソングライティングセンスが感じ取れるはずだ。

音作りにも積極的に参加、その中心にある表現力豊かなボーカル

  • ニューシングル「JUMP」通常盤

    ニューシングル「JUMP」通常盤

 心地よい疾走感をたたえたビート、生き生きとしたバンドサウンドも、「JUMP」の魅力。エモーショナルなギターソロや厚みのあるコーラスワークなど、アレンジ面にも様々なアイデアが注ぎ込まれている。レコーディングやミックスにも本人が参加し、細かい部分にも彼自身の意向が取り入れられているというが、ここにも仲村の強いミュージシャンシップが感じられる。

 そして、すべての中心にあるのは、もちろん仲村のボーカルだ。一つ一つの言葉に生々しい感情を込め、楽曲全体の起伏をしっかりと演出しながら、ポジティブな意志をリスナーに直接手渡すような歌からは、シンガーとしての高い資質が伝わってくる。下積み時代の音楽活動で得たミュージシャンとしての経験、そして、声優として培ってきた豊かな表現力。その二つの要素を併せ持っていることこそが、仲村の最大の強みなのだと思う。「JUMP」のMVでは、真っ赤な衣装に身を包んだ仲村が、大きなアクションとともに全身でパフォーマンス。ボーカルはもちろん、動き、表情を含めた表現力に注目してほしい。

3枚目のシングルで、アーティストとしての本質が露わに

 カップリング曲の2曲は、いずれも仲村が作詞・作曲を手がけている。「てこと」は、“君にとって僕はどうでもいいってこと?”と揺れる思いを抱える男性の感情を描いたミディアムチューン。好きという気持ちを止めることができず、上手くいかない関係のなかで迷う姿を綴った歌詞は、男性リスナーからも共感を集めそうだ。

 70年代あたりの洋楽ロック、ポップスを想起させるサウンドも印象的。ギター、オルガンなど生楽器の響きを生かした有機的なアンサンブル、ミュージシャンのセンスを生かした演奏からは、仲村の音楽的なルーツを垣間見ることができる。

 3曲目の「オブラート」は、アコギと歌を中心にしたオーガニックな楽曲。ソウルミュージックのテイストを感じさせるメロディ、心地よいグルーヴをたたえたアレンジを含め、大人の鑑賞に堪えるポップスに仕上げている。「オブラート」という曲名が示す通り、“透明な膜につつまれ、息ができない”という精神状態を映し出す歌詞も、彼自身のリアルな思いが感じられて興味深い。

 1stシングル「Here comes The SUN」、2ndシングル「カラフル」、そして今回の「JUMP」と、作品を重ねるごとにアーティストとしての本質を露わにしてきた仲村。その個性は、声優アーティストのシーンにおいてもしっかりと際立っていると思う。今後の音楽活動にも大いに注目したい。

(文:森朋之)

3rdシングル「JUMP」

2月10日 発売
【公式サイト】(外部サイト)

★2/13(土)、ぴあアリーナMMで行われる『オダイバ!!超次元音楽祭−ヨコハマからハッピーバレンタインフェス2021−』に出演する。

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