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田中圭、脱イケメン枠で躍進 “平凡力”で立ち位置を確立

  • 田中圭が『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で平凡なのになぜか男性にモテる主人公を好演

    田中圭が『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)で平凡なのになぜか男性にモテる主人公を好演

 他を圧倒する数で若手の名脇役として出演が続いている俳優・田中圭。一時は向井理と被るとも言われ癖がなく存在感の薄さが指摘されていたが、今やその活躍は誰もが認めるところ。その田中圭の主演作『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が単発での反響を得て連ドラ化。吉田鋼太郎演じる“ヒロイン”の男性上司と、そのライバルとなる林遣都演じる後輩の男性社員に求愛される主人公という、男性同士の三角関係を描き話題になっている。“完全なるノンケで、女好き”というどこにでもいそうな男性役で主演を張っている田中。脇役で数多くの役を演じてきた田中にとって、この“平凡”な役柄こそがまさに持ち味と言える。

爽やかな“イケメン枠”出身もブレイクしきれず!「途中退場」し薄幸キャラに磨きをかける

 多数のドラマや映画に出演する“バイプレイヤー”には、達者な演技力はもちろん、作品にアクセントを添える濃いキャラクターの役者が多い。その点、田中圭は、見た目は爽やかで癖がなく普通。演技もフラット。名前なんて左右対称で平凡きわまりない。バイプレイヤーとしては、特殊なタイプにも思える役者に見えた。それでいて、出演本数は同世代の役者の中で圧倒的多数を誇る。

 デビュー後、『WATER BOYS』(フジテレビ系)や『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)などで、“イケメン俳優”として話題になる脇役が続いていた。『僕の歩く道』(フジテレビ系)では、草なぎ剛演じる自閉症の青年が勤務する動物園の若手飼育員を好演。最初は草なぎの独特な言動を理解できず困惑、反発していたが、後に理解者としてサポートする存在になる。その心境や関係性の変化を、現代的な普通の青年としてナチュラルに演じてみせた。

 また、『ホームレス中学生』(フジテレビ系)や朝ドラ『おひさま』(NHK)で演じたのは、主人公の優しい兄役。素朴でこざっぱりした爽やかなルックスに加え、有名な難関中高一貫校出身の経歴などもあってか、「優秀で優しい兄」を演じることは多い。若くして亡くなるという不思議な共通点もあった。さらに、『私が恋愛できない理由』(フジテレビ系)や映画『ラブコメ』などの恋愛モノでは、元恋人や不運な出会いをする役を多く演じた。

 こぎれいで色がなく、「普通」の印象から、イケメン枠が量産されていく中で、いまひとつブレイクしきれない。中途半端に善人だったり、薄幸だったり、物語の中盤くらいで途中退場していく役も多かった。

「普通」に需要あり! “平凡力”で見出した立ち位置

 もちろん、そのイメージを脱したかった時期もあったのだろう。普通、優しい、素朴、爽やかな役を多数演じてきたからこそ、悪役を演じたときにその意外性が生きた作品もある。『魔王』(日本テレビ系)では、真面目な仕事ぶりでも信頼厚い社長秘書を務めつつ、実は裏で社長夫人と不倫関係を続ける腹黒男を生々しく演じた。『銭ゲバ』(日本テレビ系)や映画『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』『TAJOMARU』など、悪役を立て続けに演じている。

 だが、ここ数年でいつの間にか平凡な役を演じる“安心感”や“安定感”が評価されるようになり、絶え間なくドラマや映画、舞台の出演が続いている。“若手名脇役”と呼ばれているが、代表作が無いからこそどの作品にもハマるのも特徴だ。

 そうした変化について、田中本人は以前のインタビューの中で「役の年齢があがってきたというのが、まずあると思います。爽やかキャラだってイメージされることもあるんですが、そこまで爽やかキャラばかりやっていないはずなんです」と語っている(『アクターズ読本』洋泉社)。

 しかし、同インタビューでは「代表作がない」一方で、途切れることなく仕事をしてきたことへの自負を感じさせる、こんなコメントもしている。「(転機となった作品は)ほとんど全部だと僕は思う」「転機というのは、作品というよりも、人なんじゃないですか」と、刺激を受ける役者や監督、スタッフに出会えることを「転機」と語っていた田中。今にして思えば、未来を予言しているかのようなコメントである。

 人との出会いを常に転機と考え、フラットに役柄、共演者たちと向き合ってきた結果、近年は主演や個性の強い役でなくともストーリーを動かす存在として活躍。昨年は9作ものドラマに出演しており、その数の多さにも田中の需要の高さが伺える。

『おっさんずラブ』主人公・春田との高い親和性

 多数の普通の人を演じてきた田中にとって、間違いなく代表作となるであろう『おっさんずラブ』。しかし、今作でも強い個性を発揮したわけでも、難役に挑んだわけでもない。田中演じる「春田創一(はるたん)」は、営業成績はビリで、女好きのダメ男というまさに“平凡”な主人公。にもかかわらず、仕事がデキて人望厚い上司の乙女心を引き出してしまったり、社内のホープである後輩社員の心をかき乱してしまったりする。

 春田が無意識のうちに、二人の男性の心のトビラを開けてしまっている。この春田の“無意識の展開”は「(男性に対して)モテようとしてない」“平凡”な演技だからこそ強烈に引き出されたと言えるのではないか。ピュアで可愛いヒロインのおっさんと、しっかり者でマメな後輩社員との三角関係に春田は翻弄されっぱなし。また、作風もサラッとポップな男性同士のラブストーリー仕立てにしているちぐはぐさが際立つ。その超個性的な作品、濃厚な役者陣の中で、真ん中に立つ田中は個性が薄いことがむしろ個性となっている。

 とはいえ、こなしてきた場数や舞台経験も豊富と言う点で、サラッと何でも「普通」にこなしているように見えて、演技力については折り紙付き。個性的なキャストの中でその個性に飲まれることなく“平凡”さを存分に出せる力量を持っていることは、言うまでもない。

 主人公の田中が平凡であればあるほど、脇は引き立つし、田中の高い受容力、「受けの演技」の安心感が周囲に快感を与えるかのように、ますます濃厚な艶技を繰り出してくる。そしてその強烈な個性の中に埋もれることなく、「普通」のまま真ん中に立ち、存在感を放つことも実は非常に高度である。また、男性同士の恋愛と一癖ある今作。多様性が求められる社会ではありつつ、視聴者の感覚を置いてきぼりにしない“平凡”な主人公を演じ切っている。

 技巧派、個性派など、濃い味付けのバイプレイヤーが豊富に揃う今こそ、数限りない普通の男を演じてきた田中圭のバイプレイヤーとしてのキャリアが存分に生かされている。今後も「普通の主人公」という場所で輝きを放つのではないだろうか。

(文/田幸和歌子)

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