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45周年のコミケ「一度も開催できなかった1年」、同人文化の火を消さない…葛藤とコロナ後の未来
コミケ生誕45周年…「夏の中止を決めたGWの時点で、冬は開催できると思っていた」
【市川】当初の予定通りであれば、今年のゴールデンウイークがC98(コミックマーケット98)、45周年にあたる冬コミがC99(コミックマーケット99)、2021年の夏コミで100回目を迎えるはずでした。45周年と100回目が続けてやってくることで、だんだん盛り上がっていくような企画を考えていました。12月28日(月)に発売する45周年記念イラスト集『COMIC MARKET 45th Anniversary Book』も、そうした施策の一環として制作したものです。
【市川】45年もの間、様々な形でコミケから支えてくれた作家さんが、こんなにも大勢、今でもコミケのことを大切に思って集まってくれたことに感謝しています。古くからの作家さんと同世代の方には「今も気持ちを同じくする仲間がこんなにいるんだよ」ということを伝えしたいし、若い世代の方には「じつはこんな作家も参加していたんだよ」ということを知っていただきたい。イラスト集をきっかけに『コミケ』の長い歴史にも興味を持っていただけると幸いです。
――3月27日に、ゴールデンウィークに開催予定だった夏コミの開催中止を発表されました。早めの決断だったように感じますが、相当な葛藤があったのでは?
【市川】「すぐに中止を発表するべき」という意見もありましたし、それと同じくらい「安全策を講じて実施するべき」という声もあったので、判断は難しかったですね。今も新型コロナの影響は続いていますが、当時は今以上に、どのように振舞うべきかが見えない状況でしたから。ギリギリまで検討したいという気持ちもありましたが、宿泊や交通機関のキャンセルを考えると、結論を出さないと大勢の方に迷惑をかけてしまうことは明白だったので、あの時点での開催中止を発表しました。
――準備会としても断腸の思いだったのでは?
【市川】すでにサークルさんの申込、抽選、配置、当落通知の発送は終わっていましたし、カタログも入稿済みだったので。会場の東京ビッグサイトや警察とも何度も打ち合わせをして、準備は整いつつあったのですが、やはり安全が最優先という決断になりました。
――その時点では、「冬コミは再開できる」という見込みもあったのでしょうか?
【市川】コロナ渦は長引くのでは? という意見もあり色々検討もしていたのですが、C98の中止段階では、何とか冬の開催はできるのではないか? と思っていました。
足を運ぶことでの付加価値と、作家の締め切り コミックマーケット開催の意義
【市川】C98の開催中止発表で、我々もすっかり滅入ってしまっていたのですが、このまま何もしないと同人文化そのものが薄れていってしまうんじゃないか…という危機感もありました。同じ思いの書店さんや通販サイトさんなどの協力のもと、コミケの時期に合わせた『エアコミケ』を開催することとなりました。約2週間の突貫作業だったので、いろいろと荒い部分もありましたがSNSも盛り上がり、大勢の方に喜んでいただけて。何とか実施できてよかったです。
――Twitterでもトレンド入りするなど、盛り上がっていましたね。
【市川】とはいえ急ピッチで進めたため事前告知が思うようにいかず、「もっと早く知りたかった」「事前に分かっていれば参加したかった」といったご意見も多く寄せられて…。そうした反省点を活かし、『エアコミケ2』は公式Web(https://air.coomiket.co.jp(外部サイト))も作り、なるべくたくさんの方に情報がいきわたるように運営しています。
――世の中全体が新しい生活様式に切り換わっていくなか、『エアコミケ』という新しいフォーマットができたわけですが、『コミケ』は今後どうなっていくのでしょうか?
【市川】ピンチの後にチャンスあり…といいますか、『エアコミケ』をはじめ、このような状況だからこそ思いついたアイデアの数々は、来年、再来年の展開のなかにも取り入れていくつもりです。しかし、リアルイベントの『コミケ』を優先させたいという気持ちは常に持っています。安全対策など考えるべきことは山積みですが、できるかぎり参加者の皆さんにとって理想的な形で実現できるよう、今後も可能性を模索し続けていきます。
――リアルイベントを開催する意義をどう考えていますか?
