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田中麗奈“脱・正統派”への転機 イメージギャップでサイコパス女医がハマり役
映画をメインの場にして独自の清廉なイメージを保ち続けた
そんな田中は、2008年になってようやく、韓国映画をドラマ化した『猟奇的な彼女』(TBS系)にヒロイン役で出演。ドラマ解禁となったが、その後も大河ドラマ『平清盛』(NHK総合)の由良御前役などNHKへの出演が多かった。
今回の『真昼の悪魔』は遠藤周作の小説が原作の心理サスペンス。田中が演じる外科医・大河内葉子は、優秀で患者への接し方も親切と評判だが、幼い頃からあらゆる出来事に無感動で無道徳な裏の顔を持ち、ターゲットが現れると衝動的に悪のスイッチが入る……という設定。1話の冒頭から、口説いてきた男と入ったホテルの一室で、微笑みながら男の手のひらに針を躊躇なく刺した。
病院に急性虫垂炎で担ぎ込まれ、激痛に苦しむ青年を癒す一方、入院している寝たきりで認知症の老女を冷たく見下ろしながら、白衣のポケットに忍ばせていた注射針を取り出す。老女の娘が病室の隠し撮り映像をネタにゆすってくると、逆に顔をひっぱたき、腹を殴り、床に投げ倒して首に注射を刺して、手を踏みつける。怯える相手に「私が見たいのは今のあなたみたいな姿。だから病院ほど便利な場所はないの。あたなはこれからの人生を続けたい? それとも死にたい?」と、まさに悪魔のように言い放った。
清純派のイメージが強いからこそ、豹変ぶりに怖さがより募る
番組公式HPのインタビューで、田中は「私はたぶん基本的にはいい人のほうに分類されるとは思っているんですけどね(笑)」と話しつつ、天使と悪魔が共存する葉子について「とてもやりがいのある役に出会えたと思っていて。自分も葉子の心理を解くように興味を持って演じていきたいです」と役への向き合い方を語っている。
『なっちゃん』から19年が経ち、田中も今や36歳。昨年2月には結婚もしている。正統派の美人女優から役幅を広げたいところで、新境地の意外なハマリ役となったようだ。悪女役といえば、菜々緒のように見た目から似合う場合もあるが、今期では他にも『奪い合い、冬』(テレビ朝日系)の水野美紀や『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)の斉藤由貴が、精神的に歪んだ女性の怖さを見せている。
そんななかでも、田中の演じる葉子のヒヤリと冷たい怖さは、いかにもヒロインな美しさとのギャップも相まって、インパクトが鋭い。葉子は父が病死した夜に、父のお気に入りだったお笑いコンビが出ているテレビを煎餅をかじりながら観て、「フフフ、フフフン」と気味悪く笑い出す。その姿にもまたゾッとさせられる。葉子の魂の行き先とともに、まるで裏の顔を見せたかのような田中麗奈の“脱・正統派”ぶりからも目が離せない。
(文:斉藤貴志)