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コロナ禍で見直された“ビーイングサウンド”の強度 「誰もが口ずさめる」楽曲で若者にもリーチ

J-POP、バンド好き、両方を取り込む巧みなサウンドテクニック

 90年代のビーイング楽曲の特徴は、オーソドックスな歌謡曲にロックサウンド、R&Bサウンドなどを組み合わせたこと。この音楽的なスタイルと、曲名とサビの歌詞を一致させる訴求方法によって、J-POPユーザー、バンド好きのリスナーの両方を取り込むことに成功したのだ。

 カラオケでも歌いやすいキャッチーなメロディ、適度にエッジを効かせたサウンドを手がけていたのは、織田哲郎、栗林誠一郎、大島こうすけなどの作家陣だ。ビーインググループの創業者・長戸大幸のプロデュースによる高度なクオリティ・コントロールのもと、ビーイング系のアーティストは一大潮流となった。

 ジャクソン5、スティービー・ワンダーなどを送り出し、60〜70年代に盛隆を極めたアメリカのモータウンのスタイルを、日本でもっとも成功させたのは間違いなくビーイングだろう。

 90年代のヒット曲は地上波の音楽番組でも繰り返し特集され、世代を超えた知名度を維持している。『キミが好きだと叫びたい』のCDジャケットに起用されている女優の桜井日奈子は本作について、「大黒摩季さん、ZARDさん、WANDSさんの曲を、幼い頃に両親のCDで聴いていたのでお話を頂いたときにテンションが上がりました」とコメントとしているが、彼女のように「親が聴いていたから自分も好きになった」という10代、20代のリスナーも増えているようだ。

 ビーイング系楽曲の再評価が進んでいるもう1つの理由は、90年代前後にデビューしたアーティストの継続的な活動とプロモーションだ。

 今年30周年を迎えたZARDをはじめ、FILED OF VIEWは25周年ベストアルバム『FIELD OF VIEW 25th Anniversary Extra Rare Best 2020』をリリース、T-BOLANはAmazon Prime Videoオリジナルドラマ『湘南純愛組!』のオープニング曲「俺たちのストーリー」、主題歌「My life is My way 2020」を提供。また、新ボーカリストに上原大史を据え、“第5期”を始動させたWANDS、20歳前後のメンバーによるZARDトリビュートバンド・SARD UNDERGROUNDのデビューなど、ビーイングの歴史を今に伝えるプロジェクトも進行中だ。こうした取り組みは、ビーイング楽曲の再認識、若いリスナーの掘り起こしなどにもつながっているようだ。

 コロナ禍においても、ビーイング系のアーティストが様々なコンテンツを配信し、話題を集めた。

 B’zは公式YouTubeで歴代ライブ映像を公開(5月31日までの期間限定)。さらに自宅スタジオで撮影されたヒット曲「HOME」(1998年)の“HOME”sessionを公開し、現在までに460万回超の再生数を記録している。また、ZARDのライブ映像やMVを期間限定で公開し総再生数が1000万回を突破、大黒摩季は医療関係者らへの感謝の気持ちを込めた新曲「ありがとう 〜ヒーロー&ヒロインへ〜」「Stay Home」の弾き語り映像をアップし、大きな話題となった。これからのコンテンツをきっかけに、90年代のビーイング楽曲の魅力に改めて実感したリスナーも多いのではないだろうか。

 90年代の音楽ビジネスに大きな功績を残したビーイングは、そのレガシーを活かし、現代のシーンにアジャストした施策を続けている。初のビーイング系ミックスCD『キミが好きだと叫びたいLove&Yell〜mixed by DJ 和〜』のヒットによって、ビーイング楽曲の“再発見”はさらに広がりを見せそうだ。
(文/森朋之)

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