【市川】現場の熱ですよね。書店や通販サイトなどにも、それぞれのいいところがありますが、コミケに来ていなかったら出会えてなかったものが、きっとたくさんあります。会場内を見て回るうちにサークルさんの告知ポスターに惹かれたり、列を覗いてみたときの高揚だったり。あと、通販サイトだと、どんどんカートに同人誌を入れて、いざ支払いの段で金額を見て冷静になってしまうことも多いと思うのですが、現場ではそれがないので「気付いたら薄い本の山だった」なんてことも。一緒に参加した友だちと戦利品を見せ合いながらご飯を食べるのも、購入した本の“重み”を感じながら帰るのも、リアルイベントの醍醐味だと思います。
――まさに“家に帰るまでがコミケ”ですね。
【市川】そうですね。それと『コミケ』は、作家さんの“締め切り”としても機能していると思っています。作家さんの中には「締め切りがないと原稿が完成しない」とおっしゃる方が少なくなく、そういう方にとっては、『コミケ』は年に2回、必ずやって来る締め切りのようなもの。同人誌の世界全体を見ても、今年は新刊発表のペースが落ち込んでいるので、やはり同人文化を盛り上げるためにも、リアルな即売会は何とかして再開したいところです。
インターネットを通じて誰でも覗ける“エアコミケ”を通じて、未体験の人にも浸透していってほしい
【市川】『コミケ99』は2021年5月2日からの3日間の開催を予定していますが、その時点ではまだマスクの着用をはじめ、消毒、検温、ソーシャルディスタンスの確保など、安全対策は必要でしょうね。会場である東京ビッグサイトのガイドラインもありますので、そちらに沿って入場制限もかけることになると思います。これまでは1日に20万人近くの方が参加されていましたが、次回は大幅に人数に制限させていただくことになるかと。まだ未確定ではありますが、毎年参加されていた皆さんからすると、かなりコンパクトな印象になると思います。
――これまでは個々のサークルに任せていた部分も、今後は準備会でしっかり管理しないといけなくなりそうですね。
【市川】できうる限りの安全対策を講じ、サークルさんにも様々な協力をお願いすることになると思います。例えば、現金の手渡しもリスクがあるので、直接その場でお金を支払わない方法を提案させていただく可能性も考えています。
――逆に、こういった状況になったからこそ“積極的に変えていきたい”と思われる要素はありますか?
【市川】通常のコミケットでは、のべ70万人が参加することもあって、ものすごいイベントのように思われがちですが、『コミケ』の構造そのものは、実は非常にシンプルで、「会場に遊びに来て、好きな本を買う」だけなんですよ。なので安全対策以外では、とくに手を加えるところはないと考えています。『エアコミケ』で培った良きところは残すかもしれませんが、なるべく“従来の形を維持”というところにこだわって、できる限り最善策を考えていきたいです。
――伝統を守りつつ、よりよい施策は積極的に取り入れていくというわけですね。
【市川】昨今では、広くメディアでも取り上げられるようになりましたが、まだまだ同人文化は“コアなカルチャー”というイメージが強いので、『エアコミケ』の展開を通して、誰でも気軽に楽しめるものなんだよ…ということをアピールしていきたいですね。“マーケット”という名称が示す通り、アニメやマンガ、ゲーム、サブカルチャーに興味のある人なら、誰でも気軽に遊びに来られるイベントですので、再びリアルイベントが実施できるようになったときには、大勢の方に足を運んでいただけるよう、尽力するつもりです。
エアコミケ2
家にいながらコミケ気分を味わえる!?
みんなで”コミックマーケット”を盛り上げよう!
開催日時:
12月30日(水): エアコミケ2 1日目
12月31日(木): エアコミケ2 2日目
エアコミケ2
https://air.comiket.co.jp/
45周年記念イラスト集『COMIC MARKET 45th Anniversary Book』
『COMIC MARKET 45th Anniversary Book』
2020年12月28日発売
判型 : A4判
ページ数: 236ページ
価格 : 3,000円(税抜)
販売店:
アニメイト(通販)・とらのあな(特設ページ/通販)・メロンブックス(通販)の各店
詳細:
https://www.comiket.co.jp/info-a/AC2/Cmk45thBook.html