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コロナ禍でも「動く」、サイダーガールが模索するタイアップとライブ配信の可能性
タイアップ曲では作家気質に、「求められること」「好きなこと」のバランス
知 “好きなものを好きと言えない”というテーマのドラマだったので、そこからイメージを広げて制作しました。作ってるときにたまたまエナジードリンクを飲んでて、「“エナジー”っていいな」と思って(笑)。結局、エナジーという言葉を使った歌詞が楽曲のコアになってますね。
――“好きなものを好きと言えない”という感覚は、みなさんのなかにもある?
知 ありますね。僕自身もそうだし、そういう気持ちになったことがある人も多いんじゃないかなと。この曲を聴いて、“自分もそうかも”と感じてもらえたら嬉しいですね。音楽活動に関しても、人に聴いてほしいという欲求がある以上、自分たちが好きなことだけをやってるわけではないので。
Yurin うん。僕の場合は、自分に向けて作ることの方が多いんですけどね。
知 まずは自分に刺さるかどうか。
Yurin そうそう。たとえばタイアップの曲を作るときは、作家気質になるというか、その作品に対して当て書きするのも好きなんですよ。求められることに応えつつ、好きなようにやるところもあって。“ここまでやったらアウトかな?”というせめぎ合いに、ドキドキする部分もあります。たまにディレクターから、「この歌詞はコンプライアンス的にどうだろう?」とチェックが入ることもありますけど(笑)。
フジムラ インディーズ時代に自分が書いていた歌詞は、もっと抽象的だったんですよ。メジャーデビューしてからは、ディレクターと一緒に細かくチェックするようになって。その経験も生かされてますね。
「理想は常に変わっていく」、昔と今の“なりたい自分”像
Yurin 『炎炎ノ消防隊』の原作を読ませていただいて、登場人物たちの諦めず、泥臭く生きる姿、人間の弱くも強い部分をイメージして作りました。歌詞はけっこうストレートですね。
――<中指立てて あっちまでぶっ飛んで行こうぜ>など、攻めた表現もあって。
Yurin そこはチェックされなかったですね(笑)。もともと、ポップスの中であまり使われない言葉を歌詞にするのが好きなんです。それをポップなメロディに当てて、中和するというか。
――なるほど。<なりたい自分となれない自分と>という歌詞も印象的でした。みなさんは、バンドを始めた頃に思い描いていた“なりたい自分”になれている実感はありますか?
Yurin 理想は常に変わっているんですよね。僕個人も、昔と今では、“こうなりたい”というものが変わってて。「ID」の中に<いつか最低な自分を愛せますように>という歌詞もあるんですけど、今がいいと思えるようになったのが大きいのかなと。
知 僕も理想が変わっていくタイプですね。一方で、消費されたくない、流されないようにしたい、という一貫した思いもあって。芯の部分がブレそうになると不安になるし、そうならないためにはもっと実力をつけないと。
フジムラ バンドを始めたときから、ずっとライブをやり続けたいと思っていて。曲の制作も、ライブのときのアドレナリンに後押ししてもらってた部分があると思うんですよね。今はライブができない状況なので、落ち込むことも多いし、この先、どんな音楽を作っていこうか考えている時期。ライブで映える音楽を作りたいという気持ちに変わりはないんですけどね。
コロナの影響でツアーは中止、模索するライブ配信の可能性
Yurin そうかもしれないです。今まで通りだと飽きちゃうというか、同じような曲を作らないようにしたいという意識もあるので。
知 「落陽」もそうですが、バンドとして、どの楽器が抜けても成立しないような絡み方をしたいんですよね。コロナの自粛期間中に、いままであまり聴いてなかった打ち込みメインの曲をチェックするようになったので、その影響もあるかも。
Yurin デュア・リパ、アリアナ・グランデとか、音がすごくカッコ良くて、メロディも強いんですよ。“いいメロディって、やっぱりあるな”と改めて感じたし、ギター、ドラム、ベースでいい音にしたいという気持ちも強くなった。グローバルのシーンはギターが歪んでない曲が多いですけど、ギターを歪ませつつ、そこに近づけるにはどうしたらいいか考えてますね。
――コロナ禍の影響で、すべてのアーテイストが試行錯誤を続けています。サイダーガールも9月から予定されていたツアーが中止になりましたが、もともとネットカルチャーとの親和性が高いし、配信を含め、いろいろな可能性があると思うのですが。
Yurin そうかもしれないですね。いろんなバンドの配信ライブを観ていますけど、ライブハウスから配信していると、どうしてもその場に行って聴いたほうがいいなと思ってしまうんです。一方、これはいいなと思うのは、演出やセットを作り込んだライブ。それは配信でしか楽しめないし、オンラインだからこそ映えるコンテンツ。僕らは顔出しもしてないし、どちらかというと後者のやり方が合うのかなと思います。
知 うん。サカナクションの配信ライブは、まさにそうでした。しっかりやりたいことを持っているアーティストは、どんな状況になっても自分たちを表現できるんだなと感動しましたね。
オンラインイベントのテーマは“秘密基地”、「どんどん動いていきたい」
知 ライブパートは収録した映像、トークは生で配信する予定です。ライブは“秘密基地”をテーマにしたセットを作り込みます。
Yurin ずっとアートワークを担当してくれている勝見さんと話していて、「次のビジュアルは秘密基地みたいなイメージがいいかもね」ということになって。配信ライブのセットも、そこからつながってるんですよね。映像やセットと音楽の親和性によって、新しいMVのような見え方になったらいいなと。
フジムラ もう収録は終わっているんですが、非日常感がすごかったです。画面越しで100%の熱量を伝えることはできないかもしれないけど、ここでやれることをやろうと思って、お客さんが目の前にいるイメージで演奏しました。
知 配信でも、自分たちにしかできないことがあるはずだと思っていて。この経験は、フィジカルのライブができるようになったときにも生かせると思います。
――ニューシングルをリリースして、配信ライブがあって。バンドが動いていることは当然、ファンのみなさんにとっても嬉しいニュースですよね。
知 そこは正直、自分たちも安心してます。
Yurin 「リリースが2年ないと、リスナーは離れていく」という記事を読んだことがあります。僕らはもっと、小まめに動いてるところを見せないと。幸いにも3人とも曲が作れるので、作ろうと思えばすぐに…。
知・フジムラ ハハハハハ(笑)。
Yurin(笑)リリースに関しては不安はないんですよ、ホントに。もともと作ったらすぐに出したいタイプだし、どんどん動いていきたいですね。
(文:森朋之)
ニューシングル「落陽/ID」
初回限定盤 (CD+DVD) UPCH-7568 ¥2,000(税抜) / ¥2,200(税込)
初回限定アニメジャケット盤 (CD) UPCH-7569 ¥1,300(税抜) / ¥1,430(税込)
通常盤 (CD) UPCH-5974 ¥1,200(税抜) / ¥1,320(税込)
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「落陽/ID」オンラインリリースイベント『room726』
※9月6日(日)23:59までアーカイブ配信あり
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